木の葉芽吹きて大樹為す
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IF 完全平和ルート
前書き
取り敢えず、前の時と同じ様にここにIFの話を入れて置きます。
ん? なんだ、お前達か……。一体どうしたんだんだ。この時間なら任務を受けている最中だろ?
え? あたしに聞きたい事がある?
――ふむ、いいだろう。こっちも一段落ついた所だしな。
シズネ! 人数分の茶ぁ淹れて来い!
それで? わざわざお前達が三人揃って来てるんだ。一体何の用件なんだ?
なになに……、初代火影について知りたいだって? 確かにおばあさまについて訊ねるならあたしに聞くのが一番だろうが……。
――まあ、いい。これも火影としての務めだろう。可愛い弟子の頼みでもあるしな。
では、何から話すとしようか……。
おばあさまが……初代火影に任命される前に、千手一族の頭領として若くして一族を率いていたのは知っているな?
全忍の中で唯一木遁と言うオリジナルの忍術を使用し、武器を扱わせれば天下一品、あたしも使う桜花掌の原型と成る医療忍術の応用の怪力のお蔭もあって、誰もあの人の事を女性と思わなかったらしい。
おばあさま自身も勘違いされ続ける現状を面倒くさがって修正しなかったせいと、その性格のせいでますます勘違いは深まったらしいね。全く……我が祖母ながら怠け者すぎるな。
――ん? なんだナルト、その目は。
――こほん!
ともあれ、おばあさまの本当の性別が明らかになったのは本当に些細な事だったらしい。
初代火影となれば、誰だってそんな相手の妻と成る事を夢見るだろう? そんなこんなで里が運営し出してから、おばあさまの元には山の様に縁談が舞い込んだらしい。目に浮かぶよ。
それからだ。
おばあさまは自らの元に舞い込む縁談に、今までの面倒くさがりのツケが来たと頭を抱えたらしい。
そりゃそうだ。幾ら男の様に振る舞っていてもその身は女。女同士で結婚したってどうしようもないだろうが。
それでもなんとかその話を避けていたのだが、ある日とうとう大名の娘との婚姻話が来て、最早これまでと観念したとか。
大名との関係を悪化させる懸念こそあったものの、これ以上自身の性別をうやむやにして面倒事を増やすよりは、さっさと公開した方がいいと判断なさったんだろうね。
そうして里の者達は今まで男だと思っていた火影が、実は女であった事を知ったのさ。
……比較的混乱は少なく済んだらしいよ。男でも女でも火影は火影。里の皆が認めた里一番の忍者だ。それに変わりはない。
まあ、里の女子の大部分が涙で枕元を濡らしたそうだがね。
でもおばあさまは甘かった。
そりゃあ、そうだろう。今まで男と思っていた相手が女だったと告白した事はそれはそれで面倒な案件を避けられたが、それ以上に御自身の価値を分かっていなかったんだよ、おばあさまは。
基本、女は相手の家に嫁ぐ。その事実を失念しておられたのさ。
まぁ、御自身が男として過ごして来た期間が長かったせいかねぇ……、とにかく今度は他里を中心に縁談が舞い込む様になったんだ。
ナルト……爆笑しているのはいいが、事はそんなに甘い物じゃなかったんだぞ。当時の世の中は今とは違って、戦国時代がようやく通り過ぎたばかりの頃だ。いつまた戦乱の世に逆戻りしても可笑しくない情勢だった。
そんな中で各国へと一国一里制度が導入され始め、木の葉は最も早くにその制度を取り入れた里だった。
――そう、流石にサクラは賢いな。
嫁入り、という形で木の葉の最大の障壁である初代火影を木の葉から引離してしまえばいい。
そうすれば火の国の肥沃な大地を攻め込む事はかなり容易くなるだろうね。
で、だ。流石におばあさまも御自身の失態に気付かれた。
まさか男の振りをしていた自分に、女としての利用価値があっただなんて思いもしなかったんだろうね。
下手な男よりも男前だったらしいし、戦国の世に全忍の頂点に立つと言われただけのお方だ。その価値が女であったからって下がる訳が無い。
寧ろ、悪い意味で価値は吊り上がっちまったんだよ。
――……そこで、ここにサスケ、お前の一族の先祖の名が上がって来るのだが……。
おや、どこにいくんだ。話はまだ終わっていないぞ。
こんな状態を齎したのが結婚問題だとしたら、それを解決するのも結婚だと言う事に気付かれたんだよ。
そこでだ。おばあさまはなんとかしてそんな都合のいい相手がいないかどうか必死で探したらしい。
白羽の矢が立ったのが――そう、うちはマダラだ。
この人はおばあさまとの関係が色々とややこしい人でね。
大きな声では言えないが、元々千手とうちはは代々続く因縁の相手だったんだ。……まあ、木の葉の前身と成った忍び連合にうちはも参加した事に成って、一応はその因縁も打ち切られはしたらしいがね。
で、忍びの頂点だったおばあさまに続いて名を挙げられていたのがそのマダラだったのさ。万華鏡を開眼し、うちは伝説を一代で築き上げた乱世の英雄だ。
結婚相手としては申し分の無い相手だった。木の葉に属しているから外に行く必要は無いし、彼もまた誰もが認めざるを得ない実力を兼ね備えた忍びだったからね。
マダラ自身も結婚話が次々と持ち込まれる自身の状況に苛立っていたらしい。
そこでおばあさまは自身の現状をマダラに話して、話を持ちかけた。
――偽装結婚をしてくれないか? とね。
彼らは互いに自分の下に持ち込まれる結婚話に相当うんざりしていたからね。
周りが止めるのも聞かずトントン拍子に話を進ませて、籍を入れたらしいぞ。
……当時のマダラがおばあさまの事をどのように思っていたのかは知らないが、憎からず思っていた事は確かだろうね。でなきゃ、周囲を欺くためとはいえそんな話を受け入れる訳が無い。
――――ところがだ。
当のおばあさま自身は偽装結婚をしたものの、マダラの未来を奪う様な真似をした事にかなりの罪悪感を抱かれていたらしくてね。色々な所から将来有望そうな娘さんを見つけてはマダラに紹介していたらしい。……サスケ、溜め息を吐くな。ちょっとずれていた人だったんだよ。英雄の実体なんてそんなものさ。
で、だ。
戦国の世が遠のき、おばあさまが各国を回って国々との間で同盟やらを結ばれ、太平の世が訪れた時だ。
兼ねてからの懸念だった国家間の争いは当分起こりそうにない。そう考えたおばあさまはマダラに何をしたと思う?
……そう、離婚を持ちかけたんだよ。
今まで長い間演技に付き合わせて済まなかった。これで晴れてお前は自由だ。どっかで可愛い娘さんを見つけて結婚でも何でもしてくれ、ってな。
勿論、結婚式には祝儀くらい送ってやるぞ、とも付け加えたらしいぞ。
呆れる様に目元を覆って溜め息つくな、サスケ。さっきもいったが、御自身の価値を理解していないお人だったんだよ。
ん? やけに顔色が悪いな、サクラ。まあ、お前の懸念は予想通りだぞ。
何たって、その一言が原因で『終末の谷』での戦いが始まったと言っても過言じゃないんだからな。
戦いは苛烈極まり無い物だったらしい。なんせ、地形が変わる程の物だったからな。元々あそこには滝なんて無かったんだよ。
――――戦いの幕引き自体はあっけないものだった。
マダラが『貴様以外を妻にする気はない』と叫んだのが原因で呆気にとられたおばあさまが、その隙を突かれて敗北したからな。
腹を抱えてヒーヒー言ってるんじゃない、ナルト!
振り返ってみれば笑い話で済むが、当時の木の葉の人々に取っては里の存亡をも巻き込みかねない大事件だったんだぞ。……まあ、流石にそれは言い過ぎだが。
……喉が渇いたな。喋り過ぎてしまった様だ。
――シズネ、茶ぁお替わり!
こうして仮面夫婦は仮面を外し、晴れて元の鞘に納まったって訳だ。
初めからおばあさまが女として振る舞っているか、マダラ……おじいさまの方がさっさと素直になっときゃ良かったんだ。シカマルじゃないが、めんどくせー方々だったんだよ。
まあ、失いかけてその存在の大切さに気付くなんて事はよくある事だからな。
早めに気付けたマダラはまだマシな方だったんじゃないか? これで私の話は終わりだ。参考に成ったか、お前達?
後書き
このルートでしたら綱手は原作通り、初代火影の孫娘でした。
こっちのルートで終わらせてあげてという声が結構多かったのですが、これはあくまで『もしも』の話。
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