久遠の神話
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第二十七話 愚劣な駒その八
「元は東郷平八郎がビーフシチューが食べたいと言ってだ」
「で、肉じゃがに?」
「それになったんですか」
「そうなった。給養員がビーフシチューの作り方を知らなかった」
完全にイギリスのだ。その料理をだというのだ。
「しかしあえてだ。お醤油とみりんを使ってだ」
「そして作って」
「ああなったのですか」
「その通りだ」
その肉じゃがの生まれた話をだ。工藤は今したのだ。
「舞鶴からはじまったらしい」
「ううん、まさかあの肉じゃがが」
「ビーフシチューが元だったとは」
「俺も最初聞いて驚いた」
工藤自身もだ。そうだったというのだ。
「まさにな。しかしだ」
「しかしですか」
「イギリス料理から思わぬものが生まれた」
その肉じゃがについての言葉である。
「面白い話だな」
「ええ、というか海軍の食事は」
「イギリスをモデルにした」
特にだ。士官の食事はだ。
「それで出来上がったものだ」
「凄いですね。そのまずいって評判のイギリス料理からカレーや肉じゃがが生まれるなんて」
「まずいことは確かだが」
だがそれでもだった。そのイギリス料理からだった。
「美味いものが生まれるのだな」
「そうですね。面白い話ですね」
高橋も言う。
「中々」
「今では考えられないがな」
「イギリスから料理のことを勉強することになるとはですね」
「紅茶やお茶菓子は別だ」
「それにローストビーフもですね」
「そうしたものは勉強できるがだ」
しかしそれ以外のことはだ。全くだというのだ。
「何もないと言っていいからな」
「ある意味凄いですけれどね」
そんな話をしながらだ。彼等はカレーを食べた。それから艦内、見学できるところだけだが自衛艦の中を見学して周りだ。それが終わってからだ。
自衛艦を出てだ。聡美は桟橋を降りて船から出てだ。こう言ったのである。
「大きくてしかも立派でしたね」
「いい護衛艦だったか」
「いい軍艦ですね」
護衛艦と軍艦という言葉にだ。自衛隊の苦しさも出ていた。
「本当に」
「そうか。凄いと思うか」
「本当にギリシアにはないですから」
「しかしギリシアはEU、NATOに所属しているな」
「はい」
「イギリスやフランスの艦はより凄いと思うが」
「確かに空母や原子力潜水艦はありますが」
だが、だ。それでもだというのだ。
「通常の艦艇でこれだけのものはです」
「ないか」
「そうです。ここまでは」
ないとだ。こう答える聡美だった。
「ここまでの艦艇はです」
「ないか」
「これだけの船はアメリカ軍の他にはないのではないでしょうか」
聡美は首を捻ってこんなことも言った。
「かなり凄いと思います」
「この船で日本を護っている」
「船はあるのですね」
「後は人だ」
船だけではないとだ。その他にもあるというのだ。
「人が問題だがな」
「そちらは一体」
「どうだろうな。俺自身もそうだが」
工藤は首を捻りながら聡美に話す。そしてだ。
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