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戦国異伝

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第五十八話 墨俣での合戦その十


 首が送られて来る。二十はある。その首達を見てだ。信長はまた金森に問うた。
「一人でじゃな」
「はい、一人でやったことです」
 まさにそうだとだ。金森も答える。
「あ奴が」
「ふむ。わかった」
 ここまで聞いてだ。信長はだ。
 今度は池田にだ。こう言ったのであった。
「あ奴を呼べ」
「殿、それでは」
「まずは呼べ。よいな」
「はっ、それでは」
 こう応えてだった。池田はすぐにその者を呼びに向かった。そうして程なくして。
 前田が信長の前に来た。彼はすぐに畏まる。その彼に対して。
 信長はだ。こう言ったのだった。
「あの首取り足立だけではなくじゃ」
「はい」
 前田は今は身体を折り神妙な顔になる。その彼にだ。信長はさらに言う。
「他にも二十もの首を取ったな」
「二十ですか」
 前田はそう言われてもだ。少しだ。
 考える顔になりだ。こう言ったのである。
「それだけ取っておりましたか」
「これだけの功、浪人のものではない」
 話がいよいよ本題に入る。
「それではじゃ」
「はっ」
「又左、また帰参せよ」
 正式にだ。前田に告げた。
「よいな」
「よいのですか?」
「わしに二言はない」
 笑みを浮かべてだ。前田にまた告げた。
「わかったな。それではじゃ」
「有り難きお言葉。それでは」
「軽挙は慎むのじゃ」
 信長はこのことを言うのも忘れなかった。
「これでよくわかったじゃろう」
「その通りです」
 出仕を止められ、そして多くの者が来たこともだ。思っての言葉だった。
「まことに」
「忘れるな、御主はこれからより大きくなる者じゃ」
「だからですか」
「左様じゃ、だからこそ軽挙は慎め」
 また言う信長だった。
「そういうことじゃ」
「ではそれがしは」
「よき将になれ」
 まさにだ。そうなれというのだ。
 こう前田に話しだ。そのうえでだ。
 信長は立ち上がり周りを見回す。そここそがだった。
 墨俣だ。目指していたその地を手に入れてだった。
 彼はだ。勝ちはしたがそれでもだ。険しい面持ちになり言うのだった。
「しかしじゃ」
「はい、これからですな」
「墨俣を手に入れてからが」
「肝心だと仰っていましたな」
「その通りじゃ。ここに城を築く」
 そうするとだ。信長は言うのである。
「そしてその城を足掛かりにしてじゃ」
「稲葉山城を攻める」
「そうしますか」
「そうじゃ。そうする」
 信長は今度は遠くを見た。北にだ。
 山が聳え立ちその頂上にだ。城があった。その城こそがだ。 
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