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久遠の神話

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第三十四話 戦闘狂その九


「私がそうした高潔な人間なら」
「はい、ですから」
「先生ならです」
「私は教師は高潔でなければならないと考えています」
 教育者としての倫理感をだ。高代は今述べた。
「そうした考えもありますので」
「だからですか」
「それ故に」
「そうであれば嬉しいです」
 高代は笑っていた。やはりその笑顔は優しげなものだ。 
 こうした話をしてだ。そのうえでだった。
 高代はこの場では最後にだ。二人にこう言ったのだった。
「よくお考え下さいね」
「はい、そうしてですね」
「これからですね」
「決めて下さい。どちらにしても」
 二人で相談するという選択肢も提示してだ。そのうえで高代はベンチから立った。そして二人に顔を向けてだ。それからこの場では最後にこう言ったのだった。
「ではまた授業で」
「はい、わかりました」
「授業も宜しくお願いします」
 こう話してだ。そのうえでだった。
 上城達は高代との話を終えた。そうしてだった。
 その日は部活に出た。そのうえで校門のところで待ち合わせて一緒に帰ろうとする。だが。
 その前にだ。一人の男がいた。背が高く痩せている。
 ラフなシャツにあちこち傷の入ったジーンズを身に着けている。そうして。 
 鋭い、蛇を思わせる目に小さい口を持っている。頬は痩せ顔は全体的に三角になっている。それも細長い三角形である。
 黒く収まりの悪そうな髪を鬣の様に伸ばしている。彼は上城を見てだ。こう彼に言ってきた。
「御前は」
「貴方はまさか」
「剣を持っているな」
「はい」
 彼が誰かを確信しながらだ。上城は彼に答えた。
「持っています」
「なら話は早い。死ね」
 一言でだ。男はこう告げてきた。
「今ここでな」
「上城君、危ないわ」 
 樹里が横からだ。彼に告げる。
「この人これまでの剣士の人と違うから」
「殺気が凄いね」
「何か野獣みたいな」
 それは樹里にもわかった。
「この人やっぱり」
「剣士。けれど」
「気をつけて」
 真剣な顔でだ。樹里は上城に告げた。
「この人、冗談抜きにね」
「危険だからだよね」
「うん、そうだから」
「今は」
 こう言ってだ。そうしてだった。
 上城はふとだった。剣を抜こうとした。だが。
 ここで不意にだ。彼は動きを止めた。剣を抜こうとしたがだ。
 それはできなかった。男を見てだった。
「けれどこの人は」
「戦えないの?」
「どうしよう」
 こう言うのだった。苦しむ顔で。
「戦ったら。それは」
「逃げた方がいいわ」
 樹里はこう上城にアドバイスした。
「今はね」
「けれど、逃げるのも」
「できないの?」
「僕はどうしたらいいんだろう」
 剣を抜こうとしたができなかった。今は。
 それでもだ。彼は無意識のうちに樹里の前に立った。そうして彼女を男から守りながらそうしてだ。彼女に対して言うのだった。
「けれど。一つだけどうするかわかってることがあるかもね」
「何?それって」
「逃げて。今のうちに」
 こう言うのだった。
「そうして。いいね」
「私だけ逃げろっていうの?」
「先生言ってたよね。逃げるのならね」
 守るべき人がいるのなら自分だけ逃げてはならない、高代の言うことは理解していた。 
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