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久遠の神話

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第十六話 上城の迷いその十


「そうしてですね」
「そうだよ。力を使うんだよ」
「ですね。そうしたら」
「この巨大な猪だって倒せるんだ」
 これが中田の狙いだった。
「外がどれだけ強くても中はどうだ?」
「猪の中ですね」
「外の毛皮は確かに凄いな」
「はい、その筋肉も」
「まさに弾丸だよ」
 実際にだ。猪は今も弾丸の如く二人に突っ込んで来る。既に駆けだしている。
 それを見据えながらだ。中田は上城に話すのである。
「巨大な、な」
「そしてそれに対して」
「ああ、今度はかわしてからな」
 ここまでは同じだった。かわすことはだ。
 しかしだった。今回はだ。
「剣を掴んでな」
「はい、それじゃあ」
「それから術を使う」
 そうするというのである。そしてだった。
 また来る猪だった。その猪を見てだった。
 中田は再びだ。上城に言ったのだった。
「よし!」
「はい!」
「今度もだ、かわすんだ!」
「了解です」
 こうしてだった。二人共だった。
 今回もかわした。やはり紙一重だった。しかしだった。
「その猪の首のところに刺さっている剣を握ってだった。一気にだ」
 二人はそれぞれツ術を使いだ。そうしてだ。
 炎に水を注ぎ込む。怪物の中に。それを受けると。
 怪物の突進が止まった。まるで機械仕掛けの人形の電池が切れた様に。
 そしてだった。その口や耳からだ。
 煙、火と水のものを出しそうしてだった。怪物は悶絶した顔でだ。
 がくりと崩れ落ちだ。そのままだ。
 怪物はゆっくり倒れる。そして地面に着いたところで消えた。
 その後には黄金が残る。その黄金を見てだ。
 中田はだ。こう上城に話したのだった。
「じゃあ金はな」
「僕はいいです」
「いや、そういう訳にはいないからな」
「ですが本当に」
「一本だけ貰ってくれよ」
 微笑みだ。中田に言うのである。
「後は俺がな」
「そうしてですね」
「その一本は君が好きにすればいい」
「寄付なり何なりですか」
「ああ、それはな」
 そしてその他はというのだ。
「けれどそれ以外は俺が貰う。これでいいか」
「わかりました。それじゃあ」
「これ一本で大体百万なんだい」
「高いんですね、案外」
「そうだな。それはな」
「ですよね。それじゃあ」
 上城は手を出して一本だけ手にした。そしてその他はだ。
 中田が受け取った。そうしてから彼は上城に話した。
「さて。これからどうするんだい?」
「今からですね」
「怪物は倒したさ」
「そしてですか」
「俺はいいぜ」
 楽しげに笑ってだ。上城に言うのである。
「戦いたいのならな」
「僕は」
 中田にそう言われてだ。上城は苦しい顔になり俯いてだ。 
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