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戦国異伝

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第六十七話 将軍の最期その九


「幾ら何でもそれが理由とはな」
「はい、松永という者信じられませぬ」
「そうした理由で大仏まで燃やすとは」
「あの平清盛をも超えるやも知れませぬ」
「そこまでの悪漢かと」
「まずは主家の三好を中より蝕み」
 また言う信長だった。
「そして公方様を殺し」
「大仏も燃やしました」
「ここまでした者はおりませぬな」
「全くじゃ。そこまでの悪じゃと」
 どうかとだ。信長はさらに話す。
「かえって興味が出るわ」
「あの、またですか」
「また殿の好奇心が出られましたか」
「そうなりますか」
「ははは、確かに許せぬがじゃ」
 だがそれでもだというのだ。
「興味は出たわ」
「しかし敵に回すと危険ですな」
「全くです。そうした者、味方でも信じられませぬ」
「会えばすぐに始末しましょう」
「それが一番よいかと」
「まあそう言うでない」
 家臣達の話をだった。信長はだ。
 一旦退けてだ。こう言うのだった。
「そこは会ってから決めるわ」
「ですからそれがよくないのです」
 林通具がだ。困った顔で主に述べる。
「殿、幾ら何でも松永は問答無用で」
「殺してしまえか」
「今川殿はそれでまだよかったですが」
 出家させてだ。それで終わってもだというのだ。
「ですが松永はです」
「確かに公方様を殺したことはな」
 そのことについてはだった。信長もだ。
 難しい顔になってだ。こう述べるのだった。
「許せぬ。若し剣を見たならその時はじゃ」
「ですから問答無用で、です」
 通具はあくまでこう主張する。
「あの者だけは殺してしまうべきです」
「左様、それがしもそう思います」
 大学もだ。通具に続く。
「あの者だけはです」
「まあそのことも考えておる。何はともあれじゃ」
 どうかと話す彼等だった。かくしてじゃ。
 信長は話を変えてきた。そのことはというとだ。
「次の公方様はどうなっておる」
「はい、そのことですが」
「三好がです」
「すぐに堺の義栄様を擁立されました」
「ほう、そうきたか」
 それを聞いてだ。信長はだ。
 少し考える顔になってからだ。こう言うのだった。
「しかしそれで終わりではあるまい」
「はい、すぐにです」
「義輝様の弟君である義昭様が朝倉殿を頼られました」
「あの方をです」
「ふん、朝倉か」
 朝倉と聞いてだ。信長はだ。
 少し不機嫌な顔になってだ。こう言うのだった。
「あそこはまだ朝倉宗滴殿がおるがのう」
「しかしですな」
「今の主の義景殿はじゃ」
 肝心の彼はどうかというのだ。
「相変わらず都のものばかり追い求めてじゃな」
「はい、戦は宗滴殿に任せきりで」
「何もしようとされませぬ」
「それでは義昭様に何を言われてもじゃ」
 どうするかというと。答えはもう出ていた。
「動かぬわ」
「では朝倉殿は頼りにならぬ」
「そうだというのですな」
「あの家で人は。宗滴殿がおる」
 信長はとかく彼のことを指摘する。しかしだった。 
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