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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第22話

麻生が此処にいる事に美琴は驚き、言葉が出ない。
御坂妹は初めて麻生を見たので、誰だか分からないので麻生に問い掛ける。

「貴方は誰ですか、とミサカはどこの誰だが知らない一般人に問い掛けます。」

「通りすがりの一般人Aだ。」

「ではこんな所になぜ一般人Aがいるのですか、とミサカは再三貴方に問い掛けます。」

「借りを返しに来た。」

麻生がそう言うと美琴はえ?と言葉が洩れる。

「お前のおかげで答えを、生き方を見つけられたからな。
 その借りを返しに来たんだ。」

麻生は美琴と御坂妹の手に重ねていた手を離し、一方通行(アクセラレータ)の所まで歩いていく。
美琴は麻生が一方通行(アクセラレータ)に戦いを挑もうとしている事に気づき止めに入る。

「待ちなさいよ!!
 いくらあんたでも、あの一方通行(アクセラレータ)には勝てない!!」

「そんなのやってみなくちゃ分からない。
 まぁ、お前達にも何か考えがあるようだけど此処は俺に譲ってくれ。」

一方通行(アクセラレータ)は後ろで自分に聞き覚えのない声を聞いて視線だけを後ろに向ける。
その瞬間、一方通行(アクセラレータ)の演算式で作り上げていた高電離気体(プラズマ)が一気にその形が崩れ消滅する。

「な、に・・・・」

一方通行(アクセラレータ)は驚きというより原因が分からなかった。
後ろに視線を向けたが演算式に狂いはなかった。
それなのに高電離気体(プラズマ)は形が崩れ消滅してしまった。
今度は視線ではなく身体全体で後ろに振り向くと、そこに麻生恭介が少しだけ笑みを浮かべていた。

「テメェの仕業か。」

一方通行(アクセラレータ)がその言葉を言うと同時に麻生の姿が視界から消える。
一瞬驚いたが、一方通行(アクセラレータ)の後ろで砂利を踏む音が聞こえたので、振り向くと麻生は上条の側に立っていた。

空間移動(テレポート)の能力者か?)

一方通行(アクセラレータ)はそう考えるが、そうだとするとあの高電離気体(プラズマ)が消滅した原因にならない。
だが、麻生は確かに一方通行(アクセラレータ)の視界から消えたのだ。
こいつが原因じゃないのか?と麻生を睨みながら考える。

「おい、なに寝ている。
 さっさと起きろ。」

麻生は乱暴に上条の腹を軽く蹴るとごほごほ!!と上条が咳き込む。
そして、麻生が近くにいる事が分かる。

「よ、よう、来てたのか。」

「ついさっき来たばかりだけどな。」

麻生は上条の胸ぐらを掴むとまた一方通行(アクセラレータ)の視界から消える。
一方通行(アクセラレータ)は驚く事無く、ゆっくりと後ろを見ると美琴達のいる所に立っていた。
そしてその側に上条を降ろすと、何言わず一方通行(アクセラレータ)に向かい合う。

「さっきの三下を連れて空間移動(テレポート)したって事は大能力者(レベル4)って所か。」

両手を広げ再び風を操り高電離気体(プラズマ)を作り出す。
一度演算式の組み上げた成果なのか、さっきよりも早く高電離気体(プラズマ)が作り上げる。
一方通行(アクセラレータ)はどこか計算が間違っていたのだと考え、次は完璧にしてみせると思った時だった。

「そんな危険な物を黙って作らせると思ったか?」

麻生の言葉と同時に一方通行(アクセラレータ)の頭上にあった高電離気体(プラズマ)が消滅した。
一方通行(アクセラレータ)はさっきよりも強く麻生を睨みつける。

「テメェ、一体何の能力だァ。」

「それを教えると思うか?」

麻生の返答に一方通行(アクセラレータ)は悪魔のような笑みを浮かべる。

「ふ~ン、いいねその態度。
 お前をぶち殺したくなってきたじャねェか!!」

一方通行(アクセラレータ)は上条を吹き飛ばしたのと同じくらいの風を操り麻生にぶつける。
すると、麻生の周りで一方通行(アクセラレータ)が操っている暴風と同じ暴風が吹き荒れる。
暴風と暴風がぶつかりコンテナなどを吹き飛ばしていく。

「さて、九〇〇〇もの「妹達(シスターズ)」を助けるのは面倒だからな。
 ここでお前を倒して実験を中止させる。」

一方通行(アクセラレータ)の視界から麻生が消える。
麻生は一方通行(アクセラレータ)の真後ろに移動していた。
一方通行(アクセラレータ)は麻生の能力を空間移動(テレポート)と考えたがそれは違う。
空間移動(テレポート)で麻生が空間移動できても、さっきの上条と一緒に空間移動する事が出来ない。
なぜなら、上条の右手がその能力を打ち消すからだ。
だから麻生は足に風の魔術の術式を作り上げ移動力を格段に上げたのだ。
これは麻生全体に付加されているのではなく足の部分だけに付加されているので、上条の右手が直接足に触らない限りは打ち消す事はない。
だから上条を掴みながら移動する事が出来たのだ。
麻生の右手にはナイフを持っていてそれを一方通行(アクセラレータ)に向けて振りかざす。
だが、一方通行(アクセラレータ)は麻生が視界から消えてもうろたえる事はない。
なぜなら、彼はデフォルトで全身に反射の膜が張ってあるからだ。
ナイフが一方通行(アクセラレータ)に触れた瞬間、ナイフが尽く砕け散る。
麻生はそれを確認すると後ろに下がる。

「どんなに空間移動(テレポート)してもそンなちンけな武器じゃあこのオレには勝てねェぞ。」

一方通行(アクセラレータ)は魔術の事は知らないので、麻生は空間移動(テレポート)で移動しているのだと思っている。
空間移動(テレポート)だろうと、風の術式による高速移動だろうと一方通行(アクセラレータ)には関係ない。
突然、一方通行(アクセラレータ)の地面が爆発する。
麻生は地面の成分を変換させ一方通行(アクセラレータ)の周りの地面を爆発させたのだ。
それをくらっても一方通行(アクセラレータ)は傷一つなく立っている。

「もう終わりか?
 ンなら今度はこっちの番だな。」

一方通行(アクセラレータ)が地面を優しく蹴ると、そのベクトルを変換させ巨大な衝撃波に変える。
麻生は横に飛ぶことでそれをかわすが、飛んだ方に何本のレールが飛んで来たのだ。

「オラオラ!!
 オレの楽しみを奪ったンだからよォ、ちっとは楽しませてくれやァ!!!」

麻生は飛んでくるレールを避ける動きをしない。
むしろ正面から立ちふさがる。
自分に飛んでくるレールを正面から受け止める。
その衝撃で麻生の両足の地面が軽く吹き飛ぶが、気にすることなく飛んでくるレールに視線を送る。
麻生はそのレールを片手で振り回し飛んでくるレールを全て弾き飛ばす。

「お前、面白れェ能力だな。」

その光景を見ていた一方通行(アクセラレータ)は余裕の表情をしている。
一方通行(アクセラレータ)の反射の壁を打ち破るのは上条の右手だけだ。
その上条は今は動く事が出来ない。
一方通行(アクセラレータ)に恐れるモノは何もないのだ。
麻生はレールを捨てると高速移動はせずに走って、一方通行(アクセラレータ)に向かって行く。
左手を握りしめ一方通行(アクセラレータ)の顔面、目がけて拳を振う。
それを見た一方通行(アクセラレータ)はつまらなさそうな表情をする。

(最後の手段がこれかよ。
 少子抜けだな。
 さてどうやってコイツを)

その先を考えようとしたが出来なかった。
なぜなら、麻生の拳が一方通行(アクセラレータ)の反射の壁を越えてきたからだ。
麻生に殴られ身体が吹き飛び地面に転がる。
訳が分からない。
一方通行(アクセラレータ)はそう思いながら立ち上がる。

(どうなってやがる!?
 あいつもさっきの奴と同じ能力を持ってやがンのかァ!?)

先程の余裕の表情から一転、驚愕と困惑が混ざった表情に変わる。

「なぜ反射の壁を越えてきたか、それが分からないのだろう?
 なら、教えてやる。
 俺の能力を使って拳の周りだけ一時的に物理的法則を捻じ曲げただけだ。」

「なンだと・・・・」

一方通行(アクセラレータ)は麻生の言っている事が理解できなかった。
この星が誕生してから物理的法則などは全て決まっている。
それを捻じ曲げる事など不可能だ。
だが、麻生の能力に常識などと言った物は全く通用しない。

「俺の能力を言っていなかったな。
 俺の能力は「(テラ)」。
 この星の万物全てに干渉し、この星にある法則などを自由自在に変換できる。
 だが、この能力はまだ完璧に操れていない。
 せいぜい二割から三割くらいだから物理的法則も一時的、正確には三秒くらいしか歪められない。
 でも、三秒あればお前の身体に十回は殴る事が出来る。」

そんな能力など一方通行(アクセラレータ)は聞いた事がない。
もしそんな能力があれば絶対能力(レベル6)どころの話ではない。

「それに・・・・」

麻生は面倒臭そうに一方通行(アクセラレータ)に説明する。

「お前の反射の壁は絶対じゃない。
 お前は無意識の内にあらゆるベクトルに有害と無害のフィルタに分けている。
 全てを反射していたらお前は酸素を吸う事も出来ないからな。
 だからこうやって・・・・」

瞬間、一方通行(アクセラレータ)の身体が後ろに数十メートルくらい吹き飛ぶ。

「反射の壁を越えてお前を倒す事も出来る。」

麻生はたった二回の攻撃で一方通行(アクセラレータ)の反射の法則を見切り、その対策をその場で作り上げたのだ。
一方通行(アクセラレータ)は自分が完全に遊ばれている事に気づき苛立つ。

「なめてンじャねェぞ!!!!
 雑魚があああああ!!!!

勢いよく立ち上がりそのまま足元の運動エネルギーを変換させ、一気に距離を詰める。
そして両手を前に突きだして麻生の身体に触れようとする。
いくら反射の原理を掴んでも、それを実行させる前に殺せば問題はない。
一方通行の手に麻生の身体の一部でも触れた瞬間、血管に流れている血液の向きを、生体電気の流れを逆流させられる。
麻生は右手で一方通行(アクセラレータ)の左手を受け止める。
一方通行(アクセラレータ)は笑みを浮かべるが、突如自分が構築していた演算式が消える。
突然何が起こったのか分からない一方通行(アクセラレータ)だが、再び麻生の拳が一方通行(アクセラレータ)の顔面に突き刺さる。

「俺の血液の向きを変えるつもりだったのだろうが、それは俺の身体に直接干渉するという事だ。
 俺は五感や俺の身体に直接干渉してくる能力は、俺の了承がなければ無力化(キャンセル)されるようになっている。」

地面に仰向けに倒れている一方通行(アクセラレータ)に言い聞かせる。
一方通行(アクセラレータ)はふらふらと立ち上がる。

「さぁ立てよ。
 今度はお前の能力、小細工なしで正面から突破してやるよ。」

左手で拳を作り、突き出しながら麻生は言う。
その言葉が一方通行(アクセラレータ)を限界までいらつかせた。

「俺の能力を正面から突破するだァ?
 調子に乗るンじャねェぞ!!!!」

最大まで足元の運動エネルギーを変換させ一瞬で距離を詰め、両手を麻生の顔面目がけて突き出す。
麻生は簡単にかわすと左の拳を一方通行(アクセラレータ)の顔面に繰り出す。
麻生と一方通行(アクセラレータ)の間で凄まじい衝撃が生まれる。
一方通行(アクセラレータ)の反射は相手が強い攻撃すればするほど強く反射される。
二人の周りの地面が少しずつ抉れていく。
それほどまでに麻生の拳の衝撃がうかがえる。
なのに、麻生の身体は吹き飛ぶことなくそのまま拳を前に突きだしている。

(反射は適用されている。
 それならどうしてアイツの身体は吹き飛ばねェンだよ!?)

すると、一方通行(アクセラレータ)の耳に骨が軋む音や折れる音が聞こえた。
他の誰でもない麻生の身体中の骨が悲鳴をあげているのだ。
地面が抉れるほどの衝撃を受ければ指は折れ、腕も折れ、身体の骨は軋み、やがてひびが入るだろう。
その衝撃は骨を通り越して臓器まで伝わる。
それほどのダメージを受けているのに、麻生の身体は吹き飛ばず前に進もうとしている。
麻生は身体が後ろに吹き飛ぶベクトルをただ前に変換しているだけで、骨などは能力の治癒で治療させ続けている。
それでも痛みが無くなる訳ではない。
想像絶する痛みの中、麻生は拳を前に突きだしている。
そして少しずつ、だが確実に前に進んでいた。
一方通行(アクセラレータ)は自分の反射の壁を補強するかのように、全演算式を反射の壁の補強に回す。
それでも麻生の拳は止まらない。

「俺はあいつのように綺麗事は言わない。」

一方通行(アクセラレータ)ではなく自分に言い聞かせるように呟く。

「だが、俺は決めたんだ。
 俺に助けを求める人がいるのなら俺は全力でその人を助けるってな。
 そして美琴は俺に助けを求めていた。
 だからお前を倒して計画を破綻にしてあいつを救うんだ!!」

麻生の拳は一方通行(アクセラレータ)の反射の壁を突き破り、顔面に突き刺さりそのまま後ろのコンテナまで吹き飛んで行った。







次の日の朝、麻生はリンゴを片手に持ちながら病院の中にいた。
入院している上条にお見舞い(といってもリンゴの皮を剥くだけだが)をしにきたのだ。
受付で上条の病室を教えて貰い、そこに向かう。
上条の病室が見えてきた所で、その病室から美琴が出てきた。
美琴は廊下に麻生がいる事に気がついて話しかける。

「あんたもお見舞い?」

「そんなところだ。」

「なら、あいつは麻酔で寝てるからあまり意味ないわよ。」

それを聞いた麻生はリンゴをじっと見つめると、美琴に放物線を描くように投げる。

「それならお前が食べてくれ。」

リンゴを美琴に渡すとそのまま寮に帰ろうとする。
だが、美琴が麻生を呼び止める。

「ま、待ちなさいよ!!
 わ、わた、私は・・・まだ・・あんたにお礼を・・・・いってな・・い。」

後半からは声が小さくなりよく聞こえなかったが、とりあえずお礼が言いたいのだろうと麻生は適当に考え頭をかきながら言った。

「そこまで気にする事じゃない。
 俺は俺に助けを求める人は絶対に助けると、決めてそれを実行したに過ぎない。
 俺は自分の為に戦ったのだからな。」

麻生はそう言って病院を後にした。
後ろでは美琴はまだ納得のいかない顔をしていたが、それでも前とは違い少しだけ笑みを浮かべていた。





その数日後、上条が退院して自分の部屋に戻った。
すると、麻生が珍しく上条の部屋を訪ねてきた。
そして開口一番に言った。

「ご飯を作ってやるよ。」

は?、と上条は呆けてしまったがそれに構わず部屋に入り台所借りるぞ、と適当に言って調理を始める。
ようやく正気に戻った上条はいきなりの展開についていけてないようだ。

「一体どうしたんだ。
 何があったんだ!?」

「うるさいな。
 今日は作りたい気分だったから、ついでに作ってやろうと思っただけだ。」

ぶつぶつ言いながら買ってきた食材をだし調理にかかる。
インデックスは麻生の料理を楽しみしているのか、すでに机に陣取りフォークとナイフを持ってスタンバイしていた。
麻生の突然の行動について考えた上条は、何かを思いついたのか麻生に尋ねる。

「もしかして、一生来ないと思っていたデレ期なのか?」

ピタッ、と麻生の手が止まる。
そして何も言わず部屋を出ていこうする。

「申し訳ございません、恭介様!!!
 何とぞ、踏みと止まってください!!!
 私達においしい食事を作ってください!!!」

目にも止まらぬ速さで麻生の前で土下座する。
麻生は大きくため息を吐くと台所に引き返していく。
調理を開始していると何だかおいしいそうな匂いがするぞ!!、とこれは麻生の飯の匂いだにゃ~!、とどこかの聞き覚えのある声が廊下から聞こえた。
おそらく舞夏と土御門だろうと考えた麻生。
二つの足音はこちらに向かって来ている。
ため息を吐いた麻生はもう二人分のご飯を作る準備を開始した。 
 

 
後書き
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