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久遠の神話

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第三十三話 八人目の剣士その三


「この私が我が国をその座に就けるのだ」
「太平洋の盟主の座に」
「それだけの力があるのに勿体ないことだ」
 そこに口惜しさもだ。権藤は見せた。
「何もしないというのはな」
「そうした意味で野心はですか」
「必要なのだ。今の我が国にはそれがない」
「それはかつてもだったのでは」
「戦前か」
「はい、あの頃の我が国は」
「生きることだけを考えていたな」
 野心ではなくだ。その考えだったというのだ。
「それだけだった」
「そして求めていたものは」
「今と同じだ」
「太平洋経済圏ですね」
「何処かの愚かな政治家はアジア経済圏と言っていたがな」
 権藤はとあるグループの次男坊にして左翼政党の幹事長だった男のことも話した。
「あの男は馬鹿だ」
「確かに。硬直した考えしかありませんね」
「しかも識見もない」
 だからだ。馬鹿だというのだ。
「そうした輩だ。だからそんなことを言う」
「あの政党の輩はおおむねそうですね」
「我が国の左翼政党はな。そうした輩しかいない」
「何故そうなったのでしょうか」
「社会主義にこだわり他のことを学ばない、いや」
「いや?」
「マスコミの偏向報道に甘え何の努力もしない」
 それこそだ。何もだというのだ。
「そうした輩しかいないからだ」
「ああした輩しかいないのですか」
「我が国の左翼政党はな。社会党から変わらない」
 少なくとも権藤は左翼ではない。だからこそ言えることだった。
「何一つとしてだ」
「ではあの政党は」
「社会党だ」
 名前は違うがだ。そうだというのだ。
「所詮は同じだ。社会主義者だ」
「そうなりますか」
「あの連中は経済を理解できない」
 まずはここから指摘した権藤だった。
「そして政治もだ」
「政治家でありながら」
「社会も国際情勢もだ」
「要するに何もわからないのですね」
「教養もなければ一般常識もない」
 要するにだ。何もないというのだ。
「そうした輩だからだ」
「いざ政権に就くとあの様ですか」
「マスコミに甘やかされていれば政権には就けるだろう」
 マスコミに騙され票を入れる愚か者がいるというのだ。世の中にはマスコミを盲目的に、それこそ何度騙されようとも理解できない愚か者も多いのだ。
 そしてそうした輩がだ。選挙に行きそしてだというのだ。
「愚か者に支持されてな」
「愚か者ですか」
「私は首相になる。しかしだ」
「それでもですね」
「はっきりと言う。私の政策をだ」
「そして当選されますね」
「愚か者にはわからない政策だがな」
 そうしただ。テレビだけを見てわかった気になっている輩にはだというのだ。
「言う。そして首相になりだ」
「我が国を変えられますね」
「そうする。そして日本は」
「太平洋の盟主になるのですか」
「滑稽な話ではある」
 表情を変えないがシニカルにだ。権藤はここでこう言ったのだった。
「あの戦争の頃はあれだけ命懸けで望んでも手に入らなかったものがだ」
「今は既にできていますね」
「あの頃の日本はただ生きたかったのだ」
 大東亜共栄圏、それは即ち今のアジア太平洋経済圏だったのだ。そして日本は生きる為のその経済圏を望んだというのだ。ここがソ連等と違うのだ。 
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