久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十四話 水と木その四
「どうして戦いを終わらせれば」
「それだよね。どうしたらいいのかな」
首を傾げさせてだ。上城も樹里のその言葉に応える。
「具体的にはどうするかだけれど」
「そのこと考えてみようかしら」
「じっくりとね」
「獅子に鼠は向かいません」
ふとだ。聡美は考えだした二人にこう述べたのだった。
「あまりにも力の差があるからです」
「あっ、それではですね」
聡美のその言葉からだ。樹里が気付いたのだった。
そしてだ。上城にだ。少しだけ明るい顔になって話した。
「ねえ、上城君って怪物を倒せばそれだけ強くなるのよね」
「うん、そうだよ」
それはその通りだと答える上城だった。
「剣士は怪物を倒せばその分だけ強くなるよ」
「お金も手に入るけれど」
「怪物を倒せば倒すだけ強くなるんだ」
「じゃあここはね」
「ここは?」
「怪物をもっと倒してね」
そうしてだというのだ。
「上城君が他の剣士より強くなればいいのよ」
「戦う他の剣士の人達よりも」
「その広瀬さん、中田さんもそうよね」
戦い生き残ることを選んだ二人の剣士の名前をだ。樹里は出した。
「あの人達よりずっと強くなって」
「そうしてその力で」
「その剣士の人達に戦っても無駄だと思わせたらいいのよ」
「戦わずして勝つだね」
「ええ、それでどうかしら」
こう上城に提案するのだった。
「それは」
「そうだね。それはいいかも」
上城もだ。樹里のその言葉に頷く。これはいけるとだ。彼も思った。
そして聡美もだ。こう二人に述べた。
「剣士の戦いは生きるか死ぬかですが」
「それでもですか」
「戦いを放棄する選択肢もあります」
そうしたこともできるというのだ。
「それもまた」
「あれっ、戦いを捨てることもできるんですか」
「はい、できます」
聡美は驚く上城に話す。
「それもまた可能なのです」
「あの、絶対に戦わないといけないんじゃ」
「夢を適えるのならです」
「それならですか」
「はい、戦い他の剣士を倒してです」
「けれど夢を捨てるなら」
どうかとだ。上城も考えながら述べていく。
「戦いから避けられるんですか」
「そうして生きられます」
そうなるというのだ。
「それもまた一つの生き方です」
「夢を捨てて生きる」
「過去にそうした剣士も数多くいます」
「それは敗北になるんですか」
「そうですね。それもまたですね」
なるとだ。聡美は上城に話す。
「やはりその様に」
「そうですか。やっぱり」
「ですからどうしてもという時には」
「剣士であることを辞めて」
「生きることもできます」
このことを強くだった。聡美は話していった。
そのうえで彼の顔を見てだ。こうも言った。
「どうされますか、そのことは」
「どうするかと言われても」
上城は困惑した顔になり述べた。
ページ上へ戻る