久遠の神話
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第二十一話 聡美と高代その十一
「そういうことなのですね」
「おそらくは」
「己に気付き戒めなければ人は磨かれません」
そのだ。人間性がだというのだ。
「気付くことは人を磨くものの一つですね」
「そうです。ですが気付けることも」
「それも難しいことですね」
「あの方も気付いて頂ければ」
またこう言う聡美だった。
「いいのですが」
「その方は貴女にとって非常に大事な方ですか」
「はい、とても」
まさにそうだとも答える聡美だった。
「本当に実の姉妹の様な方です」
「ではです」
「それでは?」
「その方が早く気付かれることをです」
高代は微笑みだ。そのうえで聡美に言ったのだった。
「私もお願いさせてもらいます」
「そうして頂けますか」
「気付かないことは不幸でもあります」
また言う彼だった。
「ですからその方が幸福になられることを」
「祈って頂けますか」
「私にできることなら力になります」
こうも言う高代だった。
「そうしてさせてもらっていいでしょうか」
「いえ、高代さんは」
「私は?」
「高代さんだけでなく剣士の方々はです」
彼だけでなくだ。他の剣士達もだというのだ。
「それはできないのです」
「それは何故でしょうか」
「何となくそう思うのです」
ここでは根拠を言わずに返す聡美だった。
そしてだ。また言う彼女だった。
「ただそれだけですが」
「そう思われるだけですか」
「あの方は。悲しい方なのです」
遠くを。悲しい目で見ての言葉だった。
「とても」
「しかし私達剣士はですか」
「あの方のお力にはなれないのです」
「そうですか。残念ですね」
そう聞いてだ。高代は実際にそうした顔になった。だが、だった。
何もできないと言われてはどうしようもなくだ。その残念な顔でまた述べたのだった。
「ではです」
「それではですね」
「また御会いしましょう」
微笑みになりだ。別れの言葉を告げたのだった。
「そうしましょう」
「そうですね。ではまた縁があれば」
「その時にお話しましょう」
こう話してだ。高代は今は聡美と別れた。彼はそのまま街の中に消えていくがそれでもだった。聡美は一人で街を歩きながらだ。そのうえでだった。
こうだ。誰かに言ったのだった。
「私はです」
「また。そのことを私に言うのですか」
「はい、私は決して諦めません」
こうだ。聡美は声に言ったのだった。
俯き悲しい顔だがそれでもだ。そこに決意も含んでだ。
そのうえでだ。声の主に言ったのである。
「貴女を。必ずです」
「間も無くなのです」
どうかというのだ。声は。
「私の願いが。夢が適うのですから」
「神話の頃から続けられて。まだですか」
「本当に間も無くなのです」
声も必死だった。それが口調に出ていた。
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