魔法少女リリカルなのは〜転生者の誓い〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十話・復帰する転生者
俺が病院に入院してから僅か一週間後。
脅威のスピード退院を果たした俺。
正直、あまりにも早すぎるのでは?と俺は担当医であったあの初老のお医者さんに聞いてみたが
お医者さんからみてもどうやら俺の回復速度は異常なようで
まるで奇跡だ、と言っていた。
恐らく、あの神様が何かしたのだろう。
実際、普通は早くても傷が塞がるまで半年以上かかるらしいので、
神の仕業以外考えられない。
どうせ、このまま半年以上も入院していたら俺が原作に絡むところが見れない、
そんな下らない理由だと俺は推測する。
さて、そんな事を考えていると遠くから声が聞こえてきた。
「お兄ちゃ〜ん!」
我が愛しの妹こと、なのはの声だ。
俺が左腕を失ったあの一件以来、以前よりもなのはは良く俺に話しかけてくるようになった気がする。
現に退院してからの初めての学校が終わった今、
一緒に下校する為にわざわざ学年の違う俺のクラスに来てくれたのだ。
それに
「なのは、あんまり走ると転ぶぞ?」
「えへへ、大丈夫!」
笑顔で俺の心配を否定するなのは、
前よりも笑顔を見せてくれるようになった気がする。
なのはなりに俺を気遣ってくれているのかもしれない、
ならば俺はそれに応える為にも明るく振る舞った方が良いだろう。
俺は笑顔で「そうか」とだけ呟く。
それに満足したのかなのは大きく頷くと
「じゃあお兄ちゃん、帰ろう?」
俺に下校を促した。
もちろん、すぐに俺はそれに応じようとしたが
「なのはっ!!」
突然遠くから声が聞こえてきたかと思うと
なのはを追いかけてきたのだろう、すずかちゃんとアリサちゃんが走ってやって来た。
「あ、アリサちゃん!?」
なのはがなぜか驚いているがアリサちゃんの言葉は止まらない。
「あ、じゃないわよ!全く」
「まあまあ、アリサちゃん落ち着いて…」
すずかちゃんがなだめてくれているが、どうやらアリサちゃんは納得していないらしく怒ったままだった。
そこで、話に加わってなかった、
というか一人蚊帳の外だった俺が理由を聞いてみる事にした。
「アリサちゃんは何をそんなに怒ってるのかな?」
「み、みずなさん!?」
俺の質問に対してアリサちゃんがなぜか俺を見て驚いている。
というか俺に気付いてなかったのか?
それならば少々悲しいものだ。
いくら年下の、さらに言えばなのはの友達の女の子とだが
自分が眼中にないというのは男としては意外とダメージが大きかったりする。
まあ、とりあえず俺のそんな神様の思惑並みに下らない思想はさておき
アリサちゃんは俺の質問に対して答えを言ってくれた。
「えっと、いつも私となのはとすずかは一緒に帰っているんですけど…」
「けど?」
「それが今日はホームルームが終わった途端、私とすずかを置いて突然どこかに飛び出して行っちゃて…」
「なるほど…」
とりあえずだが状況は把握できた。
つまり、アリサちゃんにしてみたら友達にいきなり無視されたと思ったのだろう。
確かに、それでは怒って当然かもしれない
それに、無視されてもわざわざ追いかけて来てくれたところを見ると原作通りこの三人は仲良しのようだ。
俺はそんな事を考えながらなのはに注意をしておく。
「なのは、友達は大切にしなきゃ駄目だぞ?」
「ううっ、ごめんなさい」
俺の注意に素直に謝るなのは。
アリサちゃんも先程よりは怒っていないのか
「し、仕方ないわね」
と、どうやら許してくれたようだ。
俺は良かった、と安心した。
なのはの行動の原因が俺にある以上、なのはとアリサちゃん達の仲が悪くなったりしたら
全力で関係の修復に取り組まなければいけない。
少なくとも、これ以上俺の所為でなのはに悲しい思いはさせたくない。
「それよりも…みずなさん?」
「ん?」
なのはとアリサちゃんが仲直りしたところで
今までフォロー役に回っていたすずかちゃんが俺に話しかけてきた。
「その…、お体はもう大丈夫なんですか?」
ああ、そうだ
普通の人からすれば確実におかしな俺の回復速度
現に
「あっ!みずなさん大丈夫なんですか!?」
アリサちゃんも俺の事を心配してくれている。
なのでとりあえず笑顔で答えを返す。
「大丈夫だよ。…心配してくれてありがとう」
その言葉にすずかちゃんとアリサちゃんは文字通り
ほっと一息ついていた。
それからアリサちゃんが再びなのはに文句を言っていた。
曰く
「なのは、みずなさん学校来てたならそう言いなさいよね」
だそうだ。
そして、それに対して
「にゃはは、ごめんね」
笑顔で再度謝るなのは。
今回の文句は俺の事を教えてくれなかった事についての文句らしい。
さらに
「そうだよなのはちゃん教えてくれても良かったのに…」
今回はすずかちゃんも文句を言っていた。
どうやら二人とも俺の事を心配してくれていたらしい
「それに…」
突然、なのはと話していたすずかちゃんがこちらを向いて言葉を紡いできた。
「ごめんなさいっ!」
え?
と突然の事態に俺は困惑する。
なぜすずかちゃんは急に謝ってきたのだろうか?
そんな俺の思いをよそにすずかちゃんの言葉は続く
「私がみずなさんを家に誘ったから…」
どうやら俺の怪我が自分の所為だと思っているらしい。
というか誘ってきたのはなのはだった気がするが
そこを指摘するのはなのはを責めているのと同義だろう。
なのでもう一度同じ言葉を言う事にする
「大丈夫だよ」
それでも不満があるのかすずかちゃんは「でも…」と言葉を続けようとする。
だが、俺はその言葉を遮る。
なぜなら
「それに転んだのは俺の所為なんだからさ…」
世間一般、周りの人には俺は転んで腕を切断したことになっている。
シナリオ的には転んだ拍子に持ってきていた木刀が運悪く腕に刺さったと言うものだ。
なんとなく前世の死因を思い出したのは言うまでもない。
「そうですか…」
そんな俺の言葉にすずかちゃんはそれ以上謝る事はなく
「もうっ!みずなさんが気にしてないのにアンタが落ち込んでじゃないわよ!」
というフォローのおかげで、すずかちゃんはなんとか笑顔を取り戻してくれた。
まあ、そんなことやっていたら
「あの…」
「ん?」
「なに、なのは?」
「なのはちゃん?」
なのはが教室の壁に掛けられた時計を指差し、
「そろそろ帰ろう?」
そう提案する。
みると思っていたより時間が経っていたらしい。
ホームルームから随分と時計の針が進んでいた。
それに、辺りを見回すと既に教室には俺達以外に誰もいなかった。
そのため
「そうだな、帰るか…」
「うん、帰ろうっか」
「そうね、帰りましょ」
俺、すずかちゃん、アリサちゃんと全員同時になのはの提案に賛成。
既に傾き始めた太陽の光によって薄暗くなってきた教室を後にして
皆で楽しく下校したのだった。
後書き
次回から最終決戦に向け話が大きく進んでいく……予定です(汗)
お楽しみにして頂ければ幸いです。
ページ上へ戻る