とある星の力を使いし者
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第23話
学園都市はある噂で持ちきりだった。
それは学園都市第一位である一方通行タが二人の無能力に負けたという噂だ。
学生達の間ではその噂が流行り、今ではどこかの無能力者が一方通行に勝ったのは自分だと、と言い始める学生が出始めている。
そんな噂など気にせずにいつも通り街中を散歩している、麻生恭介。
正直、彼は噂の事などどうでもよかった。
麻生は自分の力で助けれる人を助けていくと決めたから、一方通行と戦っただけだ。
炎天下の日差しの中歩いていて、少し休憩をしようと考えていた時だった。
「麻生さ~~~~ん!!」
自分の名前を呼ばれたので声のした方に視線を向ける。
そこには、喫茶店の野外テーブルに座っている佐天がこちらに手を振っていた。
麻生は呼ばれたので佐天に近づく。
「こんにちわ、麻生さん。
何かしていたのですか?」
「ただの散歩だ。」
「こんな炎天下の中でよく散歩なんて出来ますね。」
「これ以外にすることがなくて暇なんだよ。」
佐天と会話していると、テーブルの上にプリントや教科書が並べられているのに気が付く。
その一枚のプリントを拾う。
プリントに書かれていたのは、数学の問題だ。
「それは夏休みの宿題です。
でも、なかなか進まなくて気分転換を兼ねて外でやっているんですけど・・・・」
あはは、と苦笑いを浮かべながら答える。
他のプリントを見た限、りあまり進んではいない事が確認できた。
ちなみに麻生は夏休みの宿題が配布されてからその日に全て終わらせた。
「そうだ、麻生さんは高校生ですよね?
だったらこの宿題を手伝ってくれませんか?」
神社にお参りするかのように手を合わせてお願いしてくる。
麻生は小さくため息を吐いて佐天の相席に座り、店員に水を注文する。
「答えは教えないが解き方くらいは教えてやるよ。」
その言葉を聞いて満面の笑みを浮かべる、佐天。
こうして麻生先生の勉強会が始まった。
「つまり、この教科書に載っている公式。
これをこの数式に当てはめると答えが出てくる。」
麻生の説明にふむふむ、と頷きながら問題と睨めっこしている。
「だが、この数式を解く公式はもう一つあってそれを間違えて入れると答えがまた違ってくる。
これはよくテストとかに引っ掛けとして使われるから覚えておいた方がいい。
とにかくだ、まずはこの二つの公式を覚えてその違いを把握してどの数式に当てはめるのかを見極めないと解けない。」
「むむむ、結構難しいですね。」
「耳で聞いていると難しそうに聞こえるが、実際にやってみると案外簡単だ。
まずはこの二つの違いから教えてるぞ。」
佐天に分かるように丁寧にかつ分かりやすいように説明をする。
佐天も違いに分かったのか、中盤辺りから一人で問題を解き始めている。
ふと、佐天の手が止まる。
「その・・・・ありがとうございます。」
「うん?礼なら結構だ。」
水を飲みながら、麻生は聞き返す。
「この宿題を手伝ってくれているのもありますけど私が幻想御手で昏睡した時、私や他の人を目覚めさせてくれたのは麻生さんなんですよね?
初春から聞きました。
お礼を言おうとしても、麻生さんになかなか会えなかったので少し遅れちゃいましたけど。」
「それこそ気にするな。
俺は俺の為に戦っただけだ。」
「それでも私は助けてもらいましたから。」
そして二人の間に沈黙が流れる。
佐天のシャーペンで答えを書く音だけが聞こえる。
しばらくすると・・・・
「佐天さんに麻生さんじゃないですか。」
二人の耳に聞き覚えのある声が聞こえ、顔を上げる。
そこに初春と白井がこちらに歩いて来ていた。
「何しているのですの?」
「見て通り佐天に数学を教えているんだよ。」
「佐天さんが夏休みの宿題を自分からするなんて珍しい事もあるんですね。
もしかして熱でもありますか?」
本気で心配しているのか佐天の額と自分の額に手を当てて熱を測る。
「あのね、初春。
いくら私でも夏休みの宿題くらいちゃんとするわよ。
それに明日は補習もあるから予習しとかないとまずいのよ!」
そう言って両手で初春のスカートを捲り上げる。
コーヒーを飲んでいた学生はスカートの中のパンツを見てコーヒーを吹き出し、通りがかっていた学生は顔を赤くしながらもしっかりとパンツを見る。
初春はすぐさま両手でスカートを押えつける。
「佐天さん!!!」
初春はチラッ、と麻生の方を見るが特に気にする様子もなく水を飲んでいる。
その全く興味も抱いてくれていない所を見てちょっぴりテンションが下がる、初春。
白井は何をしょうもないことを、と言って呆れている。
まぁ、白井が美琴にしている事とに比べると佐天のスカート捲りが可愛く見えるのだが。
すると、白井の表情が風紀委員の表情に変わる。
「ちょうどいいですわ。
お二人の耳にお入れしたい事がありますの。」
白井の雰囲気を感じ取ったのか初春も表情を引き締め、パソコンを鞄の中から取り出し起動させる。
「最近、能力者による無能力者狩りがこの学園都市で頻繁に起こっています。」
初春の言葉を聞いて佐天の驚いている。
「この第七学区以外でもよく行われているようです。
何人かの能力者達が集まり無能力者をゲーム感覚で襲っているのですの。」
「能力をそんな事に使うなんて・・・・」
佐天はこの学園都市の能力に憧れてこの学園都市に入ってきた。
能力に人一倍憧れを持っている佐天にとってショックな事なのだろう。
「風紀委員は何か対策をしているのか?」
「とりあえず、時間が許す限りは裏路地などカメラの死角となっている所を見まわるようにしています。
ですが、被害報告は減るどころか増える一方で・・・・」
「ですので、佐天さんなどの無能力者にこうやって注意を呼び掛けているのですの。」
「確かに無能力者の私が襲われたら大変だしね。」
以前の佐天なら白井の言葉に苛立ちを覚えていたのだろうが、幻想御手の一件で吹っ切れたらしく自分が無能力者であることを受け入れている。
「くれぐれも裏路地などには入らない様にする事、もし能力者が襲ってきたらすぐに連絡を入れてください。」
「なぁ、一つ聞きたい事がある。」
「なんですの?」
「能力者達はどうやって無能力者と能力者を判断しているんだ。」
「どういうことですか?」
佐天や初春は麻生が言っている事が分からないようだ。
麻生は説明を続ける。
「仮に美琴が制服を着ているのではなく、私服を着ていると考えてくれ。
制服なら常盤台ということが分かるから、無能力者でないことがすぐに分かる。
だが、今は夏休み。
制服を着ている人など少なく私服の学生が多くなるはずだ。
さっき言ったように美琴が私服で歩いていて、能力者が美琴を無能力者だと勘違いして襲いだす。
すると、どうなると思う?」
「あっ!」
初春は麻生が言いたい事が分かったようで白井もそこに気付いたようだ。
佐天だけは分かっていないので麻生は分かりやすく説明する。
「もし無能力者だと思って襲いだしても、その対象者が自分より能力が上だったら返り討ちに会う筈だ。
だが、さっきの二人の説明を聞いた時そう言った失敗をした報告は入っていないようだった。
つまり敵は何らかの方法で能力者と無能力者を判断している筈だ。」
麻生の推測に白井と初春は頷きながら納得している。
「そこまで考えが及びませんでしたの。
犯人がどうやって能力者と無能力者を判断しているか、それについても調べないと駄目ですわね。」
「凄いです、麻生さん!!
さっきの説明を聞いただけでこれだけの名推理をするなんて!!」
「さすがにどうやって判断しているまでは分からないがな。」
「いえ、麻生さんのおかげで少しだけ活路が見えてきました。
判断方法を知る事が出来れば捜査の効率が上がりますわ。
貴重な意見をありがとうございます。」
それでは、と言って白井は立ち去っていき初春も急いでパソコンを鞄に入れありがとうございます、と元気よく挨拶して白井の後を追う。
そして麻生と佐天の二人になる。
「あの・・・麻生さん。」
「どうした?」
「突然ですけど、携帯のアドレスと電話番号を教えてくれませんか?」
「理由を聞かせてくれ。」
麻生がそう言うと佐天は不安そうな顔を浮かべる。
「さっきの話を聞いてちょっと怖くなってしまって。
初春は麻生さんはとっても強いって言ってたから何かあったら助けてもらおうかと思って・・・・駄目ですか?」
断られるのが怖いのかさっきよりも不安そうな顔をする。
麻生は携帯を取り出す。
「分かった。
だが、あまり期待するなよ。
俺だって困ったらすぐに駆け付けるスーパーマンではないからな。」
「それでもいいです!!
ありがとうございます!!」
本当に嬉しそうな顔をしてアドレスと番号を交換する。
なぜか佐天はそのまま携帯をギュッと大事に握りしめている。
「さて、いい休憩にもなったし続きを始めるか。」
「はい!!!」
元気のいい返事で勉強を再開する。
そしてそれらがほとんど終わる頃には日が傾いていた。
「日も落ちてきたな。
そろそろ帰った方がいい。
初春達が言っていた事もあるしな。」
「そうですね。
早く帰った方が安全ですね。」
佐天はテーブルの上に散らばっているプリントと教科書をまとめ鞄の中に入れる。
そして、立ち上がり麻生に向かって頭を下げる。
「今日は本当にありがとうございました。」
「俺はただやり方を教えただけだ。
最後の方は一人で問題も解けていたし大丈夫だろ。」
「麻生さんはこれから何か?」
麻生は一瞬、後ろに視線を向けて言った。
「ああ、ちょっと野暮用だ。
悪いが此処でお別れだ。」
「分かりました。
それじゃあまた今度会いましょう。」
振り返って歩き少し進んでから振り返って麻生に向かって手を振る。
麻生も片手で軽く振り返してそれに満足したのか走って帰っていく。
さて、と麻生が呟き近くの裏路地に入る。
少しだけ歩くと、拓けた所に出る。
すると、麻生が通ってきた道と前の道から前後二人ずつの男が現れる。
裏路地の不良とは違い服装もきちんと整えてあり髪もセットしてある所を見ると不良ではない事がすぐにわかる。
「ごめんね~、俺達無能力者狩りをしているだ。
どれだけ無能力者を病院送りにさせたかで点数をつけて競っているんだ。
最近は風紀委員のせいで無能力者を狩れてないから、俺達は他のメンバーに比べて点数が低いんだよ。
だから、お前にはちょっくらカモになってもらうぜ。」
麻生の目の前にいる黒髪の男が楽しそうに話し始める。
どうやらカモという言葉が面白かったのか他の三人も笑っている。
麻生は大きくため息を吐く。
「くだらないな。」
「はぁ?」
「くだらない、と言ったんだ。
最近のガキはこんな屑が多いの。
こりゃあ教師達の頭痛の種だな。」
「調子に乗るんじゃねぇぞ、無能力者が!!!」
バチバチと青白い黒髪男の周りに火花を散らしている。
そして、電撃の槍が麻生に向かって放たれてそれが麻生に直撃し埃が舞う。
「おい、お前一人で倒したら点数はお前だけはいるじゃないか。」
「悪い。
能力一つ開発できない屑に偉そうに言われて腹が立っちまった。」
「でも、こいつも馬鹿だよな。
こりゃあ入院確定だな。」
四人の男達は心底楽しそうに笑う。
「何がそんなに楽しんだ?」
だが、埃のカーテンの中から声が聞こえ、一斉に笑い声がなくなる。
カーテンが晴れると傷一つなく麻生が立っていた。
「な、何でだ!?
俺の最高電力が当たった筈だぞ!!」
「あれで最高か、となると強能力者ってところか。
こっちは超電磁砲の電撃の槍を何度も受けているんだ。
この程度、空間の壁も使うまでもない。」
麻生はすぐさま後ろに振り返り、唖然としている男の顔面に加減なく拳が突き刺さる。
武術の達人が見たら足の踏込み、身体の向きや拳の握り方までが全く無駄がなく、その一撃はとてつもない威力である事が分かる。
殴られた男は後ろの壁までノーバウンドでぶつかる。
そして唖然としていた他の三人がようやく動き出すが、すぐ隣にいた男のみぞに掌底を突き刺し沈める。
電撃使いの隣にいる男の能力は発火能力らしく、サッカーボールの大きさまで火の玉が大きくなりそれを麻生に向けて放つ。
麻生は横に飛んでかわし、すぐ横にある壁を右足で蹴り一気に距離を詰める。
男はもう一度火の玉を作ろうとするが、それよりも早く麻生の左足が男の脇腹を蹴りつけ地面に勢いよく転がり、壁にぶつかってようやく止まる。
黒髪の男が唖然としている間に、他の三人がやられてしまいようやく自分の状況に気づく。
「く、くるな・・・お願いだ、見逃してくれ・・・」
自分では麻生に勝てないと分かったのか涙を溜めながら麻生に命乞いをしてくる。
「お前は自分が襲った無能力者が同じ事を言った時どうした?」
男は何も言えない。
自分は助けてと言われても容赦なく殴る、蹴るの暴行を楽しく行っていたからだ。
「それが答えだ。」
麻生は左手で男の顎を打ち上げると一回転して、遠心力が掛かった左足で男の腹を貫くかのように蹴りが突き刺さる。
男の身体がくの字に折れボキボキ、と骨が折れる音がしてそのまま壁まで吹き飛ぶ。
呻き声を上げる男達を無視して路地から出ていく。
(これは俺が思っている以上に深刻な事態かもしない。)
裏路地を移動しながら、麻生はこの事態を再確認するのだった。
後書き
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