久遠の神話

「適えたいことがあるんだよ」
「そしてそれ故に。君はか」
「戦うんだよ。そういうことさ」
「話はわかった。君は戦うか」
「そういうことさ。俺なりの理由があってな」
「それでは。今もだな」
「ああ、あんたとな」
　中田は権藤のその傲慢さを出している表情を見てだ。そのうえで答えた。
「闘うか」
「そうだな。それではな」
　権藤は構えを取った。剣道の上段の構えだ。
　そしてその構えからだ。彼はまた言ってきた。
「はじめるとしよう」
「そうだな。それにしてもな」
「それに。どうしたのかな」
「あんたも剣道やるんだな」
　権藤のその上段を見てだ。中田は言った。彼は剣道の二刀流の構えである。その構えを取って権藤と対峙しながらだ。そのうえで言ったのである。
「そうなんだな」
「そうだ。だが、だ」
「だが？」
「私の剣道は少し違う」
　上段のままでだ。権藤は言うのだった。
「君達の剣道は現代の剣道だな」
「ああ、そうだぜ」
「私の剣道は新撰組のものだ」
「天念理心流だったか？それって」
「そうだ。名前は知っているか」
「有名だからな」
　有名になったのは新撰組の影響だ。だからこそ日本でもかなり有名な流派になったのだ。
　その新撰組の流派がだ。彼の剣道だというのだ。
「それでだ。私は闘う」
「まさかな」
　ここでだ。中田は以外といった顔でこうも言った。
「新撰組の剣道と闘うことになるなんてな」
「考えていなかったか」
「想定の範囲外ってやつだな」
　中田は軽くこう答えた。
「それだな。今は」
「そういうことになるか」
「ああ。まあそれでもやるさ」
　戦うとだ。中田は言った。そうしてだった。
　彼は構えを取ったままだ。権藤との間合いを詰めていく。権藤は一歩も引かない。
　その二人を見てだ。樹里が上城に尋ねた。
「ねえ」
「あの権藤さんのことかな」
　上城もだ。樹里に対して応える。
「あの人のことだよね」
「ええ。あの人ってやっぱり」
「強いね」
　樹里の尋ねたいことはわかっていた。それでだ。
　上城は確かな声でだ。こう答えたのだった。
「それもかなりね」
「中田さん。大丈夫なのかしら」
「中田さんも強いけれど」
　だがそれだとだ。上城は言った。
「それでもね」
「あの人はもっと強いのね」
「相当なものだよ」
「それじゃあ中田さんは」
「危ないかも知れないね」
　実際にそうだとだ。上城は心配する顔で樹里に話した。
「あの人が相手だと」
「一体。どうすれば」
「中田さんが勝てるかだね」
「どうすれば勝てるの？」
　中田の側に立ってだ。樹里は上城に尋ねた。
「あの権藤って人の方が中田さんより強いのなら」
「いや、それでもね」
「それでもって？」
「例え実力が上でもね」
　上城も中田の側に立って話す。そうしての言葉だった。