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久遠の神話

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第十話 偶発戦その五


 二人に対して果敢に体当たりを仕掛けてきた。しかもその動きの途中に。
 身体が二つ、三つと無数に分かれていき。その炎の身体で。
 二人に襲い掛かる。それを見てだ。
 二人も動く。まるで影の如く左右に。
 その動きでかわしながらだ。そのうえでだ。高橋が工藤に言った。
「ここはですね」
「そうだ。ゆっくりとやっていてもだ」
「死にますね」
「こちらがな」
 工藤はこう判断した。それでだった。
 自分から剣を振り回す。それと共に高橋も。
 己の剣を両手に持ち振り回す。するとだった。
 無数の岩と雷が荒れ狂いだ。それが幾つにも別れていた怪物達を撃つ。それはまさに暴風だった。その二つが二人と怪物の回りを多い。
 それが終わった時だ。残っていた怪物は一体だった。そしてその残る一体もだ。
 かなり傷ついていた。最早立っているのがやっとという有様だった。その怪物を見て工藤が言った。
「勝負ありか」
「やってくれたな」
「それでだ。敗北を認めるか」
 怪物にだ。彼は問うのだった。
「それはどうなのだ」
「認めるつもりはない」
 これが怪物の返答だった。
「何故ならだ」
「貴様はまだ生きているからか」
「それでどうして認める必要がある」
「死ぬまで続けるというのだな」
「その通りだ。俺は死ぬまで戦う」
 身体中が傷ついておりふらふらになっている。しかしだ。 
 それでも彼はだ。こう言うのだった。
「まだだ」
「まだか」
「戦うというんだな」
「その通りだ。では行くぞ」
「見事とは言っておく」
 工藤は剣を構えながらまた話す。
「その気構えはな」
「褒めているのか」
「褒めるべきことは褒める」
 そうするというのである。これは工藤の性分だった。
 そのうえでだ。彼はだった。
 その十字の剣を構えてだ。向かって来るオルトロスにだ。
 剣を上から下に一閃させた。それで両断してだった。
 怪物を倒した。それでこの戦いを終わらせた。後には黄金だけが残った。
 その黄金を見てだ。高橋が言った。
「さて、じゃあこの黄金は」
「また持って行ってだな」
「ええ。俺達の特別ボーナスの分を貰って」
 そしてその残りはというのだ。
「国家予算に入れてですね」
「まあ小銃幾つか分にはなるな」
「小銃?」
「自衛隊の小銃だ」
 そのことを言うとだ。工藤は顔を曇らせた。
「あの面倒な小銃が幾つか。まあ十個は買える分はあるな」
「面倒ってそんなに危ういんですか」
「細かい部品が多い」 
 六四式小銃のことをだ。彼は話したのである。
「手入れが面倒な小銃だ」
「そんなに手入れが大変なんですか、自衛隊の小銃って」
「プラモデルみたいなものだ」
 自衛隊の小銃、老巧化しているがまだ海自では使われているその小銃は実に細かい部品が多い。その小銃について話すのである。
「あんなものだが十は買えるだけはあるな」
「そんな面倒なの何で使ってるんですか?」
「しかも何十年もな」
「自衛隊って予算ないんですか?」
「ない」
 工藤は断言した。 
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