久遠の神話
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第三十五話 止める為の戦いその二
そしてそのうえでだ。彼は加藤を見据えたまま高橋に尋ねたのだった。
「逃亡中、こいつは隠れているだけだと言うが」
「ええ、その間もずっとでしたよ」
「事件を起こしていたな」
「わかっているだけで二十件ですよ」
それだけの犯罪を犯してきたというのだ。
「傷害事件をね。運がいいのか殺人事件はないですけれdp」
「そういう奴だったな」
「戦っているだけだ」
野獣の目だった。まさに。
「それはな」
「確かにな。御前は喧嘩はしたがな」
「安心しろ。戦わない奴には興味がない」
そうだというのだ。
「全くな」
「しかし御前はどれだけの人間を傷つけた」
「数えてはいない」
素っ気無かった。今度の返事は。
「最初からそのつもりもない」
「御前はわかっているだけで三十七の容疑がある」
殺人はないがだ。それだけの事件があるというのだ。
「その御前をここで逮捕する」
「警察としてか」
「そうだ。詳しい話は署で聞く」
こうも言うのだった。
「楽しみにしているんだな」
「生憎だが警察に捕まることはない」
絶対の自信を以て。加藤は言い切った。
「剣士の戦いに勝ちそれからだ」
「戦い続けるっていうんだな」
「その通りだ。俺の願いは永遠に戦い続けることだ」
やはり野獣の目だった。今も。
その野獣の目で二人を見据えながら、遂にだった。
彼はその手に剣を出してきた。それは。
「あれは」
「あの剣は」
禍々しかった。その形は。
しかもそこから瘴気を放っている。その剣を見て工藤が言った。
「日本の刀ではないな」
「そうですね。あれは確か」
「知っているか、あの剣は」
「いえ、ちょっと」
見ればだ。剣は異様に大きい。しかもだ。
柄の辺りが十字になっている。加藤はその己の身体程の剣を両手に持っている。
そしてその剣、無気味な紫色のそれを見ながらこうも言うのだった。
「いい剣だ」
「グレートソードだったかな」
高橋はその剣の名前を言った。
「確か」
「そう呼んだのか」
「自分で知らなかったのか?」
「剣の名前に興味はない」
加藤は高橋の言葉に素っ気無く返した。
「問題は使えるかどうかだ」
「また随分と即物的だな」
「俺は戦いだいだけだ。そしてこの剣はだ」
「御前自身なんだな」
「声に聞いた」
彼にもだ。あの声は語り掛けてきたというのだ。
「剣はそれぞれの剣士が想像し形になるのだったな」
「そうらしいな。俺達の剣もな」
「そうだと聞いている」
高橋だけでなく工藤も言ってきた。
「だから剣の形は決まっていない」
「それぞれの剣士の思う形になるんだったな」
「そうらしいな。そしてだ」
己のその紫の剣を見ながら。高橋はまた言う。
「俺はこの剣で戦ってきた」
「怪物達とか」
「生憎今まで剣士には会ってこなかった」
工藤の問いへの言葉だ。
「これまではな。怪物共だけを倒してきた」
「ではどれだけ倒してきた」
工藤は加藤にまた問うた。
「相当な数の様だがな」
「では御前はこれまで食べたものの量を知っているのか」
これが加藤の返答だった。
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