久遠の神話
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第二十二話 広瀬の礼儀その十四
「そのことですが」
「俺達に謝る」
「というと」
「この前は礼儀のない言葉で申し訳ありません」
頭は下げないしかしだ。
その言葉でだ。頭を下げたのだった。
「年配の方に対して」
「そんなことはどうでもいいが」
「俺もだよ」
二人も選ぶる人間ではない。それでだ。
そうしたことはいいとしてだ。そのうえでだ。
広瀬にだ。二人で言ったのだった。
「いい。君が謝るならだ」
「俺達は受けさせてもらうよ」
「そうですか。有り難うございます」
このことはこれで終わった。そうしてだった。
二人はまただ。広瀬に対して言ったのだった。
「そしてだ。戦いのことだ」
「それはいいかな」
「止めません」
意固地なまでにだ。広瀬は強い口調で二人に述べた。
「絶対にです」
「止めずそうしてか」
「俺達とも」
「戦いますか、今」
「君を止める為にはな」
その為だとだ。工藤がまた言った。
「そのことも必要ならな」
「俺もそう思う」
そして高橋も工藤に続く。
「君を止める為ならね」
「わかりました。それならですね」
広瀬も受けて立つ。そのうえでだった。
戦いが行われることを決めてからだ。そのうえでだ。駆動がその広瀬に述べてきた。
「しかしこの場所ではだ」
「戦うことはできませんね」
「人の目がある」
校舎の廊下には人が行き来している。それでは戦うことは無理だった。
それでだ。工藤は言ったのである。
「ここは止めておこう」
「では屋上はどうでしょうか」
広瀬はにこりともせずそのうえでだ。二人に提案したのである。
「この校舎の屋上は」
「そこか」
「はい、そこではどうでしょうか」
「俺はそれでいい」
「俺もです」
工藤に応える形で高橋も応えた。こうしてだった。
二人も話を決めてだ。そうしてだった。
二人を代表してだ。工藤が広瀬に述べた。
「そこに行こう。この講堂の校舎の上だな」
「はい、そこなら人が来ませんのね」
「青空の下での戦いか」
このことを想像してだった。工藤はふとこんな言葉を漏らしたのだった。
「ヤングオフィサーオールウェイズインザスカイ」
「海軍の言葉ですか」
「そうだ、若い士官は常に青空の下にいるべき」
日本語訳もして言う工藤だった。
「海上自衛隊にも残っている言葉だ」
「それを今思われたのですね」
「今俺は船にはいない。だが」
「だが、ですか」
「戦いの場にはいる」
海上自衛隊にいても船にいるとは限らない。陸上での勤務も多いのだ。実際に工藤も今葉陸上にいる。この校舎にいることが何よりの証拠である。
その中でだ。彼は言うのだった。
「ではこの言葉はそのまま俺達に当てはまる」
「俺は海軍、いえ軍隊のことはわかりませんが」
広瀬は工藤と対しながら述べた。
「ですがその言葉は今の俺達のそのまま当てはまるんですね」
「君は士官ではないがな」
「しかし戦士としてですね」
「このことが当てはまる。ならばだ」
「行きましょう、戦場に」
広瀬の方から案内してだ。そのうえでだった。
彼等はその屋上に赴いた。そしてそこでだ。再び剣を交えるのだった。
第二十二話 完
2012・1・25
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