久遠の神話
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第三十五話 止める為の戦いその四
強い目でいた。そしてその目で加藤を見据えていたのだ。
「俺達もまた多くの戦いを経てきた」
「それは御前だけじゃないからな」
「それなりの力は持っている」
「少なくともやられはしないさ」
こう言ってだ。二人同時にだった。
一旦後ろに跳んだ。その瞬間だった。
二人は先程までいた場所に無数の紫の矢が刺さった。魔の矢が。
後ろに着地してからだ。工藤は構えを取りながら言った。
「攻撃は剣だけではないか」
「貴様等もそうだな」
「確かにな。剣士は剣だけで戦うものではない」
工藤もその通りだと返す。
「力も使う」
「そういうことだ。だからだ」
「今貴様はそうしてか」
「矢も使った」
魔の矢、それをだというのだ。
「しかしそれは読んでいたのか」
「貴様の目を見た」
工藤は加藤のその蛇、しかも猛毒を持っているそれを思わせる剣呑な目を見て言った。人の目ではなくまさに野獣のその目を見てである。
「貴様は俺達に攻撃をしながらだ」
「動いたというのか」
「一瞬、そして僅かだった」
「けれどな。動いたんだよ」
高橋も言う。
「そしてその動いた方から気配を感じたんだよ」
「魔の気配、だから」
「俺達は咄嗟に後ろに跳んだんだよ」
「そういうことだ」
「成程な」
その話を聞いて頷く加藤だった。頷きはした。
しかし目はそのままだった。やはり剣呑な野獣の目だ。
その目で工藤、そして高橋を見据えてだ。それで言うのだった。
「目は口程にと言うからな」
「まして貴様の目は鋭い」
「殺気に満ちていて目につくんだよ」
「だからこそだ」
「こうして動けたんだよ」
「そういうことか。目か」
その話を聞いてだった。加藤はというと。
またその巨大な剣を振った。するとだった。
波が来た。だがそれは水の波ではない。
魔の波だ。何メートルもある波が彼の後ろから起こり二人に襲い掛かってきたのだ。
そしてその波を見てだ。工藤は言った。
「あの波に飲まれるとな」
「ええ。そのまま終わりですね」
「海の波と同じく飲み込んでくるな」
「ええ、間違いなくですね」
「だからだ。ここはだ」
こう高橋に言っていく。
「かわすか防ぐか」
「それともですね」
「立ち向かうかだ」
「どれにします?」
高橋は不敵な笑みになっていた。
そしてその笑みでだ。こう工藤に問うたのである。
「ここは」
「さっきはかわした」
「防ぎもしましたね」
「それぞれやった」
「ええ、後は」
「立ち向かうという選択肢がある」
工藤もだ。何時しかだった。
不敵な笑みになっていた。そしてその笑みで言うのだった。
「ではいいか」
「ええ、望むところですよ」
「それではだ。いいな」
「ええ、何時でも」
二人で横に並んで同時にだ。剣を構えて。
力を込めていく。そうしてだ。
二人の力をそれぞれ放った。一直線に。それで波に力を浴びせようとする。
加藤はその波の上に立っている。そこから言うのだった。
「さて、この波だが」
「我々に防げるか」
「そう言いたいんだな」
「そうだ、できるか」
このことをだ。二人に問うのだった。
「貴様等にな」
「俺は自衛官だ」
工藤は彼の職業から答える。
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