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久遠の神話

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第十話 偶発戦その六


「千二百億円のイージス艦を買う金はあるが」
「それでもですね」
「新しい小銃を買い集める金はない」
「予算の使い方間違ってますよね」
「自衛官もそう思っている人間は多い」
「警察より予算の使い方下手ですよね」
「陸自さんはもっと酷い」
 工藤は言った。
「うちや空自さんよりもだ」
「確か戦車一両十億円ですよね」
「そうだ。イージス艦は何年かに一隻の割合だが」
「戦車は何百両も必要ですよね」
「戦車だけではない」
 兵器はそれだけあればいいというものではない。それでなのだ。
「装甲車も対空砲もだ」
「全部そんな感じなんですね」
「対空砲で一両十五億円だ」
 八七式対空自走砲である。最新の科学技術を導入した陸上自衛隊自慢の対空自走砲である。しかし一両辺りのコストはというとなのだ。
「それだけする」
「無茶苦茶かかってません?」
「普通の国の兵器の二倍か三倍はするものばかりだ」
「で、そういう兵器ばかりで」
「予算が少ない」
「あと建物とかもありますよね」
 軍事予算は兵器にだけ使われるのではない。人件費やそうした施設にも使われる。実に多くの使い途が存在しているのだ。その中でやりくりしなくてはならないのだ。
「だからですか」
「金の使い道は多い」
 工藤は言う。
「とにかく多岐に渡る」
「けれど予算の額は決められてますよね」
「GNPの一パーセントだ」
 この枠はほぼ国策になっている。だからそれ以上は無理なのだ。
「それで二十五万の自衛官とその兵器や設備をどうにかする」
「結構大変ですね」
「従って金はなくなる」
 予算は限られている。どうしてもだ。
「そういうことだ」
「大変ですね。自衛隊も」
「そしてその中で銃はだ」
「整備しにくい銃のままなんですね」
「何十年もな」
「けれど整備しにくいとなると」
 警官も銃を使う。拳銃にしろだ。高橋はこのことから述べた、
「大変ですよね」
「間違っても夜暗い中や草原で整備できるものじゃない」
「小銃ってどんな状況でも使いますよね」
「だからだ」
 それ故にだとだ。工藤は言った。
「あの銃は困る」
「困りますよね」
「そうだ。どうしたものか」
「何十年もですか」
「そんな銃は一刻も早く新型に交換して欲しいが」
 しかし予算はない。銃を交換するにも予算がいるからだ。
「どうにもならない」
「困った現実ですね」
「全くだ」
 こうした話をしながらだ。二人は黄金を取ってだ。そのうえで帰った。その次の日だ。
 中田はワルキューレを駆り学校に向かっていた。その横にだ。
 バイクが一台来た。そのバイクからだ。彼に言ってきたのである。
「君は剣士だな」
「そう言うってことは」
「そうだ。俺も剣士だ」
 こう返してきた。見ればだ。 
 黒と金色のサイドカーだ。そのサイドカーに乗る男が言ってきていた。
「それは今ここで言っておく」
「成程な。じゃああんたが五人目だな」
「五人目?」
「俺を含めてな。俺が今まで会った剣士の順番だよ」  
 それで五人目だとだ。中田はそのバイクに乗る男に話した。見れは青いジーンズに黒いジャケットのだ。引き締まった身体をしている男だ。
 ヘルメットは黒い。その彼に言うのである。
「あんたが五人目だよ」
「そういうことか」
「で、何なんだ?」
 中田はあらためて男に問うた。 
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