戦国異伝
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第七十三話 近江掌握その三
「ならばそれぞれ前と後ろに向かうのじゃ」
「わかったよ。それじゃあね」
「今から派手にやるか」
「武勲を挙げてやろうぞ」
飛騨者達はそれぞれ陽気に言ってだった。
そのうえで蜂須賀と共に前後に散ってだった。
まずはだ。からくりがだ。その杖を突き出してだ。
「喰らえっ!」
杖の先から炎を出してだ。六角の足軽達にぶつけたのである。
六角の兵達はそれに怯む。そこにだ。
風がさっと動きだ。懐に飛び込みだ。
次から次に拳と蹴りを繰り出し倒す。続いてだ。
拳はゆっくりとした動作で、だがその速さは素早く動き。
そのうえで敵兵を殴り飛ばしていく。まるで棍棒の様な威力でだ。六角の兵達は次々と吹き飛ばされのされていく。三人の攻撃を見てだ。
六角の兵達は慌てふためきだ。こんなことを言い合った。
「な、何だこの連中!?」
「一体何者なんだ」
「見たところ織田の忍だが」
「この様な異形の者達がいるのか」
「それは失礼な言葉だよ」
獣が彼等に不機嫌に返す。
「僕達個性があるだけだよ」
「そうなんだもん」
肉も言う。彼等もだ。
獣は巨体からは想像できない動きで兵達に接近し右手のその爪で次々と切る。鎧をまるで紙の様に切り裂き兵達を倒していく。
肉は一旦飛び上がり鞠の様に撥ねつつだ。その脂肪の身体でだ。
敵を潰していく。彼等も恐ろしい強さだった。
その彼等の活躍の中でもだ。とりわけだ。
ヨハネス、それに煉獄はだ。それぞれの剣、刀を振るいだ。
前にいる敵兵を切り伏せつつだ。門に向かっていた。
「くっ、この二人が特に強いぞ!」
「な、何だあの十字の剣は!」
「南蛮の者か!」
「あの鎧には刀も弓も効かぬか!」
ヨハネスの鎧はあらゆる刃や弓矢を退けていた。そのうえでだ。
彼は煉獄と共に門に向かう。その煉獄もだ。
右手に持つ刀を振るいだ。敵兵を陣笠や具足ごと断ち切る。そうしながらヨハネスに言うのだった。
「後ろは他の奴等が引き受けているからな」
「だからですね」
「ああ、俺達は門だ」
その門を見据えながらの言葉だった。
「あの門を開けるぞ。いいな」
「わかりました」
ヨハネスは煉獄のその言葉に頷く。その二人の間にだ。
蜂須賀が入った。その彼が二人に言った。
「やりおるのう。まさに無人の野を行くが如しじゃ」
「へっ、こんなのは」
煉獄が不敵な笑みでその蜂須賀に述べる。
「何てこともないんですよ」
「御主等ならばか」
「わし等飛騨者は山の中で色々な奴等と戦ってきましたからね」
「山?では熊か」
「いえ、その他にもですよ」
「色々いましたよ」
煉獄だけでなくヨハネスも答えてきた。
「山には何かといますから」
「そういった連中といつも戦ってきたのです」
「色々というと」
そう聞いてだ。蜂須賀はだ。
その手にしている手裏剣を投げ苦無を振るい彼自身も敵兵を倒しつつ前に駆けながらだ。そのうえで煉獄とヨハネスに言った。
「あれか。あやかしの類か」
「まあそういうところです」
ヨハネスが彼の問いに答える。
「強いて言うのなら」
「あやかしのう」
「信長様は信じておられませんね」
「殿はそうした話は好きではないようじゃな」
煉獄にはこう返す蜂須賀だった。
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