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戦国異伝

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第五十三話 徳川との盟約その一


               第五十三話  徳川との盟約
 家康が家臣達と共に清洲城の前に来るとだ。すぐにだった。
 家臣の一人である川尻が出て来た。そのうえでだ。
 家康に対してまずは一礼しようとした。家康は馬上だったが川尻はあえて馬から降りてだ。そのうえで一礼しようとしたのである。
 しかしだ。家康はだ。
 彼が動くそれより前にだった。すぐに馬から降りてだ。
 彼もまた下馬して一礼しようとする。それを見てだ。
 家康の家臣達もだ。慌てて下馬してだった。
「殿だけが下馬してはです」
「我等もです」
「むっ、これは」
 川尻はだ。そのすぐに下馬する徳川の家臣達を目のあたりにしてだ。
 共にいる者達にだ。こう言ったのだった。
「これはよいな」
「よいですか」
「徳川殿の家臣の方々は」
「うむ、凄いものじゃ」
 こうだ。感心した顔で言うのである。
「家康殿もすぐに下馬されるとは」
「確かに。我等が下馬するのは当然ですが」
「しかし徳川殿もそれで応えられるとは」
「いや、徳川殿はこれはかなりの」
「律儀者でございますな」
「うむ、そうじゃな」
 その通りだとだ。川尻も言う。
「徳川家康殿、素晴らしい御仁じゃ」
「何を話されておられるのでしょうか」
 彼等の話がよく聞こえない家康はだった。川尻にこう尋ねたのだった。
 そしてだ。川尻もその家康に応えてだった。
「そうでしたな。それでは」
「はい、それでは」
 こうしてだ。家臣達も交えてそれぞれ礼をし合いだった。そうしてだった。
 お互いに礼を終えてだ。家康は川尻の案内で清洲城に入った。
 そのうえでだ。応接の間に向かった。そこは。
 かなり広い部屋だった。家康達全員が入ってもまだ半分以上余る。そこにだ。
 彼等と対する形で織田の家臣団がいた。その彼等はというと。
「ううむ、噂通りですな」
「そうですな。流石は織田殿」
「全てが青です」
「青で揃えておりますな」
 織田の者達は皆青の礼装だった。黄色の徳川の礼装に対してだ。
 海か空を思わせる青でだ。大地を思わせる徳川の前にいるのだ。
 その彼等を見てだ。徳川の家臣達は言うのである。
「我等も派手と思うていましたが」
「いや、織田殿もかなり」
「しかも家臣の数が多いですな」
「我等の何倍もいますな」
 見れば徳川の家臣達は二十人前後だ。徳川家はまだまだはじまったばかりで人も少ないのである。しかしだった。
 織田の家臣達も彼等は彼等でだ。徳川の家臣達を見て話すのだった。
「ううむ、数こそ少ないにしても」
「いや、どの御仁も見事な面構え」
「我等に全く引けを取ってはおらん」
「しかもあの黄色の衣のよいこと」
「これは我等もうかうかできませんな」
「いや、全く」
 こう話すのだった。
「我等の殿はまだ来られていませんが」
「間も無くですな」
「さて、では殿が来られてから」
「本題ですな」
 織田の者達は余裕を見せていた。しかしだ。
 徳川の者達はだ。少しずつだが確かにだった。
 焦りを感じていた。そうしてだった。
 口々にだ。こう言い合うのだった。
「遅いですな」
「いや、全く」
「我等は客の立場だというのに」
「その客を待たせるとは」
「織田殿、少し高慢ではありませぬかな」
「左様ですな」
 信長についてだ。不満を感じだしていた。 
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