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蒼き夢の果てに

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第4章 聖痕
  第34話 山の老人伝説

 
前書き
 第34話を更新します。
 

 
 扉を開くと、其処にはタバコと酒の臭い。そして、やたらと甘ったるい香り。それに、眩い……明滅する光に溢れた退廃的空間が目の前に現れていました。
 そう。地下に存在するに相応しい世界。ある種類の人々に取っては天国と言うべき空間。
 しかし、俺に取っては地獄と表現すべき世界が目の前に口を開けていたのです。

 そして、次の瞬間。人々の喧騒と何故か走り出したくなるような軽快な音楽。更に、これこそがカジノに相応しい、勝者と敗者の発する……不快な陰の気が俺とタバサを包み込んだ。

 何故かここに居るだけで、確実に人を狂わせる。そんな気がして来るかのような場所。其処は、俺にはそう感じられる世界(空間)で有ったと言う事です。

 一応、周囲をざっと見渡した感覚で言うと、広さとしては魔法学院のアルヴィーズの食堂よりも広いように感じます。更に、歌やダンスを見せる為の舞台まで備えた、地球世界に存在する……ドラマや映画などで良く描写される高級カジノと言う雰囲気の場所、と説明したら判り易いですかね。
 但し、流石にスロットマシーンの類は見当たらないのですが。

 舞台の上ではふわふわのロングスカートをひらめかせて、黒のストッキング、白いペチコートをカジノの客たちに魅せながら、一列に並んだ女性(踊り子)たちが軽やかな音楽に合わせてハイキックを繰り返す。
 成るほど。このダンス・パフォーマンスの音楽が、最初に感じた妙に走り出したくなる音楽だったと言う事ですか。

 しかし……。

 ……赤いレンガで作られた風車に、一列に並んだ踊り子たち。そして、この特徴的な音楽に合わせたハイキックを取り入れたダンス。
 ここは二十世紀初頭のフランスのモンマルトルなのでしょうかね。

 ……いや。そう言えば、ここはリュティス郊外の小高い丘でしたし、あの丘には昔、女子修道院が有ったはずですか。

 取り敢えず、俺では月までは連れて行く事は難しいですが、監獄ぐらいなら簡単に連れて行く事も出来ますよ。
 もっとも、そんな乱痴気騒ぎを行う監獄が有るかどうかは、定かでは有りませんが。

【シノブ。大至急、タバサと貴方の周りを新鮮な空気の玉で包むのです】

 一瞬、下手くそなボサノヴァのリズムを刻んで月まで行き掛かった俺の意識を、見事地球の引力により引き戻す事に成功したダンダリオン。流石に第一宇宙速度までは達して居なかったらしい。

 おっと、イカン。ここはカジノで有って、二十世紀半ばのキャバレーでは無かったな。
 ……って言うか、ショー・ビジネスと言うジャンルに成るんじゃないですか、ここは。

 カジノの客たちが発する、俺の精神衛生上、あまり宜しくない気に当てられた……軽い酩酊状態に近いような感覚のと成った頭を軽く振りながら、周囲を更に細かく観察する俺。

 バーが有って、舞台では踊り子が見事なダンスを披露し、カジノで客が賭け事に興じる。
 後は、ミュージカルや、ロマ系の歌手などが登場すれば完璧だと思いますよ。

【何をしているのです、シノブ。ここのカジノで焚かれている香は危険な物だから、さっさとタバサの方だけでも新鮮な空気で包めと言っているのです、このウスノロ】

 かなり強い調子でダンダリオンに【念話】で告げられて、ようやく事態の深刻さに気付く。
 そして、即座にシルフを起動させ、俺とタバサを包む形で新鮮な空気を発生させた。

 ……何故か、新鮮な空気に包まれた瞬間、少し頭がすっきりしたような気がしました。
 もっとも、気のせいだ、と言われると、そうなのかも知れない、と言う、非常に曖昧な感覚なのですが。

 これは、確かに危険な兆候かも知れませんね。
 そう思い、タバサに【念話】のチャンネルを開いた上で、ダンダリオンに

【具体的には、どう言う理由で危険なんや】

 ……と問い掛ける。但し、何となくなのですが、その危険と言う状況を生み出している物質……薬物に関しては、思い当たる物が存在しているのですが。
 但し、あまり目立ち過ぎないように、舞台で踊る女性たちを見ているような演技を行いながら、なのですがね。

 何故ならば、通路の真ん中で何処を見るでもなくボォ~っと突っ立っていたら、目立って仕方がないでしょう。
 非常に残念な頭の出来の少年だと思われる事間違いなしですから。それなら、御のぼりさん宜しく、舞台で踊っている踊り子たちに視線を奪われている少年を装った方が百倍マシですから。

【この香が焚かれた空間で呼吸を続けると、最初は判断力の低下や少々の酩酊状態をもたらせるだけなのです。でも、その内に幻覚症状を起こすようになり……】

 ダンダリオンが、かなり深刻な様子で説明を行う。ただ、説明の最後の部分は省略するような形で余韻を持たせての説明だったのですが。

 もっとも、この説明ならば皆まで説明される必要など有りませんが。つまり、このカジノは、ヤバい系の麻薬と似た症状を起こす香を使用しているカジノと言う訳ですか。
 確かにそのようなカジノなら、足しげく通った挙句、破滅への道を一直線に転げ落ちる人間が続出するでしょう。

 常習性をもたらせる薬物と同じような結果をもたらせる香を焚いた、更に脳内麻薬を発生させ易いカジノなのですから。
 このカジノに通い詰めると、ギャンブル依存症と薬物依存症が同時進行でやって来ますからね。

 そして、為政者側がそのカジノの危険視するのは当然の事でしょう。

【ここのカジノは、絶対に潰す必要が有ると言う訳か】

 俺が、新たに覚悟を完了したかのようにタバサに告げる。流石に、ここまで外道な方法で儲けている違法カジノも少ないでしょう。
 その俺の呟きに等しい【念話】に対して、ひとつ首肯いて肯定を示すタバサ。

 しかし……。俺は、自らの左側に立つ蒼き姫を、普段以上に意識をしながら、少し、意識を彼女から別の方向に飛ばす。
 そう。タバサに指令を出している人間……イザベラとか言うガリアの姫は、少し方針を変えたのか、と言う疑問に対して。
 今回のタバサに下された指令は、俺が思うに、かなり危険な任務の可能性が有ると思うのですが。

 其処まで考えてから、再び、自らの主人に対して意識を戻す俺。いや、正確に言うと、彼女と現在二人で一人状態の人間も頭数に入れた、彼女らと言う単位に思考を移したと言うべきですか。

 そう。タバサの扱いが変わった訳では無く、彼女の使い魔の俺の事を知られたから、彼女に難しい任務が回って来るように成った可能性が有りますか。
 ジョルジュがガリア王家から命令を受けてタバサのガード役を行っていたのなら、彼奴から俺の能力に関しては報告が行っているはずです。
 まして、魔法学院の春の使い魔召喚の儀は、貴族(メイジ)として重要な通過儀礼ですから、タバサが何らかの使い魔を召喚した事は確実に知っているはずです。

 タバサが召喚した使い魔の実力を知ったのならば、その実力を組み込んだ上で命令が下されたとしても不思議でもなんでもないですか。

 ならば、少々、厄介な任務が回って来たとしても、それも仕方がない事ですか。確かに、適当にこき使われているような気がしないでもないのですが、それも含めてタバサに与えられた仕事ならば仕方がないでしょう。
 彼女の仕事は、俺の仕事でも有りますから。

 それに、この状況に関しては、後二年ぐらいの我慢で終わりのはずですから。

【そうしたら、このカジノ潰しの作戦はどうなっているんや?】

 少し気分を変えてそうタバサに聞く俺。尚、舞台の上では、今度は女性の吟遊詩人が恋の歌を歌い始めていました。
 曲調はバラード。そして、曲のテンポに合わせて、光の明滅も緩やかなモノに変わっています。

 ……そう言えば、光と音楽を使用する洗脳方法も存在していましたね。
 もっとも、この空間内に充満する甘ったるい匂いの正体との合わせ技で、カジノの客の精神を蝕む役割を果たすと思うので、この光と音楽だけならば、今夜一晩ぐらいなら大丈夫だとは思うのですが……。

【カジノ側の想定額以上の勝ちを得てカジノを潰す】

 非常に簡潔で明確な答えを返して来るタバサ。確かに、判り易い方法では有ります。
 但し、同時に非常に嫌な予感がして来たのも事実、なのですが。

 確かに、こちらがカジノ側の想定以上の勝ちを収めた場合、相手は、切り札に等しいディーラーで勝負を挑んで来るはずです。
 そして、そいつも倒せば、このカジノを乗っ取る事もそう難しくはないのですが……。

 そうしたら次の質問。この部分がはっきりすると、俺の嫌な予感が現実の物と成りますから。

【このカジノが、違法の薬物で客の意識を混濁させたり、正常な判断力を奪ったりした状態で賭けを行わせて儲けている、と言う情報をタバサは伝えられて居たのか?】

 一応、この質問からでしょうかね。この辺りのカラクリさえ掴んでいないのでは話に成りませんから。

 しかし、タバサは首をふるふると横に振る。これは否定。
 つまり、少なくとも、タバサに命令を下したイザベラは、このカジノが儲けているカラクリを掴んで居なかったと言う事ですか。

 いや、もしかすると、下調べさえ行っていない可能性も多少は存在していますか。
 それとも、ワザとタバサにその情報を伝えて置かなかったのか。

 俺とタバサの能力を、そのイザベラ姫が有る程度想像しているとすると、少なくとも、二人合わせたら、ジョルジュ程度の能力が有る可能性を想定して居ると思います。
 だとすると、危険な事が判っているカジノ潰しに、持っている手駒の内で、最強クラスの駒を前線に配置するのはそう間違った方法では有りません。

 将棋で言うトコロの棒銀ですか。この場合、取られた(殺された)としても仕方がないとされる、銀として扱われる手駒の意志は無視ですが。

 まして、相手の違法カジノも王家のイヌが周囲を嗅ぎ回り出したら警戒をして、闇に潜られる可能性も有ります。なので、出来るだけ短時間で内偵から殲滅を済ませる必要が有りますか。
 ……これは所謂、潜入捜査官の御仕事。危険度は異常に高い仕事です。

【そうしたら、確実にバクチに勝つ手段と言う物をタバサは持っているのか】

 イザベラ姫の思惑については、今のトコロ直接は関係ないですか。どうせ、このカジノ潰しの最終局面で、何らかのアクションが為されるはずだと思いますから。
 俺とタバサが任務に失敗して、何の騒ぎも起こす事なく、秘密裡にあっさりと殺されない限りは。

 それで、次の質問に関しては……。

 そもそも、バクチと言う物は、確実に胴元が儲かるような仕組みと成っています。そして、これを覆すには、かなりの強運か、それとも、確実に勝てる特殊な技術を持っている必要が有ります。
 例えば、俺のようにカードの操作が出来るとかね。

 先ず、一番簡単に為せるのは倍賭けですか。負けた次の回に倍の金額を賭け続ける方法。そして、勝利した瞬間に引く、もしくは、最初の賭け金に戻して、勝負を続ける方法。
 例えば、ルーレットの(ルージュ)(ノアール)や、サイコロの(ビック)(スモール)などの目に、負けた分を回収して、更に多少の勝ちが出るように賭け続けると言う方法です。

 但し、この方法でも、確実に儲けるにはかなりの予算が無ければ、確実に勝てるとは言えません。まして、タバサの目的から考えると、この方法ではカジノが潰れるほどの勝利を収める事が出来るとも思えません。

 その問いに対して、タバサはじっと俺の横顔を見つめる。普段とは反対側の。
 そして、

【貴方の式神の能力を使えば簡単に勝てる】

 ……と、そう答えた。
 普段通りの、彼女に相応しい落ち着いた雰囲気で。

 しかし、そのタバサの答えにより、潜入捜査官は潜入捜査官なのですが、これは、非合法潜入捜査官と言う種類の仕事に分類される可能性も出て来たような気がして来たのですが。

 それでも、このタバサの言葉から判るのは、俺の能力や、俺の式神達の能力をタバサは熟知していると言う事ですか。
 確かに、俺の式神の能力を駆使したらゲームによっては確実に勝利出来るギャンブルは存在します。
 そして、タバサの思考の中では、最初からイカサマを使用してのカジノ潰しだったと言う事ですね。

 冷静な判断だと思います。少なくとも、運否天賦(うんぷてんぷ)と言う形でこの任務を受けた訳では無い、と言う事ですから。

 そう俺に告げた後、タバサは一当たり、カジノの店内を見渡した。
 カード。サイコロ。ルーレット。この中で、俺や式神達の能力を駆使したら、100%勝利出来るゲームと言えば……。

 タバサは俺の方を見ずに、ひとつのテーブルを目指して歩み始めた。

 そして、今回の任務の軍資金として渡された金貨百枚を、同額のチップと交換する。
 チップの内訳は、白が二〇枚、赤が六枚、そして緑が二枚。白は金貨一枚分。赤が五枚分。そして、緑は二十五枚分に相当します。

 ディーラーがベルを一回鳴らした。これが、ゲームのスタートと言う事。
 そして、そのチップの内、緑を二枚、ルージュの方に賭ける(ベットする)タバサ。

 ……強気と言うべきなのでしょうか。それとも無謀と言うべきですか。いきなり、手持ちのチップの半分までを賭けましたよ、この()は。

 ディーラーが慣れた手つきでホイールを回し始め、そして、そのホイールの回転方向とは逆方向にボールを投げ入れた。

 そう。タバサが選んだのはルーレット。そして、俺が考える一番簡単に勝利を重ねられる勝負も、このルーレットです。

 同時に、俺がアガレスを起動。
 そう。アガレスの職能。走り出した物を静止させ、逃亡した物を引き戻す能力。彼女の職能を使用すれば、ルーレットの操作など容易いでしょう。
 まして、俺自身が重力を操ります。このふたつの技能を駆使すれば、ルーレットならば100%勝利出来るはずですから。

 ベルが二度鳴らされて、ベット出来る時間が終了する。そして、

「ルージュの9」

 壮年のディーラーが厳かにそう宣言した。
 その瞬間に、勝者と敗者の悲喜こもごもの気が発せられる。

 但し、我が蒼き姫君……いや、現在の彼女は、瞳は普段通りの蒼ですが、髪の毛はウィッグ装備に因り金髪と成っていましたか。つまり、黄金……秋の豊穣を意味する姫君は、勝利に際してもまったく表情を変える事などなく、四枚に増えた緑のチップをただ見つめるのみで有りましたが。

 小さな勝利に浮かれる必要など感じていないかのように。

 もっとも、それだけ俺や、式神達の能力を信用していてくれるのでしょうけどね。

 二戦、三戦と進むごとに勝ちが大きく成って行くタバサ。
 いや、勝っているのはタバサだけでは有りません。

 確かにタバサは赤か黒だけにしか賭けていないのですが、彼女が勝ち続ければ勝ち続けるほど、彼女の賭ける方に乗る他の客も増えて行くモノなんですよね。
 それに、これは当然なのですが。

 何故ならば、現在、俺やタバサが行っているのはバクチです。運を持っている人間……つまり勝負に勝ち続けている人間には、俺でも乗ろうと思いますから。

 そして、この状況では当然、負けるのは店側ばかりになると言う事。
 水に落ちた犬は打て、と言う言葉も有ります。普段は、取り込まれる事の多い賭け金が返って来るのですから、タバサは、突如このカジノに舞い降りた勝利の女神さまと言う事なのでしょう。

 ただ、ビーナス系の軍神に愛された勝利の女神などではなく、アテナ系の知恵の女神と言う雰囲気なのですが。もっとも、彼女がアテナで、俺がトロイの王子パリスなら、シュリーマンが歴史に名を刻む事は無かったのかも知れませんけどね。

 まぁ、何にしても、これで、勝負(バクチ)に勝ちまくってカジノを潰すと言う目的には簡単に辿り着いたのですが、カジノ側がイカサマを行っている証拠は未だ掴めてはいません。
 いや、当然、幻覚作用をもたらせる違法薬物の香によって、客側が普通にやって居たら絶対に勝てない仕組みに成っているカジノですから、その一点だけでも、店を潰す理由としては問題ないとは思うのですが……。

 まして、一定時間ごとに店内で行使されるマジックアイテムが自動的に発動するディテクトマジックに因って、客側と、そして自らの側の系統魔法を封じているので、系統魔法を使用したイカサマは不可能だと思いますし……。
 更に、俺の魔力探知にもイカサマに対する魔力反応は一切なし。これは、魔力、霊力などの不可思議な能力によって行われるイカサマは、少なくとも、俺やタバサが潜入してからは為されていない、と言う証拠にはなるのですが……。

「ルージュの5」

 本日三人目のディーラーに取って、自らの死刑宣告に等しい宣言を行う。
 そして、湧き上がる歓声。この瞬間が、最後のルーレットのテーブルが閉められた瞬間であった。

 タバサの前にうず高く積まれたチップの山に、更に先ほどの勝利の分が加算されて行く。そう、現在のテーブルの上には、最早身体の小さな彼女では、テーブルの上のチップを全て見る事は不可能でしょう、と言うぐらいのチップで溢れかえっています。

 そうして、最初には存在していなかった黒のチップ。黒のチップは金貨に換算して百枚に相当するチップなのですが、この黒のチップがどう見ても百枚以上は有るはずですから、一晩の負けドコロか、このチップを全て現金化すれば、カジノ自体が簡単に潰れるのは間違いない状態だと思いますね。



 軽く、伸びをするような仕草の後、周囲の気を探る俺。大丈夫。剣呑な、殺気に似た気は何処からも発せられる事はなし。

 ならば、そろそろ頃合いですか。相手……カジノ側が動き出す前に、次の手を打つ必要が有るでしょう。
 俺は、辺りの様子を伺いながら、そう思った。ただ、俺とタバサの周りには、未だ危険な雰囲気を感じてはいないのですが。

 ……未だ、カジノ側としては事を荒立てずに、バクチとしての勝負で事を収めようと考えている、と言う事なのでしょう。
 おそらく、タバサやそのエスコート役の俺の見た目が子供ですから、嘗めて掛かっていると言う事だとは思いますが。
 それに、この香の効果について、かなりの過信が有る可能性も有りますし。

 実際、精霊と契約を交わして、その精霊を連れ歩き、常に自分達の周りだけ新鮮な空気で守りを固めている、などと言う方法はこの世界の常識の外側に存在しているはずですから。

「さて。そうしたら、そろそろ休憩にしようか」

 それならば良いでしょう。取り敢えず相手が動かないのなら、こちらの方から動き易い状況を作るだけですから。

 そう思い、それまで、完璧にタバサのエスコート役に徹していた俺が声を掛けた。
 もっとも、見た目はタバサの後ろに立つだけのエスコート役なのですが、イカサマと言う部分に関しては全て俺の所業なのですが。

 それに、見た目が派手なタバサが人目を引いて、小細工は俺が行うと言う方法は、ある意味、理に適っているとは思いますけどね。

 それまで俺の方を顧みる事など無かったタバサが、俺の方を向いてひとつ首肯いた。
 その瞳には、普段の彼女と変わらず理知的な光が宿り、表情の方も、普段通りの透明な……ある意味、ギャンブラーに取って必要な表情を浮かべています。
 そう。バカみたいにルーレットに勝っていても冷静さは失っていない、と言う事です。

 確かに、彼女が発している雰囲気からそう察しては居ましたが、実際に顔を見るのと、見ないのとでは安心感が違いますよ。
 それに、このタイミングで俺が休憩を求める意味に付いても、ちゃんと理解していると言う事ですから。

「そうしたら、個室の休憩室が有るらしいから、そちらの方で一時休憩をしますか」


☆★☆★☆


 そうして、この手の高級カジノには付き物の豪華な個室タイプの休憩室に場所を移した俺とタバサ。
 天蓋付きの豪奢なベッドや、テーブル。まして、呼び鈴付きと言う、休憩用と言うよりは、宿泊用の部屋と言う雰囲気の部屋ですね、ここは。
 それに、備え付けの飲み物やグラスなどが用意されていますし。

 そうしたら、先ずは聞き耳や覗きの調査からですか。

 そう思い霊力に因る探知を実地。
 刹那。波紋を広げるように広がって行く俺の霊力。
 但し、この魔法は仙術に属する魔法。つまり、この世界的な認知で言うと、精霊魔法と言う括りに当て嵌まる魔法ですので、ディテクトマジックの探査に引っ掛かる事がないのは確認済みです。

 有効範囲は十丈。大体、三十メートル。当然、その範囲内に結界が存在していたのなら、その有無も報せてくれる仙術と言う事に成ります。

 ……大丈夫。少なくとも、魔力の籠められた盗聴用のマジックアイテムや、魔法自体がこの部屋に行使されている雰囲気は有りません。
 但し、機械的な盗聴や覗き。隣の部屋に聞き耳を立てている人間が居る可能性は、当然有るのですが。

 そうすると次は……。

【アガレス。時空結界で俺とタバサを通常の時間の流れから切り離してくれ】

 翆玉に封じられし魔界の公爵に【念話】にて依頼。
 そして次の瞬間、覗き盗聴対策としては最も信頼出来る時空結界で、俺とタバサを通常の時間世界から切り離す違和感を覚える。
 そう。まるで、世界自体が反転するかのような奇妙な感覚の後、俺とタバサ以外、全ての生きとし生けるモノの気配が途絶える。

 廊下を歩むカジノの従業員や、遠くに感じて居たカジノでギャンブルに興じる客たちの悲喜こもごもの気配。そして、舞台の上で演じられていた音楽やパフォーマンスなどが発して居た躍動や心に訴え掛ける響きなどの気配すべてが失われて仕舞ったのだ。

 完全に俺とタバサが時空結界で覆われた事を雰囲気で感じ取った俺が、タバサに首肯いて見せた。そう、これで、どんな盗聴で有ろうとも大丈夫と言う事ですから。
 この切り離された空間内に、その盗聴を行っている存在が既に潜んでいない限りは。

「そうしたら、タバサ。このカジノのイカサマを見破る事が出来たか?」

 先ずは、この部分の問いから始めるべきでしょう。
 それに、実を言うと、俺には、店側のイカサマ行為を見破る事は出来ませんでしたから。

 一応、アガレスの能力で強化されて居ますし、俺はハゲンチの職能、あらゆる手技を身に付けさせてくれると言う職能により、ある程度のイカサマのテクニックを身に付けています。
 そして、その部分に関しては、タバサも同じようにイカサマのテクニックを身に付けて居ますし、森の乙女によって能力の強化も為されています。故に、能力としては俺とそん色ないはずですから、俺が見落としている部分に気が付く可能性も有ると思います。
 まして、俺よりも基本的な頭脳の出来は彼女の方が上ですから。

 しかし、タバサはゆっくりと二度、首を横に振った。これは否定。
 う~む。流石のタバサでも、見抜けなかったと言う事ですか。

 これは、俺達に対しては、明確なイカサマ行為は行ってこなかったと考える方が無難ですか。

「そうか。まぁ、このカジノは危険な香を使ってカジノの客たちの正常な判断力を奪い去ってから、どんどんとギャンブルの深みにのめり込ませて行くカジノやから、無理に小細工を弄する必要はないのかも知れないな」

 これは少し厄介な状況ですけど、それでも仕方がないですか。本当ならば、相手の切り札に等しいディーラーが出て来る前に、このカジノの一般的なイカサマの方法を見て置きたかったのですが。

 確かにこんな空間……幻覚や判断力の低下を招くような香を焚かれた閉鎖空間で、普通の人間が正常な判断を下し続ける事など出来はしません。

 通常の人間が、こんな怪しげな香を焚かれた閉鎖空間で長時間活動し、呼吸をし続けると、徐々に酩酊状態となって行き、気が付くと……。
 もっとも、普通の場合は、其処までに到達する前に勝負に負けて、スッテンテンにされた挙句に放り出されるのがオチなのでしょうけどね。

 ならば、相手の事を知るのは後回し。そもそも、カジノ側が確実にイカサマを行っている証拠自体がないですし、イカサマを行わないでも、普通のディーラーでも勝てる状況を作り出していますからね。
 それどころか、本当にゲームに負けているのか、それとも薬物による酩酊状態から、ゲームに負けたと思い込まされているのかは定かでは有りませんが。

 だとすると次の()は……。

「ハルファス」

 ソロモン七十二魔将第四席。魔界の兵站担当の大伯爵。ハルファスを現界させる俺。
 次の瞬間、緑色のチュニック風の衣装に身を包み、何故か片足だけが足首から膝上までを露わにしたパンツスタイルのゴージャスな美人タイプの魔将が顕われていた。

「ハルファス。すまんけど、軽食と飲み物。それに、このカジノで使用しているカードを複数、用意して貰えるか?」

 腹が減っては何とやら、とも言いますから軽食は必要ですし、切り札のディーラーからカード勝負を挑まれた場合は、こちらがディーラー役を遣る事を条件に勝負を受ける心算ですから、その時用の準備も必要です。

 サイコロよりは確実に勝てる勝負ですし、ルーレットでこれだけ勝ちまくっているタバサに対して、ルーレット勝負を挑んで来る訳はないでしょう。
 今までのタバサが潰して来たディーラーたちにしたトコロで、自らの望んだ場所に球を入れる事が出来るディーラーの可能性だって有ったはずですから。

 サイコロは論外です。鳴き猫……つまりテーブルに細工を施して有ったり、サイコロ自体に細工が施してある可能性も有ったりします。そして、もしそうで無ければ、純然たる意味での運勝負と成りますから。

 そうして俺に出来るイカサマは、カードに関しては、タネの有るイカサマです。
 基本的には、カードの山の交換。積み込みを行ったカードを使用してのイカサマですから、タネが無ければ、虚無(ジョーカー)のカードをタバサの方に回す程度の小細工しか為せませんから。

 それも、シャッフルしている最中に、カードを確認出来た時に限られますしね。
 一応、タバサの花神の能力……妖精のたぶらかし。つまり、幻影を使って、俺の小細工を行う手元の認識をずらす予定ですが、流石にそれもあまり多用すると、最後まで効果を発揮しない可能性も有りますから。

 ハルファスの準備してくれた軽食……サンドイッチを食べながら、カードの積み込みを行う俺。
 カードの山は三つ。本当はもう少し欲しいトコロなのですが、これ以上と成ると、流石に隠して置く場所に困りますからね。出来るだけ、表面から見ても不自然な箇所のない様子は維持する必要が有るでしょう。

【シノブ。物理反射と魔法反射を施して置く事を推奨するのです】

 俺とタバサの会話が終わり、小細工用のカードの山を作成している最中に、俺の式神の中では一番おしゃべりが多い黒の少女神からの【念話】が繋げられた。
 ただ、カジノに侵入して来た時ほどの緊張した雰囲気では有りませんでしたが。

 但し……。
 確かに、俺の作戦でもダンダリオンの警告通り、物理反射は施して置く心算ですが、魔法反射の方は多少の問題が有ると思うのですが。

「このカジノは一定時間ごとにディテクトマジックで魔法の使用の有無を調べている。せやから、魔法反射を施して置いても、ディテクトマジックを反射して仕舞って、簡単に無効化されて仕舞う。更に、その魔法反射をカジノ側に察知されて身体検査などをされると、非常に厄介な事になるから……」

 俺は、実際の声に出して、ダンダリオンに答えた。
 当然、同時にタバサにも聞かせる意味から、そうした訳なのですが。

 まして、俺のイカサマ用の積み込みを行ったカードの山が発見されたら、シャレにならない状態になるでしょう。
 もっとも、その結果としては、ある意味、このカジノが潰れる事は間違いないのですが。

 全ての従業員がボコボコにされた挙句、ここに有ったカジノをガリアの国家権力が潰したと言う事実が残るだけだとは思いますが……。

【だったら、呪殺防止用の禁呪を施して置く事を推奨するのです】

 諜報担当のダンダリオンの【念話】が続く。いや、今の彼女は、諜報担当の部分ではなく、あらゆる知識を授けてくれると言う、知恵の女神の側面で話し掛けて来ていると言う事だと思います。

 それにしても、……呪殺防止用の禁呪ですか。確かに、初歩の禁呪ですし、他の呪文すべてを禁止する訳ではなく、呪殺のみを禁止するのですから、そう難しい訳でも有りません。
 まして、この方法ならば、ディテクトマジックには無反応ですから、無意味に魔法を反射して浪費した挙句、カジノ側とのトラブルを起こす元にはならない。

 ……とは思うのですが、それでも、

「そう言うからには、先ず、その呪符の作り方を教えて欲しいんやけどな」

 初歩の禁呪とは言え、禁呪自体が俺の得意分野ではないんですよ。俺自身が五遁木行を得意とする術者なのですが、禁呪とは術の質が違い過ぎて、性に合わないんですよね。

 えっと、禁呪とは、文字通り、全ての物を禁止して行く術の事です。

 つまり、今度の場合は、呪殺系の魔法により死亡する事を禁止する、と言う事に成りますか。
 使い方によっては、非常に応用の効く術なのですが、この術は、簡単に陰の方向に傾く術で有り、俺との相性は最悪。
 例えば、簡単に人の存在を消して仕舞えたり、逆に、あらゆる意味で死を禁止するような術も行使したり出来ますからね。

 そう思い、軽い気持ち……と言う程でもないのですが、少し軽い調子でダンダリオンに対して問い掛ける俺。

 その俺の問いに対して、

【肯定。今度の事件には、モロク系の人身御供を要求する神を信奉する殺人祭鬼が絡んで来ている可能性が有る以上、これは当然の事なのです】

 普段通りの口調で答えるダンダリオン。
 但し……。

 少女の声で、俺の血圧が、すぅっと下がって行くように感じた。
 いや、もしかすると、この部屋の室温自体が一気に三度ほど下がったのかも知れない。

 そう。確かに、ダンダリオンは俺の依頼をあっさりと受け入れてくれたのですが……。
 モロク系の殺人祭鬼。この部分は一体……。

【肯定。このカジノで使われている香は、彼らの祭祀の際や、暗殺者を作り上げる時に使用すると言われている薬物と似ているのです。
 そして、彼らの暗殺術の中で最も恐ろしいのは、相手の心臓を握りつぶす呪い系の呪術が有るのです】

 思わず洩らした思考を【念話】と受け取ったのか、ダンダリオンがそう答えて来た。
 更に、増大して行く悪い予感。

 まして、麻薬を使用した暗殺者の養成を行うと言えば……。
 更に、良く考えてみたら、このハルケギニア世界には、地水火風と虚無と呼ばれる魔法は存在していましたが、呪いに分類される魔法は聞いた事が有りませんでした。

「ダンダリオン。そいつらは、山の老人伝説に登場する暗殺者集団の事か?」

 イカサマ用のカードの山を作る手を止めて、かなり緊張した雰囲気でそう問い掛ける俺。
 ……それに、暗殺者と言えば、タバサを攫おうとした白い仮面の暗殺者たちが存在していたのですが。
 更に、あの連中の任務失敗した後の最期は、明らかに殉教者としての最期だったと思うのですが……。

【肯定。シノブも偶には鋭い事が有るのですね。正直、少し見直したのです】

 ダンダリオンからの【返事】。
 会話の八割は無視するとして、その肯定された部分の意味は大きい。

 山の老人伝説。確か、マルコ・ポーロが伝えていたと思うけど……。それに、この現在(イマ)俺が暮らしている世界は、十字軍の時代の可能性も有ると思っています。
 つまり、山の老人が存在していた時代と、俺が召喚された時代とは、時間的には合致すると言う事になります。

 まして、そこに人身御供を要求するモロク系の邪神が関わって来ると成ると、タバサを攫おうとした暗殺者達の末路と重なる。
 この連中は、自己犠牲を厭わぬ存在ですから……。

 ダンダリオンからの説明は理解出来ました。当然それは、現在の俺とタバサが置かれている状態の危険性についても理解出来たと言う事でも有ります。

 俺は、タバサを見つめる。
 そして、普段通り透明な表情を浮かべ、俺の顔を見つめ返す蒼き姫。

 この少女を危険に晒す訳には行かないな。彼女は俺の事を、唇歯輔車の関係だと表現してくれた相手ですから。
 改めてそう確信する俺。
 但し、そんな俺の勝手な感情など彼女は拒否をするでしょうし、相手の……殺人祭鬼達の目的が何で有るのかを知る為には、敢えて虎穴に入る必要も有ります。

 そして、今回の事件は、その目的を知る好機でも有ると思いますし……。

「どうする。このカジノは危険な場所の可能性が存在する事が判った」

 矢張り最初は、タバサの意志の確認から入るべきですか。そう思い、タバサに問い掛けてみる俺。

 もっとも、この想定は最悪の可能性。もしかすると、そんな危険な連中の末端などではなく、普通の違法カジノが、客から簡単に金を巻き上げる為に、危険な麻薬などの薬物を使用している可能性も存在しています。

 但し、想定は、何時でも悪い結果の方を想定して置くべきだと俺は思っているのですが。

 そうで無ければ、もし結果として最悪の状態だった場合には、それまで組み上げて来ていた作戦を根本から見直す必要が出て来る上に、精神を立て直す時間が必要と成り、次善の策を打つまでに致命的な隙を作り上げる可能性も有りますから。

 まして、この店のディーラーに代表される従業員達は、この異常な空間内でも判断力の低下や幻覚症状などを起こしている様子は有りません。
 つまり、彼らには薬物に対する耐性か、何らかの防御方法が有ると言う事です。

 それで現状で対処する方法はふたつ。一時的に撤退するか、それともこのまま進むか。

 安全なのは一時的な撤退の方。
 そして、後に公的権力に因る強制調査と言う表現の、実はこのカジノに対する強襲攻撃を行い、危険な教団の出先機関をひとつ潰す方法。

 但し、この方法だと確実にトカゲのしっぽ切りが行われ、明日の朝にはこのカジノは、もぬけの殻と成っている可能性が高いでしょう。

 その理由は、タバサを攫おうとした連中の元に、そのタバサと、彼女の使い魔の俺が現れた事を偶然と考える訳はないですから。

 そして、余程のマヌケでない限り、タバサと俺が潜入している事には、既に気付いているはずです。ならば、向こう側……暗殺者側としても、タバサを無傷で捕らえる好機と捉えている可能性が高いと思います。

 つまり、このカジノ内に潜入した段階で退路を断たれている可能性の方が非常に高いと言う事です。
 簡単に撤退する事は難しい可能性も有りますか。

 そして、このまま進むのなら。
 前回の湖畔に置ける襲撃の時のように、俺の排除を先に行うと思いますから、それまではタバサの身は安全だとは思います。
 但し、俺が排除された後は、その限りではないのですが。

 まして、あの暗殺者たちを相手にするのは、かなりの危険を伴う可能性も高い。

 感情を表現する事の少ない透明な表情を浮かべたままで、俺の顔を見つめる蒼き姫。
 しかし、その瞳には、ある種の覚悟を感じさせる強い光を湛えていた。

 ……これは決意。そうして、

「死中に活を求める」

 タバサが短くそう告げた。より彼女に相応しい、抑揚の少ない言葉使いで……。
 但し、彼女の発する雰囲気が、何か強い決意のような物を感じさせている。

 おそらく、その決意とは……。

 進むも地獄、退くも地獄ならば、敢えて進む方を選ぶと言う事。
 まして、上手く行けば、彼女が何故、モロク系の邪神を信仰する殺人祭鬼などに狙われなければ成らないのか、その理由に近付ける可能性も有ります。
 つまり、彼女も、自らが狙われる理由について迫ろうとしていると言う事。

 そして、この暗殺者達が、自らの父親の暗殺に関係している可能性も存在している、と言う事に気付いてもいるはずです。

 但し、この選択が匹夫の勇と成る可能性も少なからず存在しているのですが……。

 もっとも、タバサが決意したのですから、俺は、彼女の目的を達成出来るように、今まで通りに無い知恵を絞って、露払いをしながら進む道を切り開くだけですか。
 それに、少なくとも、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、とも言いますから。

 もっとも、こんな事を考えている事を知られたら……。
 例えば、最悪の場合は、彼女だけでも魔法で転移させようと俺が考えて居る事を、彼女が知ったのなら、彼女は怒るのでしょうか。
 それとも哀しむのでしょうか。

 そう思い、タバサの顔を再び見つめた俺だったのですが……。



 流石に、そんな事を聞く事は出来ませんでした。
 
 

 
後書き
 山の老人伝説とは、マルコ・ポーロが東方見聞録内で記述した内容の事です。
 アサシン。暗殺者の語源となったハッシッシ。つまり、大麻草を使った暗殺者育成教団のような物だと思って頂けると正しいと思います。

 ただ、東方見聞録内では、イスラム教の方々が作ったように記載されているのですが、この『蒼き夢の果てに』内では、モロク系の邪神を祭る殺人教団とさせて頂いて居ります。
 そもそも、東方見聞録の内容自体、史実とは違う可能性も有りますから。

 次。ここで、大きなネタバレの予報。
 このカジノ編は、オルレアン大公暗殺、及び、モード家&サウスゴーダ家滅亡の答え合わせの内容と成って下ります。
 つまり、タバサが不幸に成った理由と、ティファニアの境遇を作り上げた理由は、同根だったと言う事です。

 もっとも、ガリアとアルビオンで、偶然、同じ時期に、王と王弟が争いを初めて、共に内乱状態にまで成る、などと言う事態に陥る訳はないので、そこに何らかの大きな策謀が有る、とする方が二次小説のネタ的には当然なのですが。
 まして、ゲルマニアの皇帝に関しても、継承が行われた際に何らかの内紛が有ったようですしね。

 それでは次回タイトルは、『仮面の支配人ファントム』です。
 
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