久遠の神話
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第二十六話 壬本という駒その七
「戦闘不能にすることだ」
「僕をそうして」
「戦いを止める。君の様な人間にはそれしかない」
「嫌だ」
壬本は工藤のその言葉にだ。目を鋭くさせてだ。
それからだ。こう言ったのだった。
「僕は何があっても」
「戦うか」
「僕だけが生き残って」
そしてだとだ。その嫌な目で言っていくのだった。
「お金も家も。欲しいものは皆」
「それが君の望みか」
「皆。僕を馬鹿にした奴は皆」
己だけの考えからだ。それしかなかった。
そこからだ。壬本は言っていくのだった。
「殺してやる。消してやる」
「本当に自分しかないな。君は」
「皆僕を認めない」
あくまでだ。こう言うしかない壬本だった。
「何で皆心を広く持たないんだ」
「これはやはり」
「ええ、どうにもなりませんね」
工藤も高橋もだ。壬本の呟きを聞いてだ。
そうしてだ。目を顰めさせて話したのだった。
「本当にな」
「戦闘不能にしないと仕方がないみたいですね」
「戦いを止める為の闘いか」
工藤はその少し聞いただけだと矛盾する考えにだ。こう言ったのだった。
「自衛隊だな。まさに」
「そうですね。自衛隊がある理由は」
「戦争を起こさせない為だ」
あくまでだ。その為にあるのが自衛隊なのだ。この考えは工藤だけでなく高橋も持っている。それでだ。二人でこうした話をしたのだった。
「軍がなければだ」
「それを見ておかしな動きをする輩もいますね」
「そうだ。北朝鮮なりだ」
「そしてテロリストも」
「抑止力だ」
まさにだ。その為の存在だというのだ。
「それが為にだ」
「自衛隊、そして警察もですね」
「存在するからな。そしてこの闘いもだ」
「戦いを止める為の闘いになりますね」
「この彼は放っておいては危険だ」
壬本をまた見てだ。言う工藤だった。
「いいことをしない」
「絶対にですね」
「倒すことはしない」
それはだ。絶対にだというのだ。
「だがそれでもだ」
「はい、それでもですね」
「腕の一本は動けない様にするか」
「戦いができない様に」
「そうしておくべきだな」
また身構えているその壬本にだ。言った言葉だった。そしてだ。
そのうえでだ。工藤は今度はだ。剣を左から右に一閃させた。するとだ。
一つの大きな岩が出て来た。その岩は。
剣をまた動かす。するとだ。
岩が忠に浮かびだ。壬本に向かう。そうして岩をコントロールしながらだ、工藤はその彼にだ。強い表情と声でだ。こう問うたのだった。
「戦いを止めることだ」
「僕の望みを」
「そうだ。諦めることだ」
ここでだは。止めることと諦めることは同じだった。
そしてその同じ意味でだ。また言う工藤だった。
「今の闘いをだ」
「いやだ、僕は」
「君の実力では俺には勝てない」
現実もだ。工藤は言ってみせた。
「絶対にな」
「僕が弱いと」
「そうだ。弱い」
今度もだ。工藤の言葉は明瞭だった。
「剣士としては駄目だ」
「僕が。弱い」
「悪いことは言わない。とはいっても聞き入れないな」
壬本がそうした人間だということもだ。工藤はもうわかっていた。だからだ。
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