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久遠の神話

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第十四話 水と木その十


「今確かに」
「はい、倒せます」
 また言う声だった。
「それは事実です」
「それなら」
 どうかというのだ。上城はだ。
 そしてだ。こう言う彼だった。
「不死身と言いましたけれど」
「不死身なのは事実です」
「剣も弓も効かないんですよね」
「けれどヘラクレスはこの獅子を倒した」
 上城は考える。それはどうしてできたのか。
 だが彼は今剣を持っていてだ。それを念頭に置いている為だった。
 どうしていいのかわかりかねた。どうしてこの獅子を倒せばいいのか。
 獅子はまた来た。それに剣を向けてもだった。
 確かに切った。しかし獅子は傷を受けない。まさに不死身だった。
 それを見てだ。彼はまた言った。
「やっぱり効かない。不死身だから」
「それでもヘラクレスはです」
 また言ってきた声だった。
「この獅子を倒していますので」
「どうして倒したのか」
 考える。しかしだった。 
 どうしてもわからずにだ。彼は獅子と闘い続ける。幾ら剣で攻撃してもだった。
 獅子は倒れない。傷一つ受けない。その中でだ。
 次第に狼狽を覚えた。勝てないのではないかとさえ思えてきた。
「まずい、このままでは」
「勝てないというのですね」
「この獅子には。どうしても」
「確かに剣ではですね」
 声は今度はこんなことを言ってきた。
「それは無理ですね」
「剣も弓矢も」
 そのことが何度もだった。上城の頭の中で響く。そうしてだった。
 そのことからだ。彼は少し考えを転換させようとした。その中でだ。
 剣を見た。するとその青い剣からだ。
 水が滴っていた。彼の剣の力だ。それを見てだ。
「まさか」
「上城君、わかったの?」
「うん、ひょっとしたら」
 こうだ。自分を見守る樹里にも話す。
 剣は左手に持ってだ。今は片手で構えていた。しかしすぐに右手を添えてだ。
 両手に中段で構えてだ。獅子を見据えながら言うのだった。
「この獅子の不死身っていうのは」
「それは?」
「護りの強さなんだ」
 それによるものではないかというのだ。
「毛皮がどんなものも通さないんだ」
「だから不死身なの」
「うん、多分ね」
 こう察したのである。そうしてだった。
 彼はヘラクレスのこともここで言った。
「あとね」
「あとは?」
「ヘラクレスって凄い力持ちだったよね」
「ええ、それで有名よね」
「力。力で絞めたりすればどうなのか」
 こう考えていくのだった。獅子と闘いながら。
 そしてだ。次にはだった。一旦後ろに跳び間合いを離してだ。
 彼はだ。あらためてだった。
 剣を下から上にだ。つむじを描く様に振った。するとだった。
 水が起こった。それもかなり激しく多い水流がだ。獅子に向かう。
 そしてその水流で包み込みだった。獅子を絞めていくのだった。
「これならどうかな」
「斬ったり突くんじゃなくて絞めるのね」
「うん、その全身をね」
 そうするというのである。
「こうしたらどうかな」
「いいと思うわ。ただね」
「ただ?」
「窒息になるんじゃ。この場合は」
 獅子は空中でその水流、剣から出したそれに覆われていた。それを見ての言葉だった。 
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