久遠の神話
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第三十三話 八人目の剣士その二
「出て来る怪物が全てギリシアのものだからな」
「ギリシア神話のですね」
「それならばだ。剣士のルーツもだ」
「その声も言っているそうですね」
「言っている。やはりギリシアにある」
「ではその留学生の方と」
「会おう」
そうするとだ。権藤は言った。
「そして戦いのことを聞こう」
「剣士のこともですね」
「どちらも聞く」
そうするとだ。権藤は述べてだった。
執事にだ。こう言ったのだった。
「明日の仕事は午前で終わらせる」
「全てですね」
「そうだ。急いで終わらせる」
「そしてそのうえで」
「急な仕事があれば残念だがな」
その場合は仕方ないとして。さらに述べていく。
「だがそうでなければだ」
「八条大学に行かれますか」
「そうしよう。しかし八条大学か」
その大学についてだ。権藤はその唇を微かに綻ばせた上で述べた。
「あの大学は面白い大学だな」
「そうですね。何かと」
「私もああした大学を持ちたいものだ」
「よい大学なのは確かですね」
「そう思う。しかし剣士はあの学園に集っているな」
こうもだ。権藤は言った。
「高等部にも大学にもいるな」
「後は旦那様と」
「警察と自衛隊から一人ずつだな」
「国家権力まで動くとは少し予想外でしたか」
「特にそうではない」
警察や自衛隊の者がいることもだ。不自然ではないという権藤だった。
「それはな」
「そうした立場に剣士がいてもですか」
「特におかしなことではない」
こう言うのだった。
「そう思う。だからだ」
「ではですか」
「そうした剣士がいるのも不思議ではない。そして戦いを止めようとする剣士がいることもだ」
それもだ。不自然ではないというのだ。
「特にな」
「戦いを止める剣士もですか」
「私は戦うがだ」
だがそれでもだというのだ。
「戦いを嫌う人間もいる。それに今の日本はだ」
「戦いを嫌いますね」
「日本政府もな。野心がない」
「それはいいことでしょうか」
「いいことだが野心による」
「それによりますか」
「今の我が国はいい意味でも悪い意味でも野心がない」
野心にも様々だというのだ。悪い意味で野心がないということはどういうことなのか。権藤はこのことに対してだ。ワインのグラスを片手に述べた。
「我が国の然るべき立場を求めないというのはな」
「日本の然るべき立場は」
「太平洋の盟主だ」
それになるべきだというのだ。日本は。
「今の様な立場で満足していては駄目だ」
「この太平洋の盟主ですか」
「アメリカや中国に遅れを取ってはならないのだ」
この二国を見ていた。そのうえでの言葉だった。
「だからこそだ」
「野心はあっていいのですか」
「我が国にはそれだけの力もあるのだからな」
「後は野心を持ち、ですね」
「然るべき者が日本をその座に就けるだけだ」
「そしてその然るべき方こそが」
「私だ」
権藤、他ならぬ彼自身がだというのだ。
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