久遠の神話
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第三十三話 八人目の剣士その十
「だが。そうでない人物はだ」
「ああはされませんか」
「使えない駒と人材は違う」
壬本は駒で他の人間はそうでないというのだ。
「そう考えている」
「そうなのですか」
「しかし君はだ」
「私はですか」
「駒ではないな。かといっても私の下に入る人間でもないな」
「人間、ですか」
「戦いを止めたいと思っている」
権藤は自分の人間という言葉に微妙な反応を見せた聡美には気付かなかった。彼女を人間だと確信しているが故にだ。
「それではだ」
「はい、私は貴方についてもです」
「戦いを止めさせたいか」
「そうしたいです」
はっきりとだ。聡美は権藤に答えた。
「それがこの戦いに対する私の考えです」
「何故戦いを止めたいと思っている」
権藤は聡美のその目を見て彼女に問うた。
「それは何故だ」
「この戦いは。命を弄ぶものだからです」
「剣士の命をか」
「ですから。それは」
「弄ぶ。では誰がそうしている」
話の主語、それが問題だった。
権藤はそのことに気付いたからこそだ。聡美に問うたのだった。
「誰なのだ。それは」
「それは」
「君が見つけたというそのギリシアの古文書には書いていたのか」
「そのことですが」
「書いていなかったかそれとも」
冷徹な目でだ。権藤はまた述べていった。
「言えないか。そのことは」
「・・・・・・・・・」
「言わないのならいい。ここまでわかったのだからな」
権藤は俯きかけた聡美にこう述べた。
「それでな。しかし命を弄ぶか」
「貴方の命もです」
「私は人を利用することもあるがされることもある」
権藤はそのコーヒーを飲みながらまた述べた。
「どちらも悪いとは思っていない。当然のことだと思っている」
「利用し、されることが」
「人はそうした面もある。社会にもな」
「英語で言うギブアンドテイクですね」
「そうだな。それだな」
「それは政治の世界では普通ですね」
「企業の世界でもだ。そして他のどの世界でもだ」
人間の世界ならだ。何処でもだというのだ。
「だから私はこのことには何も言わない」
「そうですか」
「その誰かが私を弄び。利用しているのならそれでもいい」
「貴方もですね」
「この剣士同士の戦いを利用する」
そうするだけだというのだ。
「だからいいのだ」
「そして戦いをですか」
「行う。そして生き残り願いを適える」
日本の首相になる、それをだというのだ。
「君にもそのことを話そう」
「わかりました」
「君の考えや行動は否定しない」
このこともだ。権藤は聡美に告げた。
「そして止めることもしない」
「私は私ですか」
「私もだ。そうするだけだ」
「そうなのですか」
「そういうことだ。ではだ」
ここで権藤は自分のコーヒーを飲み終えた。そしてだった。
聡美にだ。こう言ったのだった。
「まだ話したいことはあるか」
「いえ、もうありません」
「そうか。それではだ」
「これで帰られますか」
「君がコーヒーを飲み終えればだ」
それでだというのだ。
「帰る。そうする」
「わかりました。それでは」
こうした話をしてだ。そしてだった。
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