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久遠の神話

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第二十四話 七人目の影その五


「ですからその時にです」
「はっきりわかることですか」
「はい、そうです」
 こう彼に言ったのである。
「その時に備えて。今は」
「僕が強くなることですか」
「まだ戦いたくはないですね」
「はい・・・・・・」
 このことはまだだった。結論を出せないでいた。
 それで沈んだ顔になってだ。上城は聡美に答えたのである。
「どうしてもです」
「ですがそれでもです」
「生きる為にですか」
「はい、戦うことは駄目でもです」
「生きることはですか」
「何があろうとも果たさなければならないですから」
 その為にもだというのだ。そのことはだ。
「強くなって下さい」
「強くなければ生きられない」
「戦いは。剣士の戦いは」
 まさにそれはだというのだ。
「強くなければ生き残れないものですから」
「だから僕は」
「生きる為に。強くなって下さい」
 聡美は上城を見て彼に告げた。
「今は。少しでも」
「その七人目の剣士と対する為にもですか」
「そうです。本当に彼が何者かはまだわかりません」
「わかっているのはですね」
「その力が闇であるというだけです」
「ですが闇と聞くと」 
 その闇から連想するもの、それはどうしてもだった。上城はそれが何かをだ。無意識のうちに言ってしまった。そうなってしまうものだった。
「邪なものを感じます」
「そうですね。それは人も神も同じです」
「神様もですか」
「神は。オリンポスにいても他の世界にいてもです」
「他の世界?」
「海や冥界です」
 オリンポス以外の世界となるとだ。そちらになるというのだ。
「世界は三つに分けられてそれぞれ治められていますから」
「確かそれは」
「ギリシア神話です」
 その神話の話だった。聡美が今話すことは。
「オリンポス、天界はゼウス神が治め」
「そして海と冥界はですね」
「ポセイドン神、ハーデス神がそれぞれ治めています」
「冥界でもですか」
「そこもまた闇の世界ではないのです」
 冥界であってもだ。それは否定する聡美だった。
「あくまで死の世界であり冥界は暗がりの中にありますが」
「それでもですか」
「はい、闇の世界ではないのです」
「では冥界を治めるハーデスは」
「よく誤解されますが邪悪な方ではないのです」
 そうだというのだ。ハーデスはだ。
「一つの世界を治められる主神の一柱なのです」
「それがハーデスですか」
「言うならばゼウス神、ポセイドン神と同じです」
「では闇と戦う神なのですね」
「冥界にあるものはそうした意味の闇ではないのです」
 ではどういった意味のものなのかもだ。聡美は話した。
「言うならば影です」
「冥界にあるものはそれですか」
「光があまり刺さない世界であるだけですから」
「だから冥界にいる神々もですか」
「それぞれの役目を果たされているだけです」
 そうした意味で天界や海界の神々とは変わらないというのだ。それが冥界の神々だとだ。聡美は上城に対して話すのだった。彼のその目を見ながら。 
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