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久遠の神話

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第三十二話 相互理解その五


「君と来てもだ」
「ああ、野郎と一緒よりもか」
「彼女と来たい」
 こう言うのだった。
「君と来ることはこれまでになるか」
「まあ俺にしてもな。男と一緒に飲むのはな」
「コーヒーではないか」
「酒だよ」
 それなら飲むというのだ。男と一緒にだ。
「それなら飲むさ」
「君は酒も飲むのか」
「それも好きだぜ。酒も何でもいけるぜ」
「そうなのか」
「日本酒だってワインだってな」
「日本酒か。あれはな」
 広瀬は日本酒と聞いてだ。少し考えてからだ。
 少し首を捻ってだ。こう述べた。
「俺はあまり飲まない」
「何でだよ。嫌いか?」
「飲まない訳ではない。だがだ」
「だがって。日本酒に何があるんだよ」
「飲み過ぎると糖尿病になる」
 だからだというのだった。今の広瀬は。
「それとビールも痛風になる」
「今度はそれか」
「だから日本酒やビールはあまり飲まない様にしている」
「まあな。糖尿病も痛風も怖いからな」
「飲むなら焼酎かワインだ」
 そうしたものを飲むというのだ。広瀬は。
「大抵はそちらを飲んでいる」
「酒を飲むのも健康管理かよ」
「酒は心にはいいが身体についてはだ」
「まあ薬にもなるがな」
「毒にもなってしまう」
 もっと言えば心もだ。飲み過ぎると溺れてしまう、酒というものは薬であるがまさにそれは諸刃の剣なのだ。裏返せば毒にもなるものなのだ。
 だからだ。二人共言うのだった。
「俺は飲む薬は選ぶ」
「俺は選ばない方だな」
「日本酒もビールも飲むか」
「どっちも好きだぜ。あとな」
「あと。何がある」
「爆弾酒って知ってるか?」
「韓国軍ではじまったものだったな」
 その名前を聞いてすぐにだ。広瀬は答えてきた。
「確かそうだったな」
「ああ、知ってるんだな」
「ビールの大ジョッキの中にウイスキーを入れたコップをそのまま入れる」
 コップごとだ。ジョッキの中に入れるというのだ。
「そして飲むものだな」
「そうだよ。それも飲むんだよ、俺は」
「随分乱暴なものも飲んでるな」
「確かに荒い飲み方だけれどいいぜ」
 笑ってだ。中田は言った。
「俺的にはな。いい酒だぜ」
「酔えるからか」
「酔えるってことはいいことだろ」
 広瀬のその目を見てだ。中田は彼に問うた。
「少なくとも酔えないよりはな」
「確かにな。酔いたい時に酔える」
 広瀬は呟く様に述べた。その中田に。
「そういうことだな」
「そうだよ。俺は最近かなり酔いたい気分でな」
「だからか」
「飲んでるんだよ」
 それ故にだというのだ。
「最近はな」
「剣士になってからか。その最近は」
「そうなるかもな。まあとにかく酒はな」
 それはどうかと言うのだった。 
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