戦国異伝
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第七十話 都への出陣その六
「その者は即座に首を刎ねる。誰であろうともじゃ」
「はい、さすれば」
「そのことも伝えておきます」
「わしの太刀はその為にある」
信長の腰の刀、それはだというのだ。
「不届者共を切る為にあるのじゃ」
「その為の太刀だと」
「そのこともですか」
「兵達に伝えよ」
ここでも厳しい顔である。無論声もだ。
その何時になく厳しい信長を見てだ。諸将達も言うのであった。
「では。そのこと何があろうともです」
「兵達に伝えておきます」
「そうじゃ。狼藉は断じて許さん」
これが信長だった。己の軍に対しても彼は彼だった。
そのうえでだった。彼は出陣を命じた。そしてだ。
先陣を命じる。そこでだ。柴田を見て次げたのである。
「権六、よいな」
「はい」
「御主に先陣を命じる」
今回もだ。信長は軍の先陣には柴田を命じた。織田家きっての豪の者である彼をだ。
しかしだ。今回は彼に加えてだ。滝川も見てだ。彼にも命じたのである。
「久助、御主はじゃ」
「二陣でしょうか」
「いや、遊撃じゃ」
それだというのだ。
「二陣は牛助に任せる」
「してそれがしは遊撃と」
「そうじゃ。任せた」
滝川にはそれをだというのだ。
「よいな。それでは」
「では」
滝川も謹んで応える。そしてだった。
左右にはだ。彼等だった。
「また来ておらぬが右は浅井、左は徳川の兵じゃ」
「あの方々をですか」
「左右に置かれますか」
「先陣は権六がおる」
彼は外せなかった。やはり織田家にとってまず先陣は彼だった。
しかしそれと共にだ。同盟者である徳川家と浅井家をどうするか。信長はそのことも考えてだ。そのうえで彼等に話したのである。
「じゃがそれでもじゃ」
「折角共に上洛されるならばですか」
「無下に扱えぬ」
「さすればこそ」
「だからそれぞれ左右に置く」
軍のだ。左右にだというのだ。
「そうする」
「それでよいかと」
信長のその案に最初に頷いたのは池田だった。
その彼はだ。こう信長に話す。
「浅井殿も徳川殿も後方等に置かれては気持ちよくないでしょう」
「しかし先陣は無理ですからな」
今度言ったのは大津だった。
「ですから左右にですな」
「そういうことじゃ。本陣はわしが率いる」
信長自身だった。このことは当然だった。そして最後にはだった。
丹羽を見てだ。そのうえで彼に告げた。
「五郎左、御主は後詰じゃ」
「畏まりました」
「何かあればすぐに動いてもらう」
ただ後ろにいるだけではないというのだ。備えの兵だというのだ。
ここまで話してだった。信長はさらに細かくだ。それぞれの陣に諸将を配してだ。そのうえで発とうとする。しかしその時にだった。
陣中にだ。明智や細川、幕府の家臣達が来てだ。そうしてだ。
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