久遠の神話
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第三十一話 広瀬の秘密その一
久遠の神話
第三十一話 広瀬の秘密
広瀬は乗馬部でだ。部の仲間達とこう話していた。
厩舎の中では馬達がそれぞれの部屋の中で草を食べている。どの馬も大きく見事だ。
その馬達を見ながらだ。広瀬は彼等に言った。
「ちょっと赤兎を借りたいんだが」
「それで農学部に行くのか」
「赤兎に乗って」
「そうしたいがいいか」
広瀬は厩舎の中にいる彼等に尋ねた。見ればだ。
広瀬も彼等も既に乗馬の服に着替えている。帽子にブーツまで身に着けている。
その服でだ。彼は言うのだった。
「今日は赤兎に乗りたいが」
「ああ、いいよ」
「特に何も言うことはないな」
「そうだよな」
仲間達は特に反対することなくだ。彼の願いに応えた。
「赤兎じゃなくてもいいけれどな」
「赤兎でもいいしな」
「特に今はどの馬でもいいしな」
「それじゃあな」
こう話してだ。そのうえでだった。
広瀬は厩舎の中の赤い毛に燃える様な紅の鬣の馬を見てだ。それを厩舎から出した。そうして蔵を吐けて乗ってだ。それから乗馬部を後にした。
その広瀬を見てだ。厩舎から出た部員達が言ってきた。
「しかし。本当に赤いな」
「だよな。まさに赤兎だよな」
「三国志の撮影にそのまま使えるよな」
「そうだな。呂布や関羽が乗ってもな」
それでもだとだ。広瀬も馬の上から言う。
「そのままだな」
「でかいしな、しかも」
「呂布も関羽も相当大きかったらしいけれどな」
「確か二人共同じだけの大きさだったよな」
部員達は三国志の人物達の話もした。
「関羽って二メートル超えてたんだろ?」
「相当大きかったのは確かだよな」
「それで呂布も同じ位大きくてな」
「相当強かったってな」
彼等の強さは体格も影響していたのだ。その体格故にかなりの筋力も持ちだ馬を駆りそのうえで戦場を縦横無尽に暴れ回っていたのである。
「確か項羽もそれ位の大きさだったよな」
「ああ、項羽も滅茶苦茶強かったよな」
「あれが中国の歴史で一番強かったらしいな」
「孔子も大きかったらしいな」
中国を代表する思想家の話も出た。
「孔子も身長二メートルあったらしいな」
「えっ、そうなのか?」
「そんなにでかかったのかよ」
「そうらしいぜ。しかも筋骨隆々でな」
孔子の話はだ。誰もが驚くものだった。
「武芸にも秀でてて相当強かったらしいぜ」
「学者馬鹿じゃなかったのかよ」
「口五月蝿いだけの優男だって思ってたんだがな」
「実際は全然違ったらしいな」
孔子は武人の家の出であり父親も大柄だった。そしてその彼がなのだ。
「そんな大男だったらしいな」
「何かそれが一番びっくりするよな」
「項羽はわかるよ」
史記等を見ても相当な強さなのがわかる。まさに力は山を抜き気は世を覆うだ。
「けれど孔子もか」
「そんなに大きくて強かったんだな」
「全然イメージと違うな」
こう話していくのだった。そしてだ。
彼等はまた赤兎を見た。今度言うことは。
「しかし。この馬もでかいな」
「本当に二メートルの奴でも乗れるよな」
「広瀬も背高いけれどな」
「それでも小さく見えるな」
「実は乗るのにだ」
どうかとだ。広瀬自身も赤兎の上から言う。
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