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戦国異伝

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第七十三話 近江掌握その八


「向こうが出陣するより前に出たいがそれもまだ時間がある」
「ではどれだけ休息を」
「二日でどうじゃ」
 それだけ休むというのだった。
「これでどうじゃ」
「そうですな。一日だけですと兵の疲れは充分に取れませぬ」
 林はまずは一日について述べた。
 そしてそれからだ。こうも言うのだった。
「ですが三日ですと敵に遅れを取りますし兵達がかえって緩みます」
「だからじゃ。二日じゃ」
「それで宜しいかと」
 あらためて頷く林だった。彼のその言葉を聞いてだ。
 信長はあらためて断を述べた。家臣達一同に告げたのである。
「ではよいな。二日休みそれからじゃ」
「都にですな」
「いよいよ」
「うむ、三好と松永を倒し上洛する」
 まさにだ。そうするというのだ。
 このことを述べてからだ。信長は今度はだ。
 家臣達にだ。笑みを見せて言うのだった。
「では近江を手に入れた祝いにじゃ」
「それで、ですか」
「これより」
「宴を開こうぞ」
 このことを言ってだ。そのうえでだった。
 彼は早速酒を出させた。ただし彼は酒ではなく茶だ。やはり酒は飲めないのだ。
 その信長はだ。茶を飲みつつまた言う。
「さて、近江を手に入れたならばじゃ」
「それならばですか」
「土地に兵ですな」
「その二つですか」
「それに人じゃ」
 このことも話すのだった。
「近江の人材も必要じゃな」
「近江のですか」
「人材も用いられますか」
「無論じゃ。近江にも人がおる」
 尾張や美濃と同じくだ。いるというのだ。
 このことを述べてからだ。再び家臣達に言うのだった。
「蒲生賢秀という者がおったな」
「蒲生、近江の国人ですな」
 ここで言ったのは林通具だった。彼の知っている者だった。
「確かその子がかなりの出来者だったかと」
「そう、六郎は知っておるか」
「はい、蒲生氏郷といいました」
「その者に会いたいのう」
 人を求める信長の癖が出た。その笑みがにやりとしたものになった。
 そしてその笑みでだ。さらに言うのだった。
「是非共な」
「そして出来者ならばですか」
「うむ、用いる」
 こう通具に述べる。
「そうする」
「畏まりました。それでは」
「他にもおったな」
 また言う信長だった。
「確かこれまた若い者じゃったが」
「若いですか」
「それで近江の傑物ですか」
「そうじゃ。一人おったが」
「その者といいますと」
 ここで言ったのは長政はだった。彼はだ。
 強い目の光を出してだ。そしてだった。
 信長に述べた。
「大谷吉継でしょうか」
「ほう、知っておるか」
「はい、聞いたことがあります」
 そうだとだ。信長に述べる。長政のその話を聞いてだ。 
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