久遠の神話
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第三話 見てしまったものその二
「ついこの前までランドセル背負っていた子供相手にですか」
「そんなことしてたんですか」
「俺が成敗しようかと思っていた」
顧問の先生もだ。そう考えていたというのだ。
「だがその前にだ」
「大学でやっつけられたんですね」
「悪事も暴かれて」
「それで今は剣道界にもいない」
追放されたというのだ。
「もう竹刀を握れないどころか身体を動かせないようにもなった」
「当たり前ですよね、それって」
「当然の報いですよね」
「比良屋経市楼といったな」
その教師の名前も話される。
「その教師の名前は」
「それでその教師がですね」
「再起不能になったんですね」
「それで今度刑務所に入ることになった」
まさに最高の因果応報の流れだった。
「いいことだ」
「ですね。本当に」
「というかそんなのが教師で剣道教えてたって」
「とんでもないことなんじゃ」
「そうだ。とんでもないことだった」
まさにそうだとだ。先生も話す。
「しかしそれもあらためられた」
「あの大学生の人っていいことしたんですね」
「ですよね」
「成敗されなければならない悪もある」
時代劇の様な話だ。しかしこれも現実だった。
「そういうことだ」
「ですね。本当に」
「その通りですよ」
「それで俺はだ」
先生はここで話を変えた。
「御前等は走らせる」
「まずは体力ですね」
「そこからですね」
「そうだ。とにかく走れ」
「走るんですね」
「まずは」
「そうだ。何ごとも走ってからだ」
先生の言葉は変わらない。
「ただしだ」
「ただし?」
「ただしっていいますと」
「兎跳びはさせないからな」
それは絶対だというのだ。
「あの中学の教師はさせていたそうだがな」
「あの、兎跳びって」
「あれまずいでしょ」
「そうでしょ」
兎跳びと聞いてだ。上城達もだ。
顔を顰めさせてだ。それぞれ言った。
「あれは足腰痛めるんですよね」
「特に膝を」
「そんなのとっくの昔にわかってません?」
「それをさせていたって」
「その教師何だったんですか?」
「馬鹿だ」
先生の言葉は鞭になっていた。
「そんなこともわからない体育教師だった」
「体育教師こそ一番わかることなんじゃ?」
「だよな。そういうのって」
「身体を動かして扱うことを教えるんだから」
「それがまずわからないって」
「知らないにしても」
「そこまでの馬鹿でも先生になれるんだな」
そしてこの結論が出たのだった。
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