久遠の神話
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第二十三話 七人目の影その六
「剣士は他の剣士を全て倒すものじゃなかったかな」
「それはその通りですが」
「ならその七人目の闇の剣士もまた」
「倒されるというのですか」
「そうする。俺の前に出て来たら」
「その時は」
「俺のこの雷の力で倒す」
こうだ声に対して告げたのである。
「そして俺の願いを適える」
「そうされるというのですね」
「この考えは変わらない。絶対に」
「ですが少なくとも今あの方と闘っても」
広瀬がだ。その七人目の剣士と闘ってもだとだ。声は言うのだった。
「貴方は敗れます」
「それだけの力をその剣士は持っている」
「おそらく今おられる六人の剣士が一度に彼と戦ってもです」
「適わないというのかな」
「はい、そうです」
「成程。その闇の剣士というのは」
どういった相手なのかはだ。広瀬も声の必死の調子を聞いて察した。そしてそのうえでだ。
少し冷静になった感じでだ。こう答えたのだった。
「なら今はいいか」
「闘うことはですね」
「しないさ。俺の目的はあくまで生き残ること」
「その為にも」
「下手に強過ぎる相手と闘うのもよくない」
こう言ってだ。その七人目の剣士とは今は闘わないというのだ。
「そうするさ」
「そうされるのがいいかと」
「それじゃあ。それにしても君はいつも思うけれど」
「私は、ですか」
「闘いを望んでいる様で止めもする。それはどうしてかな」
「それは」
「同じ力同士で闘えば闘うだけ衝突により大きな力が飛び散る」
広瀬はこのことを言ってみせた。
「そしてその力をどうするか」
「それは」
「言えないかな、それは」
「あの、ですが」
「言えないのならいい」
声が明らかに戸惑っているのを見てだった。広瀬はだ。
そのことを問うのは止めた。それで言うのだった。
「君にも事情があるな」
「御聞きになられないのですか」
「言えないことがあって相手が目の前にいないのなら」
それならばだというのだ。
「誰もどうすることもできないのだから」
「それ故にですか」
「そうするしかない。しかしだ」
「しかし・・・・・・」
「君は戦いを止めるつもりはない」
声とのやり取りでだ。それがわかったというのだ。
「そうだな。そこが彼女とは違うな」
「彼女。あの娘ですか」
声は彼女と聞いてだ。こう漏らした。
「あの娘のことは」
「君も彼女のことは知っているか」
「よく、いえ少しは」
出した言葉を一旦打ち消してだった。声は広瀬に答えた。
「知ってはいます」
「少し、かな」
広瀬は声がよく、と言ったのを聞き逃さなかった。
それでだ。こう言ったのだった。
「果たして」
「それは」
「また言えないのかな」
声が再び口ごもったのを見てだ。また言う広瀬だった。
「ならそれも聞かない。しかしだ」
「しかし、ですか」
「君も彼女のことは知っていることはわかった」
それならそれでいいというのだった。
「ならいい」
「ですか」
「彼女は戦いを止めたがっていてだ。君はその逆だ」
「私は。その」
「彼女と君は対立する立場にある」
このことも読んでだ。広瀬は述べた。
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