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戦国異伝

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第七十七話 播磨入りその三


「兵の強弱は大事じゃがそれだけで戦は決まらぬ」
「ではまさかまことに武田や上杉をですか」
「織田がですか」
「うむ、倒すやもな」
 その可能性をだ。氏康は決して否定しなかった。
 そしてそのうえでだ。彼はだった。
 腕を組み考える顔になりだ。そのうえで述べたのだった。
「織田信長、敵にするには手強い男じゃな」
「しかしです。我等もです」
「戦になっても負ける訳にはいきませぬ」
「生きなければなりませぬ」
 北条家がだ。そうしなければならないというのだ。
「ですから必ずです」
「この小田原城に篭もって」
「そのうえで」
「戦い抜きましょう」
「この城の守りは固める」
 難攻不落と呼ばれているだ。この小田原城のだというのだ。
「そして他の城もじゃ」
「忍城等をですか」
「関東各国の城を」
「うむ、固める」
 小田原だけではなかった。氏康が言うのは。
 そしてだ。さらにだった。
「そのうえでこの小田原を軸としてじゃ」
「城と城をつなぎ」
「そして守りにされるますか」
「城は一つでも堅固となる」
 だからこそ誰もが築く。それに加えてだった。
 氏康は己の頭の中で関東の地図を描きつつだ。そのうえで述べたのである。
「しかしそれが幾つともなるとじゃ」
「まさに不落」
「国全体がそうなりますな」
「その通りじゃ。しかしここで忘れてはならぬことがある」
 氏康のその目が強い光を放った。そのうえでの言葉になったのだ。
「城はただそこにあるだけでは何もならぬ」
「そこに人がいてこそです」
 今言ったのは幻庵であった。北条家の長老である彼がだった。
「城は城として働くのです」
「その通りじゃ。だからじゃ」
「城と人ですな」
「信玄は人は城というがわしは違う」
 具体的にだ、どう違うというとなのだ。氏康と信玄ではだ。
「わしは人と城じゃ」
「一つではなく二つ」
「そういうことですな」
「左様じゃ。わしは二つと考えておる」
 氏康はまた家臣達に話した。
「人と城はじゃ」
「では兵も揃えますか」
「そちらも」
「そうせよ。五色だんだらの下の相模兵は確かに弱い」
 どうしてもだった。武田や上杉と比べると。
「しかしそれでも戦に勝つことはできるのじゃ」
「人と城を巧みに使い」
「そうして敵を凌ぎ」
「そういうことじゃ。まず第一に武田や上杉にも備える」 
 その両家こそが北条の最大の脅威だった。山内、扇谷の両方の上杉を倒し関東を制圧してもだ。それでもまだ北条には敵が存在していたのだ。
 それが武田と上杉だった。まずはその両家だったのだ。
「武田とは同盟を結んでおるがな」
「しかし相手は甲斐の虎です」
「油断は出来ませぬ」
 家臣達が皆言う。虎だけあってだ。流石に誰もだった。
「ましてやあの御仁は野心が強いですから」
「一度揉めた時代もかなりのものを取られるところでした」
「ですから」
「うむ、あの者は信じられぬ」
 氏康はその信玄について断言した。 
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