戦国異伝
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第四十六話 寿桂尼その二
そうして話す言葉はだ。次第に強くなってきていた。
「そうじゃな」
「はい、そうだと思います」
「では」
元康は考えながら話していく。
「あれか。人か」
「おそらくは」
「そうじゃな。織田殿は多くの優れた家臣達を求めておられる」
元康は考えながら言葉を出していく。その読みをだ。
「さすれば。今川の多くの家臣もまた」
「とりわけ雪斎殿をですな」
本多が話した。
「あの方を望まれておられるかと」
「しかし強要はされぬ」
信長は無理強いしてまでだ。家臣を求めはしないというのだ。元康はこのこともだ。彼が幼い頃の付き合いからだ。信長のことを考え話すのだった。
「決してな」
「無理強いはされずともですな」
「そうじゃ。それはせぬ」
こう言うのである。
「無理強いをしても何にもならぬからじゃ」
「だからですな」
「そう。それでじゃ」
「その者が織田殿に完全に惚れ込んだならですな」
「そうした者が一番よく働く」
人の心についてはだ。元康もわかっていた。それでだった。
彼はだ。強く話すのだった。
「だからこそ。織田殿は」
「そうされますか」
「しかしそれは」
「かなり難しいのですが」
「そう思いますが」
本多以外の家臣達がここでこう話した。
「雪斎殿も他の方々もです」
「今川家への忠誠は無比です」
「そうした方々が宿敵であった織田に入るか」
「それは無理では」
「わしもそう思う」
元康自身もだ。そうだというのだ。
「そうおいそれとできるものではない」
「しかしですか」
「織田殿は」
「あの方は尋常ではない」
元康は唸る様にして述べる。
「それをされるだろう」
「では織田殿は今川殿の家臣団も加えられ」
「余計にですか」
「強くなられると」
「そのうえで」
「伊勢も志摩も手に入れられ」
そしてだ。さらにだというのだ。
「すぐに美濃もだ」
「まさか。美濃も」
「あの国もですか」
「織田殿は手に入れられますか」
「そうじゃ。織田殿は急激に大きくなられるぞ」
こう家臣達にも話す元康だった。
「まさにな」
「ううむ、左様ですか」
「織田殿はそこまでの方ですか
「秀でている方なのですか」
「伊勢に美濃を手に入れると」
どうなるかというのである。
「最早織田殿は天下一の勢力となられる」
「尾張に伊勢、美濃は土地は豊かですし」
「多くの港も持っております」
「しかも町も栄えています」
「それではですか」
「五万を超える兵も手に入れられる」
天下で今それだけの兵力を持っている家は近畿の三好だけだ。しかもその三好も今は三好三人衆と松永久秀の間で分かれている。つまりであった。
「織田殿はまさに天下一の家となられますか」
「間も無く」
「うむ。わしはそう見ておる」
まさにそうだと。元康はまた話す。
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