久遠の神話
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第二十二話 広瀬の礼儀その十三
「申し訳ありませんが」
「いいさ。それにな」
「それにとは」
「おそらく。これは俺の予想だが」
確かな根拠はない。だがそれでもだと言う広瀬だった。
「君は知っていても言わないな」
「私がそうすると」
「そう、君は確かに善人だが秘密を人に話す人間ではない」
こうだ。聡美を見ての言葉だった。
「俺はそう見る」
「そう見えますか」
「違うかな。もっとも」
このことも指摘してだとだ。広瀬は読んでから話した。
「それを言っても君は言わないだろう」
「・・・・・・・・・」
「別にいい。言わなくともだ」
「ですか」
「君には君の事情がある。俺は君の個人情報には興味はない」
聡美のだ。それにはだというのだ。
「だからだ。聞かない」
「そうされるのですか」
「俺が興味があるのは女性では一人だけだ」
広瀬は前を見てだ。そしてだった。
横にいる聡美にだ。こう告げたのだった。
「その人の為なら」
「まさか」
「失言だったな。もう言わない」
それに気付いてだった。彼はだ。
言わずにだ。そのうえでだ。
聡美に顔を向けてだ。こう告げたのだった。
「また会おう」
「御別れですか」
「君とはあくまで友人かそれに近いものでしかない」
それならばだというのだ。
「親密になるつもりはない」
「友人以上の関係には」
「だから二人で会うのも誤解を受けかねない」
広瀬の知人達、彼等にだというのだ。
「今度は三人で会いたいがいいかな」
「そうですね。では広瀬さんにもご迷惑がかかりますし」
「それではだ」
「また御会いしましょう」
こうしてだった。広瀬は聡美と別れてだ。そのうえでだ。
一人で歩きだした。そのうえで次の講義のある講堂に向かった。だが今日の講義は休講だった。それで仕方なく時間を潰す為に大学の中の本屋に向かおうとした。しかしだった。
その彼の前にだ。彼等がいた。それはだ。
工藤と高橋だった。その彼等がだ。
広瀬の前にいてだ。そして言って来たのだった。
「剣士の気配がこの学園にまた感じられたので来たが」
「まさかここで君と会うとはな」
二人はそれぞれ広瀬に対して言う。
「意外な出会いだが」
「これも好都合かな」
「好都合ですか」
広瀬は二人にだ。ここではだ。
敬語を使いだ。そして応えてきたのだった。
「俺と会ったことが」
「そうだ。君に言いたい」
工藤が一歩前に出てだ。広瀬を見据えてだ。
そのうえでだ。こう言って来たのだった。
「戦いのことでだ」
「それを止めろというんですね」
「君の望みは知らないがな」
「戦いはですか」
「そうだ。この戦いには何の利益もない」
「だからこそだよ」
高橋も工藤に続いて一歩前に出た。そのうえでだ。
広瀬にだ。こう言ったのである。
「俺達は君に言いたい。こんな戦いはだ」
「降りるべきだ」
「そうして君の望みを適えるべきだ」
「その望みがどういったものかは知らないけれどね」
だがそれでもだとだ。二人は言ってだ。
そのうえで広瀬に戦いから降りる様に促す。二人も真剣だった。
しかし広瀬はその二人に対してだ。迷いのない顔でだ。
冷静にだ。返した言葉は。
「俺もそういう訳にはいきません」
「戦う」
「どうしてもだというんだね」
「そうです。あと一つ謝ることがあります」
話の合間にだ。こんなことも言う彼だった。
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