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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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闇の海

<アレフガルドの海>

「海上は目印になる物が何もないから、陸地から離れると方向感覚を無くすぞ!気を付けろよ…」
星明かりもないアレフガルドの海を、人工の光を頭上に浮かべた船が1隻、荒波に耐えながら北上して行く。

精霊の祠で出会った、エルフのアスカリーに与えられた船は、精霊神ルビスの加護がある様で、アレフガルドの荒い海でも難破することなくアルル達を守っている。
そんな船上で操船を手伝うことなく船首で胡座をかいているリュカが、船長(仮)のモニカに対し注意を促す。

しかし誰の口からも『何もしてないクセに偉そうに言うな!』等という言葉は出てこない…
何故なら、アレフガルドの海ではリュカの存在は重要だからなのだ。
何もせず船首で座っているのだが、座っていてもらわなければ困るのだ…
リュカの作り出す、半径300メートル程を照らすレミーラが無いと、とてもじゃないが海は危険で、航海など出来る状況ではない!
ティミーなどは、『船旅で初めて父さんの存在が必要になりました。良かったですね』と笑顔で嫌味を言ってしまう程だ。
勿論、カンダタ・モニカ…ついでにラーミアもレミーラを使えるのだが、照らす範囲がダントツで広いリュカが、一番重宝するという…


「でも…まさか『妖精の笛』の情報が、こんな所で役に立つとは思いませんでした」
強烈な明るさに引き寄せられてくるモンスターを撃破しつつ、アルルがアスカリーの言葉を思い出しながら口にする。

精霊の祠で船を与えられた後、石化されているルビスを救うには、妖精の笛というアイテムが必要なのだと告げられた…
それは先日ドムドーラにて、アルルとティミーが仕入れた、役に立ちそうにない情報の中にあったアイテムの事なのだ。

「情報とは、如何なる時に役立つか分からない物なんだよ。パーティーを組んでいるのだから、みんなで共有し合うクセを付けた方が良いよ」
リュカは何時もの様に優しい口調で、若い勇者達にアドバイスをする。
「はぁ~………」
するとティミーが大きな溜息をし、何やら落ち込み始めた。

「何だよティミー…溜息吐いて?」
「………父さんはズルイですよ!何でも出来る完璧な人で……僕は何一つ父さんに勝てやしない!………落ち込みますよ」
「はぁ?いきなり何だよ…」
リュカは息子の呟きに驚き、どうすれば良いのか少し困っている。

「僕は『妖精の笛』の情報は、絶対に意味のない事だと思ってました。でも父さんは…父さんだけは、アレが重要情報だと見抜いてました。…父さんの様になりたい…追い抜いてやりたい…そう思ってても、近付く事すら出来そうにない!…落ち込みもしますよ」
俯きながら悩みを打ち明けるティミー。
そんな息子を思わず抱き締め頭を撫でるリュカ…
「バカだなぁ~…お前は凄い男だよ。僕を追い抜こうとか…そんな事考えなくたって良いんだ」
「しかし…以前もそうでしたが、今回の冒険も父さんが居たからこそ解決できた事柄が多数あります。僕一人では出来ない事です…」

「違うな!以前も今回も、お前やアルルが居たから事態が進展したんだ…お前等勇者がみんなを纏め上げてこそ、物事は進展するんだよ」
「「纏め上げる?」」
悩みを呟いたティミーだけでなく、名前を挙げられたアルルも一緒に小首を傾げる。

「想像してごらん…僕が4.5人居るだけのパーティーで、世界を救う冒険をしていたらどうなるか…」
そう言って話を聞いているみんなの顔を見渡すリュカ。
アルル・ティミーだけでなく、マリーとウルフも青を歪め辟易している。
「…想像できた様だね。そう…きっと冒険は途中で頓挫するよ。僕は自分がやりたい事しかしない人間だからねぇ…誰かが真面目に導かないと、僕は自分の力を発揮しない!…ティミー、お前は勇者なんだ。人々を導く力のある勇者なんだ!自分より出来る…自分より能力がある、そう思える人間を使いこなせれば良いんだよ。お前がその人物より能力が上である必要はないんだよ」

「し、しかし…父さんを使いこなすって…不可能に近くないですか?」
リュカの胸から顔を上げたティミーは、少し晴れやかな表情になり軽口を叩いた。
「何も直接使いこなす必要は無いよ…父さんを操れる人物が居るだろ」
「…母さんですか?」
「その通り!ビアンカを上手く誘導できれば、妻には付き従う夫を使いこなす事が出来るだろ!要はお前やアルルが、パーティー内の仲間を使いこなせれば良いだけの話だよ」
そう言うとリュカは、アルルとティミーの頭を撫でる。



息子の悩み相談を受けてから数時間…
周囲の様子は変わらないのだが、時間的には深夜になった頃…
「何時もそうやってちゃんと『お父さん』をしていれば、ティミーからも尊敬されるのに」
「でも私は、そんなリュカさんの方が好きですよ!」
船首で暇そうに胡座をかくリュカの下に、(ビアンカ)愛人(ハツキ)が近付き、先程のやり取りを語り出す。
「真面目すぎる息子を持つと、父親としては大変だよ…からかうと面白いけどね(笑)」
美女二人を両サイドに抱く様に座らせ、何時もの軽い口調で照れ隠しをするリュカ。

「あの二人はリーダーだからね…今後も人々を導く存在になってほしいね」
「でもアルルもティミーさんも、その自覚が無さ過ぎなような…」
「僕の存在が邪魔だったのかもしれない…僕は身勝手で、何でも勝手に決めちゃうからなぁ…しかもソレで問題なくなるし………アルルなんかは特に依存しちゃってるよね!まぁ、ピラミッド以降は幾分マシになったけど」
「ホント…リュカさんは勝手すぎますよ(笑)」
今回の冒険で、初期から共に行動したハツキが、リュカの行動を笑いながら指摘する。

「ふふふ…昔から身勝手だったわよね。一緒にお化け退治に言った時も、勝手に何処かに行っちゃって、私を一人にしちゃうし…あの時は本当に怖かったんだからね!」
「え、何?…結構根に持ってるの?古い事を持ち出さないでよ」
リュカとビアンカに笑いがおきる。

リュカ以外は交代で休息をしている船上…
眩い光玉と共に明るい笑い声が突き進む。
アレフガルドの北部…マイラへ向けて。







尚、船首で盛り上がってしまい、3人でヤり始めてしまった為、休息していた他の連中も気になってしまい、ちゃんと休憩できなかったという…
本当に勝手な人達だ!



 
 

 
後書き
次回、いよいよマイラですよ!
そうマイラ…
マイラと言えば…
『妖精の笛』?
いやいや
『刀鍛冶』?
ノンノン!

そうアレですよ!皆さん大好きアレですよ!! 
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