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戦国異伝

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第五十六話 竹中の意地その一


                第五十六話  竹中の意地
 竹中に居城である稲葉山城を占拠されだ。龍興は。
 まずは僅かな家臣達に連れられ何とか城の側の寺に入りそこを仮の住まいとしてだ。そのうえでだった。
 怒り狂いながらだ。こう家臣達に命じたのだった。
「兵を集めよ」
「兵をですか」
「そうしてですか」
「そうじゃ。あの城を攻め落とせ」
 こう命じたのである。
「よいな、そうせよ」
「何と、あの稲葉山の城をですか」
「今すぐですか」
「攻め落とせというのですか」
「そうじゃ、美濃中の兵を集めよ」
 そうせよとも言うのだった。
「よいな、すぐにじゃ」
「あの、今すぐにと言われましても」
「今の美濃は国人達が次々と織田についていっています」
「その分兵は減っていまして」
「集る兵は二万を割ってきています」
 そうなっているというのだ。今の斉藤はだ。
 そしてだ。さらにだった。
「しかも今すぐに兵を集めよと言われましても」
「そう簡単には集りませぬ」
「美濃中から兵を集めるとなると」
「それは」
「できぬというのか」
 そう言われてだ。龍興はだ。
 唖然としてだ。呟く様にしてだった。
「まさか。ではあの城は」
「はい、陥ちませぬ」
「今すぐには」
「それにです。あの城は二万程ではです」
「陥ちぬかと」
 堅固であるが故にだ。それは無理であった。 
 そうしたことを聞いてもだ。龍興は。
 怒り狂うばかりでだ。家臣達に怒鳴りだした。
「ええい、それでもじゃ!」
「ですが殿、そう容易なことではありませぬ」
「我等は今城をなくしております」
「ここで何かをしてもです」
「無駄です」
 この言葉も出た。
「ですから今はじっくりと兵を集め城を取り囲みです」
「そのうえで考えましょう」
「考えてどうなるというのじゃ」
 しかしだった。龍興はまだ怒りを収めずだ。今度はこんなことを言い出した。
「時間をかけておれば織田が動くぞ」
「それはそうですが」
「ですが」
「織田だけではない」
 美濃の置かれている状況はだ。彼もわかっていた。敵は織田だけではないのだ。
「近江はいいとして信濃じゃ」
「武田ですな」
「あの家もまた」
「下手をすれば動く」
 武田の存在もだ。彼等にとって脅威になっていた。美濃の隣国の信濃を完全に掌握する武田はだ。まさに蹲って様子を見ている虎なのだ。
 その虎についてもだ。龍興は喚く。
「だから早く城をじゃ」
「ですが殿」
「あの城は」
 また言う家臣達だった。
「また言わせて頂きますが容易にはです」
「陥ちはしませぬ」
「ではどうすればよいのじゃ」
 彼等はだ。とてもだった。
 どうすればいいのか答えを出せなかった。とてもだった。
 そんな彼等を見てだ。竹中は。
 城中のある櫓にいてだ。そこで弟の彦作に言うのだった。
 櫓の中は殺風景であり武具が置かれているだけだ。その中でだ。
 彼はだ。弟と向かい合って座ってだ。それで言うのだった。 
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