久遠の神話
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第二十一話 聡美と高代その十
「それは否定できません」
「そうなのですか」
「しかしあの方とはです」
その双子の兄とは別の。その女性とはというのだ。
「そうしたしがらみもなくです」
「しがらみがなくですか」
「はい、仲良くしてこれました」
こう話すのだった。
「本当に」
「そうですか。では今は」
「そうしたいのですが」
まただ。暗い顔で言う聡美だった。
「ですがそれはです」
「今は無理なのですか」
「あの方が思い止まってくれれば」
どうかと言うのだった。今はだ。
「今からでも遅くはないのですが」
「貴女は悩んでおられますね」
「はい」
小さくだ。こくりと頷いて答えた聡美だった。
「それはです」
「その悩みはお話できるものでしょうか」
「だとすればどれだけよかったでしょうか」
これが聡美のだ。彼女の持つ悩みへの返答だった。
「まことにそう思います」
「左様ですか。それではです」
「それでは?」
「悩みは誰かにお話するのもいい解消ですが」
それとは別の解消法をだ。高代は聡美に言うのだった。
「その他にもありますので」
「ではそれをですか」
「まずは食べて下さい」
最初はそれだった。
「そして飲んで下さい」
「今こうしている様にですか」
「美味しいお料理に美味しいお酒はです」
「そのどちらもですね」
「はい、悩みを消してくれます」
即ちストレスを解消してくれるというのだ。
「ですから。どうでしょうか」
「そうですね。それではです」
聡美は何とか笑顔になってだ。そうしてだった。
高代のその言葉に応えてだ。実際にだ。
ワイン、ギリシアのそれを飲んだ。それから高代と共にパスタにワインを楽しんだ。それが終わってからだ。
デザートも食べ店を出る時にだ。高代はだ。
穏やかな微笑みを浮かべてだ。聡美に話したのだった。
「今日のお話ですが」
「はい、お互いにですね」
「よくわかりましたね」
「はい、とてもよかったです」
お互いに理解できたからだ。それをよしとした。
そしてそのうえでだ。彼はまた聡美に話した。
「では私はこれで」
「お帰りになられるのですか」
「食事も終わりましたし」
だからだ。もういいというのだ。
「帰ってお風呂に入って寝ることにします」
「そうですか。しかしです」
「しかし?」
「貴方は高潔な方なのですね」
ここで彼女を誘わなかったこと、それに店の中での会話からだ。そのことを察してだった。
「とても」
「そうは思いませんが」
「高潔な方程そう思われます」
「自分自身を高潔ではないとですか」
「はい、そう思うものです」
「だからこそ己を磨きそうなれる」
高潔にだ。そうだと言う高代だった。
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