久遠の神話
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第十一話 意外な素顔その四
「少し待ってくれるかな」
「馬をか」
「休ませてくる」
こう言うのである。
「その間待ってくれるかな」
「ああ、わかった」
それでいいとだ。中田も応えてだ。
そうしてだ。彼はまずは馬を送ってからだ。戻って来てだ。
そのうえでだ。二人に言うのだった。
「では行こうか」
「はい、それでは」
「紅茶でも飲みながらかい?」
広瀬は笑って聡美に応える。中田に対しても。
「そうして話すのかな」
「いい店でも知ってるのかよ」
「町の方にある」
「町の?」
「マジックという店だ」
その店で話そうというのだ。
「紅茶だけでなくコーヒーもいい」
「そうか。それじゃあな」
「そこに行きましょう」
中田も聡美も応えてだ。そのうえでだ。
彼等は大学を出る。中田と広瀬はバイクで、聡美は彼女の日本車で。
それで駅前のだ。古風な、ダークブラウンのイギリス調の店に入った。そこはカウンターも椅子もテーブルもダークブラウンのイギリスを思わせる内装だった。
その中に入り四人用のテーブルに座ってだった。
それぞれ紅茶やコーヒーを頼みそれからだった。広瀬が自分の紅茶を飲みながら話した。
中田と聡美は横に並んで座りだ。その広瀬と対する形になっている。
彼はだ。まずはこう言った。
「俺の戦う目的は」
「何なんだ?」
「恋人がいる」
こう話すのだった。
「その娘と一緒になりたい」
「恋人とか」
「そうだ。それでだ」
「恋人と一緒になることがか」
「俺の願いだ」
こうだ。強い声で中田、そして聡美に話すのである。
「だからだ。俺はだ」
「戦うんだな」
「そういうことだ」
「あの」
ここでだ。聡美が自分の紅茶を飲みながら広瀬に尋ねてきた。
「いいですか?」
「何かな」
「想っておられる方ですが」
「その娘のことか」
「結婚やそうしたことをされたいのなら」
どうかとだ。聡美は言うのだった。
「戦われずとも普通に」
「できるっていうんだな」
「それは違うのでしょうか」
「俺の場合は少し事情が違う」
「事情がですか」
「その娘は身体が弱い」
そうだというのだ。
「だからだ。下手をすればだ」
「御命がですか」
「とにかく不安で仕方がないんだ」
その娘がだ。何時どうなるかと考えただけでだと。広瀬は言外にこんな言葉も含めていた。
「だから俺は剣士になってだ」
「その娘の身体を丈夫にしてなんだな」
「そういうことだ。絶対にだ」
「話はわかったさ」
ここまで聞いてだ。中田は頷いてみせた。
そしてだ。自身のコーヒーを少し飲んでから述べた。
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