久遠の神話
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第一話 水の少年その二
「どれだけ強いのかな」
「気とか使ったりしてな」
「竹刀から衝撃波出すとか」
「ゲームみたいな技出してな」
「そんなことできるかもな」
「そんな筈ないじゃない」
上城は流石にそれはないと笑って返した。
「幾ら何でも」
「だから冗談だよ」
「そんなのできる訳ねえだろ」
その彼にだ。周りは笑って話す。
「全く。上城ってな」
「そういうところが真面目なんだよな」
「冗談だったの」
そう言われてだ。彼は憮然としながらも頷くのだった。
「それならそうと言ってくれたらいいのに」
「そんなのわからないか?」
「すぐにわかるだろ」
周囲はその彼に怪訝な顔になって言う。
「だから。御前はちょっとな」
「真面目過ぎるんだよ」
「真面目で駄目っていうのかな」
上城は今度はこう周りに問い返した。
「そう言うのかな」
「まあそれはさ」
「何ていうか」
「悪くはないさ」
「そう、特にな」
周りもだ。その彼にこう答えはした。
「ただな。一年のほら」
「斉宮みたいにな」
「冗談がちょっとわからないとな」
「しんどくないか?」
「別に。冗談がわからないかも知れないけれど」
だがそれでもだというのだ。
「特に困ったことはなかったし」
「じゃあ別にいいのか」
「そう言うんだな」
「うん、僕はそう思うけれど」
そのだ。彼自身はだというのだ。
「特にね。とにかく大学にだよね」
「ああ、その凄い人がな」
「いるからな」
「じゃあ。一度見てみたいな」
あらためてこう言う彼だった。
「一体どんな人なのか」
「そうだよな。本当にな」
「どんな凄い人なのか」
「見に行くか、今度な」
こうした話をしてだった。彼等は。
土曜日の部活の後で八条大学、高等部の隣にあるそのキャンパスに入りだ。そのうえで大学に剣道場に向かうのだった。
そこは高等部のものよりもさらに大きな道場だった。建てられてから随分と経っているらしく黒い瓦に年季が見られる。そしてだ。
白い壁にも古さが見られだ。そのうえ。
中もだった。床も踏むと音がしそうだ。奇麗に掃除されているがそれでもだ。年季が見られるのは事実だった。
その年季のある道場の中にだ。彼がいた。
相手を片っ端から倒す二刀流の面の男、それでもうわかった。彼こそがだとだ。
「あの人だよな」
「ああ、間違いないな」
「あの人だな」
「二刀流の人あの人だけだしな」
それでだ。わかるというのだ。
その強さを見るとだ。これが。
「本当に強いな」
「どんな人でも適わないじゃないか」
「噂通りっていうか」
「噂以上だよな」
上城達は口々に話す。その彼を見て。
そしてそのうえで彼の垂れにある名前を見る。それは。
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