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久遠の神話

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第三十一話 広瀬の秘密その八


「そうなっているからな」
「じゃあソ連より酷いの?」
「ソ連というよりも北朝鮮か」
「北朝鮮って」
「どういう国家かはわかるね」
「あそこはね。もうね」 
 由乃も北朝鮮がどういう国かはよく知っていた。間違ってもその国の正式名称とやらにある様な民主主義でも人民の共和国でもない。
「監獄よね」
「ああした国家になるとな」
「牧場経営どころじゃないわね」
「だから駄目だよ」
 日本の社会主義というものはだ。どうしてもだというのだ。
「絶対にな。駄目だ」
「そうよね、やっぱり」
「共産党の主張の方がましかも知れない」
 つまり共産主義の方がだ。社会主義よりも穏やかだというのだ。日本の場合は社会主義の方が極端にマルクス主義、いや異様な状況にあるというのだ。
「あの連中の主張はリベラルを自称していてもだ」
「北朝鮮なのね」
「もっと酷い奴は自分のことしか考えていない」 
 社会主義でも何でもなくだ。エゴイズムだというのだ。
「余計に悪い」
「自分のことばかりって」
「何をするかわからない」
 広瀬はある政党を見て言っていた。
「自分しかない奴等はな」
「ああ、地震の時ね」
「あの時は実によくわかった」
「あの首相ってあれでしょ?学生運動やってたわよね」
「そうらしいな」
「つまり社会主義よね」
 自分達では民主主義を唱えているつもりだった。だがそれはただの暴徒的全体主義だったのだ。それが昭和四十年代の学生運動の正体だったのだ。
「そしてやっぱり」
「エゴイズムだ」
「ううん、そういう連中だと」
「牧場もな。とてもな」
「問題外よね」
「そもそも社会主義、共産主義は終わった」 
 少なくとも日本人の一部と北朝鮮以外では実質的に終焉しているイデオロギーだ。ソ連の崩壊によりその命脈は完全に終わったのである。
「その欠点も明らかになっている」
「ううん、私は経済のことはよくわからないけれど」
 由乃はここでは首を横に捻った。
「それでも北朝鮮みたいな国になるのはね」
「嫌だな」
「ソ連もスターリンは知ってるわ」
 こちらもどういった独裁者だったかは言うまでもない。
「ヒトラーと一緒だったわよね」
「どちらがより悪いかわからない」
「ナチスとソ連って同じだったのね」
「ナチスはドイツ国家社会主義労働者党だ」 
 あまりにも有名なナチスの正式名称である。
「つまりだ」
「ナチスも社会主義だったのね」
「何故か殆ど言われないけれどね」
 その極端な民族主義にだけ注目されるがナチスもまた社会主義だったのである。企業はあるが国家の完全な統制下に置かれていたのだ。
「だからその農業政策も」
「社会主義みたいだったのね」
「より効率的だったが国家が完全に統制していた」
「ナチス党がよね」
「まさに社会主義だった」 
 少なくとも今の中国よりも遥かにだ。経済活動の自由度はなかったというのだ。 
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