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木の葉芽吹きて大樹為す

作者:半月
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青葉時代・宣告編

「――火影様……。この様な事は言い難いのですが……」
「そうそう暗い顔をするんじゃないよ、桃華。お前が苦しむ様な事じゃない」

 マダラとの戦いからほぼ一年後。
 私は自分の体を苛む鈍い痛みの原因と向き合っていた。

 目の前には苦しそうな顔の桃華と里の病院で働いている医師の姿。
 兼ねてから内々にしていた事なので、この事を知る者は他にはいない。

「今までのツケが来ただけだ。六道仙人の肉体を受け継いだからって、酷使し過ぎていたみたいだなぁ」
「笑い事ではありません!! なのに、どうしてそんな風にいられるのですか!?」

 泣きそうに顔を歪ませた桃華に、苦笑を浮かべる。
 思えば私よりも年上のこの女性は、昔から不養生な私を心配してくれていたっけ。

「おそらく最たる原因は……一年前の九尾の襲撃事件の際のマダラとの戦いのせいだと思われます。発見された時の柱間様の怪我の状態や、話を聞いた限りでは……この可能性が一番高いでしょう」
「人間の細胞の再生する数には限界があります。それを越えて酷使し続けたせいで……火影様のお体にはかなりの負担がかかり――それで……」
「はいはい。辛気くさい顔をしない。折角の美人が台無しだよ、桃華」

 通夜の様な雰囲気を出す二人に、敢えて明るい声をかける。
 自動再生能力が仇になるなんて、人生何がどう転ぶのか分からないもんだねぇ……。

 しみじみと自分の手を眺める。

 寿命はもって数年なんだそうだ。
 戦闘や普段の業務には問題は無いが、それでもただ生きているだけで私の体は刻一刻と先の見えている死に近付いている。

 まぁ、仕方ないか。寧ろそれだけの代償がなければ割に合わないだろう。

「後数年かぁ。取り敢えずオレが生きている間には絶対戦争は起こさない様にしないとな」
「火影様……!」
「死んだ後にまでは流石に責任は持てんが、それくらいはしておかないとね」

 くしゃくしゃと顔を歪める医師と桃華。

「本当に、火影様はお強い……! 僕は、自分は、火影様がいなくなるかもしれないと思うだけで……こんなにも怖いのに……!」

 今は医師として立派に病院で勤務している彼は元々は戦争孤児で、行く宛が無いならと私が木の葉に連れて来たんだっけ。
 忍びの道にこそ進まなかったが、彼はこうして立派に成長して里のため、人々のために働いてくれている。

 今では木の葉の名医として知られるようになった彼の成長した姿を見つめて、純粋に嬉しいなぁと思った。

「貴方に拾われて、貴方の役に立てる人間に成ろうと……頑張って来たのに、肝心の貴方がいなくなってしまったら、僕は……どうしたら」
「泣かない、泣かない。明日にでも死んでしまうって訳じゃないんだし、今じゃお前も木の葉の名医として皆に頼られる立場だろ? そんなお前が死にそうな顔で患者さんを診てどうするんだ。医者としての心構えは教えたろ」
「はい……、身に叩き込まれましたね。忘れられる訳がありません」

 ぐずぐずと泣き出す彼に微苦笑を浮かべて、その背を撫でる。
 優しい子だった彼に忍びとして生きるよりも人の命を救う職業に就いたらどうだと私が勧めて、医療忍術を教えつつ医師としての心構えを教えたんだっけ。
 そういう意味では彼も私の弟子の一人で、私の忍道ではないけれど……意思を継いでくれる里の一員なのだ。

 彼の中だけじゃない。
 ヒルゼン君やダンゾウ君、ビワコちゃんといった木の葉の未来を担う子供達の中にだって、私が死んだとしても彼らに根付いた私の意思や思いは残っていくんだなぁ。
 ――――それが分かって、とても嬉しいと心から思えた。

 首に手を当てて、そっと視線を伏せる。
 包帯と布で隠した私の首には一年前の死闘の際につけられた枷の様な痕はまだ残っている。
 一年たっても消えない以上、多分この先も――それこそ私が死ぬまで私の首にこの痕は残るのだろうと予測している。

 マダラ、お前は後世にまで伝わる物があるとすればそれは憎しみしか無い、と言ってたな。
 ――けど、それはどうやら正しい答えじゃないみたいだぞ。

 小さく笑って、心の中で今はいないあの石頭の馬鹿野郎へとそっと呼びかける。

 さて、残り少なくなった人生。目一杯するべき事をやっておかないとね。 
 

 
後書き
個人的にうちはの写輪眼が分割払いだとすれば、こっちは一括払い。
強大な力には代償がつきもの。むしろ強大であればこそ、代償は必要……というのが自分の考えなので、こうなりました。
綱手の創造再生にも同じようなデメリットがありましたので、参考としてはそれです。 
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