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久遠の神話

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第二十八話 使い捨ての駒その九


「特別屑だからな」
「屑だとは自覚していたがな」
「あんたの予想以上だったか」
「そうだ。私も読みが甘かった」
 壬本の劣悪さをだ。見極めきれなかったというのだ。
「私は力を見る駒としてあの男を使ったが」
「樹里ちゃんを狙ったりとかはか」
「考えもしなかった」
「あいつはとことんまで屑だったからな」
「そうだな。無能なだけでなくだ」
 どうだったかというのだ。壬本はだ。
「有害だった」
「生きている限り害になる奴だったんだよ」
「無自覚なままか」
「そうだよ。確かにそれはあんたの不明になるか」
「そのことは認める」
「だといいさ。けれどあんた自身はか」
「戦うのは剣士とだけだ」
 あくまでだ。そのことは守るというのだ。
「そして怪物だな」
「怪物の奴等とも戦ってきてるんだな」
「既に百は倒した」
「百・・・・・・」
「君はこれまでどれだけの怪物を倒してきた」
「精々五十か」
「五十か」
「百なんてとても倒してないな」
 それが今の彼だった。そこまではとてもだったのだ。
「これからはわからないがな」
「そうか」
「まあとにかくな。あんたはこれまでそれだけの怪物を倒してきたんだな」
「その通りだ」
「そしてそれだけの実力を持っている」
「怪物を倒せばそれだけ力になる」
 剣士のだ。それになるということは権藤も知っている様だった。
「だからこそだ。私の力はわかるな」
「よくな。じゃあ仕切りなおしてな」
「行くぞ」
 権藤は剣を上段に構えたままで中田に告げた。
「君を倒す。恨まない様にな」
「恨むも何も負ければ終わりだろ」
 中田は権藤の今の言葉には軽口で返した。
「じゃあいいさ。お互いにな」
「恨みを残さず」
「やるか」
 この言葉が合図になってだ。そのうえでだった。
 中田と権藤は戦闘に入った。まずは。
 中田から仕掛けた。彼は両手に持つ二刀にそれぞれ赤い炎を宿らせた。
 そのうえで権藤に向かって突進してだ。彼に対してその二刀で激しい突きを繰り出した。
 しかもそれは一撃ではなくだ。幾度も繰り出す。刀身が動きさながら赤い流星群が襲い掛かっている様だった。
 だが権藤はその攻撃を一本の剣で全て防ぐ。その度にだ。
 炎の赤と闇の黒がぶつかり飛散る。その攻防を見て上城は言った。
「中田さんの攻撃は凄いよ」
「そうよね。凄い突きよね」
「しかも一本じゃない」
 刀はだ。そうだというのだ。
「二刀流の突きだよ。普通はね」
「普通は?」
「僕もそうだけれどあの攻撃は防げないよ」
 そうだというのだ。
「けれど権藤さんはそれでも」
「防いでるわよね」
「この場合刀は二本の方がいいんだ」
「一本よりもなのね」
「うん。力を込めてその力で攻撃するのならね」
 剣で斬るのではなくだ。力で攻めるのならばというのだ。
「斬るのは力がいるからね」
「そういえば日本刀って片手では」
「相当以上の力量があっても斬れないよ」
「そうだっていうわね」
「だから普通は両手で持つんだ」
 そうして使うには根拠があった。それは斬れないからだ。 
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