戦国異伝
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第七十三話 近江掌握その四
「どうやらのう」
「まあ信じる信じないは別にしまして」
「好き嫌いもじゃな」
「ええ、ただそれでもです」
「あやかしはおるか」
「わし等は連中といつも戦ってきましたから」
それでだ。わかると返す煉獄だった。
「そういうことで」
「あやかしのう。まさかと思うが」
「あやかしっていってもです」
「鬼や天狗か」
「いえ、黒い服を着た」
「そうした連中でしょうか」
二人はだ。ここでこんなことを言った。
「その連中が一番厄介で」
「何かよくわからない者達です」
「黒い服?」
「服はその都度変わる感じですが」
「基本はそれです」
「黒?上杉か?」
蜂須賀はまずは彼等を連想した。
「飛騨にも来ておるのか」
「いや、これがですね」
どうかとだ。煉獄は話すのだった。
「違う感じでして」
「上杉の手の者ではないのか」
「どうも違いますね」
「確か日本にはです」
今度はヨハネスが言ってきた。
「山の民という者達がいますね」
「あの者達か」
「はい、小六殿は御存知ですか」
「何度か会ったこともある」
「そうなのですか」
「山の奥におる。変わった者達じゃ」
こうだ。彼等のことを話すのだった。
「言葉も暮らしも全く違うしのう」
「私達は彼等ともよく付き合っていますが」
「その山の民達ともか」
「どうも違います」
「だからあやかしというのじゃな」
「はい」
それでだと答えるヨハネスだった。
「そう見ています」
「左様か」
「はい、飛騨ではそうした者達と戦っていました」
「ふむ。御主達も色々あったののじゃな」
「そしてその戦の中で」
どうかとだ。ヨハネスはだ。
ここでも剣を振るいだ。六角の兵達を倒していきだ。遂にだった。
彼が最初に門のところに来た。そしてその次にだ。
煉獄も来た。彼が門の右、ヨハネスが左についた。
それからだ。彼等は蜂須賀に言ったのである。
「では今より」
「門を開けるんですね!」
「そうじゃ。開けよ!」
まさにそうせよとだ。蜂須賀も応える。
彼も今まさに門のところに着こうとしていた。その彼を見つつ。
二人は一斉に門を開けた。それを見てだった。
柴田は櫓への射撃を止めてだ。即座に己が率いる兵達に命じた。
「今じゃ、門に入れ!」
「はい、それでは!」
「すぐに!」
「そのまま城に雪崩れ込むのじゃ!」
簡潔で尚且つ的確だった。その指示を出してだ。
柴田も自ら門に向かって突き進む。そうしてだった。
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