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戦国異伝

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第七十話 都への出陣その七


 信長の前に膝を折りだ。こう彼に申し出たのである。
「宜しければ我等も」
「軍に加えて頂きたいのですが」
 こう申し出たのだ。それを聞いてだ。
 信長はまずは表情を変えなかった。しかしだ。
 彼等の言葉を聞きだ。こう言ったのである。
「義昭様にはお話したのか」
「はい、そうしました」
「そしてお許しを得ました」
「そうか」
 そこまで聞いてもだ。信長は表情を変えない。それで言葉だけを出していく。彼等を見たままでだ。
「ならばよいが。しかしじゃ」
「しかし?」
「しかしとは」
「織田の軍法は厳しいのは知っておるか」
 彼等にだ。そのことを確認するのである。
「そのことは」
「はい、聞いております」
「そしてそのうえで参上しました」
 つまりだ。その法を守るというのだ。そのことを信長に誓ったのである。
 それを受けてだ。信長はだ。今度はこう話するのだった。
「ならばよい。では御主達にも兵を与える」
「ではそのうえで」
「戦に」
「思う存分戦うがいい。兵は本陣から出す」
 このことも話してだった。そうしてだ。
 信長は彼等の中でとりわけ明智と細川を見てだ。そのうえで笑って言ったのだった。
「御主達は中々やる様じゃな」
「いえ、それがし達はその様な」
「幕府でも末席ですし」
「とてもその様な」
「そうした者では」
「そうしたことはどうでもよい」
 信長は彼等に対してここでようやく微笑んだ。そのうえでだ。
 彼等にだ。こう告げたのである。
「わしはその者の資質を見たいからのう」
「資質をですか」
「それをだというのですか」
「そうじゃ。わしの家臣達にしろそうじゃ」
 今自身の前に集っているだ。彼等を見ての話である。
「皆その資質を見て用いておる」
「そういえばです」
 ここで明智がそのことを聞いて述べた。
「百姓から部将にまでなった方もおられるとか」
「それがしですな」
 ここで言ったのは木下だった。
「それがし実は百姓の出でござって」
「木下殿ではござらぬか。では」
「左様。それがしでござる」
 自分自身を指差しながらだ。木下は明智に話す。
「百姓からなったというのは」
「そうでございましたか。貴殿が」
「それで実は名前も変えることを考えております」
 こんなことも言う木下だった。
「木下から。ちと格好のいい名に」
「姓を変えられるというのですか」
「はい。何かいい名があるかどうか今考えております」
 今度は左手を頭の後ろにやってだ。木下は人懐っこく明智に話す。実際にだ。明智にしても彼のその話を聞いて悪い気はしなかった。
 むしろ親しみを感じだ。木下の話を聞くのだった。
「それでこの度の出陣の間にでも答えが出ればと思っています」
「そうでございましたか」
「まあ。色々とあるでしょう」
 名前がだ。そうだというのだ。
「とりあえず格好のいい名を見つけるとします」
「わかりました。それでは」
「その猿の他にもじゃ」
 信長は木下を愛称で呼びながら話していく。
「我が家の者はその資質を見て用いておるからな」
「ですから。どの者であっても」
「資質があれば重く用いられるのですか」
「そうなると」
「そうじゃ。まあ誰でも来ることじゃ」 
 信長は自信に満ちた笑みになっていた。その笑みでだ。明智達に話してだ。明智達も彼のその言葉を聞く。そうなっているのが今だった。
 明智はだ。その中で述べた。信長に対して。
「そうしたことは。これが中々」
「できぬか」
「それがし。朝倉家にいましたが」
 織田家にとって因縁のあるだ。その家の話をするのだった。
「あの家は権門がありました」
「それ故にじゃな」
「家柄に縛られておりました」
 そうだったというのだ。朝倉家はだ。 
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