戦国異伝
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第四十九話 認めるその四
「それも非常にじゃ」
「では織田殿はさらにですか」
「強くなる。これでは」
「これでは?」
「美濃は自然に手に入る」
そうなるというのだ。その美濃もだというのだ。
「織田殿ではじゃ」
「美濃もそうしてですか」
「最早それは止まらん」
こうまで言うのであった。
「尾張にこの伊勢、志摩にじゃ」
「美濃まで手中に収められれば最早」
「石高にして二百万石を超え」
天下でも屈指のものであるのは最早言うまでもない。
「そして兵は五万をさらにじゃ」
「ううむ、天下随一ですな」
「そうなれば敵はおらん」
「では織田殿は」
「決まりじゃな」
雪斎の声が確かなものになった。
「我等はこれからは」
「織田殿に」
「うむ。もう少し見るつもりじゃったが」
それには及ばないというのだ。伊勢と志摩を見てはだ。
それでだ。雪斎は小僧に言うのだった。
「ではこれで帰るか」
「そうされますか」
「うむ、そうする」
こう言うのだ。
「すぐに戻るぞ」
「では」
こうしてだった。彼はすぐに伊勢から尾張に戻るのだった。そうしてだ。
今川の者達を連れてだ。すぐにだった。
彼等にだ。こう話した。
「伊勢はよいところでござった」
「左様ですか」
「では志摩は」
「同じく」
その国も見た。そうして言えることは。
「やはりよい国でござった」
「では織田殿にですか」
「つかれますか」
「そうするのがよい」
まさにそうだというのだった。
「伊勢は町も田畑も」
「非常に整っている」
「そうなのですか」
「それだけでなく」
雪斎は己が見たことをだ。彼等にそのまま話した。
「道や堤もです」
「そうしたものも整えているのですか」
「既に」
「左様、既にでございます」
そこまで聞いてだ。彼等は言うのだった。
「予想外ですな」
「織田殿は既にそこまで政を進めておられるとは」
「どうやらこれは」
「かなりの」
「左様、志摩の港もです」
そこもだ。どうかというのだ。
「整えられ多くの船が行き交い」
「賑わっておりますか」
「そうなのですか」
「あれだけの港だとは思いませんでした」
また本音を話す雪斎だった。
「さすればです」
「織田殿は我等の主となられるべきお方」
「義元様が仰る様に」
「そう見ます」
雪斎の今の言葉は断言だった。
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