戦国異伝
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第六十三話 岐阜その十二
「とにかくじゃ。米だけ作っていいものでもない」
「その他のものもですな」
「その通りじゃ。そして作物以外にもじゃ」
作らせると話す信長だった。そんな話をしてだ。
他の家臣達にもだ。こう話したのだった。
「少し尾張に行って来るぞ」
「今度は何を御考えなのですか?」
少し呆れた顔でだ。松井が信長に問う。
「尾張にとは」
「別に領内じゃしいいであろう」
「それは構いません」
それは一行にだとだ。松井も言う。
「しかし。殿はいつもここで突拍子もないことをされますから」
「何か爺みたいなことを言うのう」
「それがしも言うところでした」
その平手も言うのだった。
「いや、何を御考えなのかと」
「悪い考えは持ってはおらんぞ」
「しかし悪戯めいたことを考えておられますな」
「それは否定せぬ」
「全く。どうなられても悪戯者でありますから」
困るとだ。平手も言う。しかしだ。
尾張についてはだ。佐久間信直がこう話す。
「尾張の政は極めて順調です」
「だからこそじゃな」
「はい、民も落ち着いております」
「そこに加えてじゃ」
民が落ち着いてそこでさらにだというのだ。
「後は伊勢もじゃがな」
「伊勢もですか」
今度言ったのは明院だった。
「あの国の政もかなり軌道に乗ってきましたし」
「そうじゃな。まあ伊勢は伊勢で伊勢神宮が気になる」
信長は明院にこの国で第一の社であるそこのことを話した。
「行事が滞っておるのではないのか」
「はい、三百年程そのままのものもあります」
ここで述べたのは野々村だった。
「皇室もそこまで手が回りませぬ」
「乱世じゃからな」
「残念ですが」
「わかった」
そのことを頭に入れたとだ。信長は述べた。
「ではいずれ何とかせねばな」
「はい、我等も落ち着いてからですな」
「皇室、帝とお話できるようになればそうする」
信長はこのことをはっきりと述べた。
「しかし。朝廷を御護りし盛り立てることもできぬとはな」
「幕府も力がありませぬ故」
「それは」
家臣達もそのことは残念がって述べる。
「ましてや織田家は元々は神主の家ですし」
「何とかしたいものですが」
「まあできぬものは仕方がない」
信長は今はそれは諦めてだった。そのうえでだ。再び尾張のことを話すのだった。
「ではよいな。尾張に行って来る」
「して何処に」
場所を尋ねたのは坂井だった。
「尾張の何処に行かれますか」
「瀬戸じゃ」
そこだというのだ。
「瀬戸に行って来る」
「瀬戸ですか」
「あの地に」
「あの地についてよいことを聞いた」
信長は面白そうに話す。
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