久遠の神話
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第三十四話 戦闘狂その一
久遠の神話
第三十四話 戦闘狂
上城は今は高代と共にいた。だが闘ってはいない。
樹里と共に三人でいてだ。そのうえで昼休みの校庭のベンチに座りながら話をしていた。
後ろに緑の芝生と木々がある。白い光が上から差し込めている。
青いアスファルトの上にあるその黄色いベンチの上に座っていた。上城が中央にいて右手に樹里、左手に高代がいる。その高代が上城に言ってきたのだ。
「私はあくまで教育者です」
「先生なんですね」
「はい、そして君は生徒です」
こう上城に言うのだった。
「そして教師は生徒を慈しむものです」
「それは義務ですか?」
「自然のことです」
「自然ですか」
「教師は生徒を教え導くものです」
優しい目をしての言葉だった。言葉遣いもそうなっている。
だがその中でだ。高代は確かにこう言うのだった。
「例え戦う相手でもです」
「だから僕にもですか」
「そうです。教師として接しています」
「ですが戦いでは」
「君を倒す必要があります」
こう言うのだった。
「私は私の理想とする教育の場を設ける願いがありますので」
「学校ですか」
「八条学園は確かに素晴しい学び舎です」
このことは彼もわかっていた。充分なまでに。
「偏った教育はなく。しかも教師も生徒を信頼し慈しんでいます」
「そうした先生が多いですね」
「残念ですが我が国ではそうした教師は少なくなっています」
「そういえば僕も中学までは」
「どうでしたか。上城君の中学までの先生達は」
「いい先生もいました」
ベンチに座りながらだ。上城は話す。三人共丁寧な姿勢で座って話をしている。
「ですが。酷い先生も」
「いましたね」
「異常な暴力を振るう先生がいました」
「暴力団員の様にですね」
「はい、そんな感じで。機嫌が悪いとすぐに」
生徒にだ。そうした暴力を振るったというのだ。
「女の子を泣かせて笑っていました」
「最低の人間ですね。教育者以前に」
高代はそうした教師をばっさりと切り捨てた。
「女の子。中学生ですね」
「部活。空手部だったのですけれど」
「どうして泣かせたのでしょうか」
「僕は見てただけです。部活が違いましたから」
彼は中学の時から剣道部だったのだ。だから空手は知らない。
だがそれを見てだ。知っていたのだ。
「中学生では禁じられているらしい手を使って。女の子を泣かせて」
「笑ってましたか」
「先生が禁じ手を生徒に使うのは」
「あってはなりません」
決してだというのだ。
「禁じ手を教えるのも教師の務めですからね」
「じゃあ生徒に使うのは」
「問題外です。ましてやそれを女の子に使って泣かせるのは」
「やっぱり人間として」
「最低です」
高代は今は表情を消している。しかし糾弾しているのは明らかだった。
「そうしたことをしては絶対にいけません」
「やっぱり。そうですよね」
「そうした先生が多いのが今の我が国の教育です」
残念ながら事実だった。このことも。
「そうしたことを。私は知っていますから」
「だからですか」
「生徒も悪くなるのです」
「先生が悪いとですか」
「思春期の大切な時期にこそよい人に教えられるべきです」
「若し悪い人に教えられると」
「その人にとって悪影響が出ます」
そうなるとだ。高代は上城、そして樹里に言った。
「そうした先生もおらず。奇麗な場所で生徒を教え導く学び舎」
「そうした学校を創りたいんですか」
「その為にです」
高代は希望も見ていた。そのうえで上城に言っていく。
「私は剣士として戦い生き残り」
「そのうえで、ですか」
「願いを適えます」
「だから先生は」
「君とも戦います」
その願い故に。そうするというのだ。
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