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戦国異伝

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第七十八話 播磨糾合その八


 荒木にしても三好と衝突せざるを得ない。小寺はそのことを言うのだった。
「この御仁をこちらに引き込めばです」
「摂津に楽に入られるか」
「はい、そうなります」
「ではじゃな」
 信行はここまで聞いてだ。そのうえでだった。
 納得した顔でだ。小寺に言ったのだった。
「その荒木殿に誘いをかけてじゃな」
「そうされれば確実にです」
「ではすぐに話をしよう」
「ただ。その際ですが」
 また言ってきた小寺だった。彼はすかさず言うのだった。
「荒木殿はいささか気難しいところがおありです」
「そこが問題となるか」
「はい、それにです」
 ここでだ。さらに言う小寺だった。
「あの御仁への贈りものも考えられるべきです」
「贈るものもか」
「大事なのは所領や金、宝ではありませぬ」
 そうしたものではないというのだ。
「あの方はそうしたものにはあまり興味がございませぬ」
「では官位か」
 信行は眉を鋭くさせて小寺に問い返した。
「それであろうか」
「いえ、それにも興味はありませぬ」
「では何じゃ」
「茶です」
 それだというのだ。
「小寺殿は無類の数寄者であられます」
「茶というのか」
「はい、それをことの他好まれるのです」
「ではじゃ」
 そのことを聞いてだ。ここで言ったのは。
 羽柴だった。彼は言うのだった。
「ふむ。茶か」
「はい、茶です」
「ではここは」
 考える顔になった。そのうえでだった。羽柴は信行に顔と身体を向けて言うのだった。
「荒木殿につきましてはそれがしにお任せ頂けるでしょうか」
「猿、御主が行くのか」
「戦をせずに摂津に入られるのならそれに越したことはありませぬ」
「それはな。ではか」
「それがしにお任せ頂けるでしょうか」
 確かな顔になりだ。信行に申し出るのだった。
「今度も」
「ふむ。御主がそう言うのならじゃ」
 信行はまずは考える顔になった。そのうえでだ。
 こうだ。羽柴に返したのだった。
「よし、ここはじゃ」
「お任せ頂けますか」
「やってみよ」
 確かな顔になっていた。その顔で羽柴に告げたのである。
「さすれば褒美は思いのままじゃ。兄上にはわしが申しておく」
「はい、それでは」
 こうしてだった。羽柴は軍に先行して摂津の荒木のところに向かうのだった。軍は姫路から信行が率いて発つ。彼の左右にはそれぞれ秀長と蜂須賀がいる。
 その二人にだ。信行は馬上で問うた。
「さて。ここは思い切って猿に任せたが」
「それが不安だと」
「そう仰るのでしょうか」
「不安ではないがな」
 それはなかった。彼も羽柴は信頼している。
 だがそれでもだとだ。彼は言うのだった。
「しかしあの者は何か気付いた様じゃが」
「そのことですか」
「猿が何に気付いたかですか」
「それがわからぬ」
 首を捻ってだ。二人に言う信行だった。
「果たしてのう。猿は何に気付いたのか」
「ははは、あ奴はあれでかなり頭の回転が早いでござるからな」
 蜂須賀が笑って話す。 
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