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戦国異伝

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第四十五話 幸村先陣その十三


「何人かおりまして」
「ふむ。どういった面々じゃ」
「新助殿に勝三殿、それに菊千代殿です」
「また血の気の多い面々じゃな」
「だからこそいいのでは?」
「荒い乗り方ができるのう」
 信長の笑みが変わった。楽しげなものにだ。
 その笑みでだ。彼は立ち上がってまた述べた。
「では思う存分荒乗りをするぞ」
「はっ、それでは今より」
 池田も応えてだ。そのうえでだった。主と共に部屋を出てだ。馬に乗りに行くのだった。
 そうした面々とひとしきり馬に乗りだ。それからだ。
 清洲に帰るとだ。信長に野々村が言ってきた。
「殿、駿河からです」
「ほう、あのことへの返事じゃな」
「おそらくは」
 野々村は落ち着いた口調で信長に返す。
「それでなのですが」
「うむ。あちらは何と言ってきておる」
「了です」
 つまりだ。いいというのだ。
「それで今駿河からこの尾張に向かっておられるとのことです」
「では太原雪斎もじゃな」 
 信長は野々村に言われる前にだ。この名前を出したのだった。
「他の今川の家臣達もじゃな」
「かなりの数がです」
「ふむ。来ておるか」
「はい、この尾張に向かってきております」
「左様か。そうなっておるか」
「して。会われますか」
 野々村は静かな口調のままでだ。信長に問うた。
「寿桂尼様と」
「そのつもりで文を送った。それにじゃ」
「それにですか」
「雪斎も来たか」
 この名前を再び出してだ。信長は思わせぶりな笑みを浮かべた。
 その笑みでだ。こう野々村に話した。
「よいことじゃ」
「まさか。あの和上まで来るとは」
「いや、来るとは思っていた」
「そうだったのですか」
「今あの者達の主は尾張におる」
 他ならぬ義元達だ。彼等を捉えていることがだ。ここで今川の者達に対して大きな効を見せていた。これは信長にとってはかなりよいものだった。 
 そしてそのよいものについてだ。信長は話すのだった。
「だからこそじゃ」
「そうですな。それは確かに」
「元よりそのつもりで文を送ったがのう」
「そうだからこそですな」
「会う。では清洲においてじゃ」
「この城において」
「会うとしようぞ」
 こう話してであった。
 信長はその寿桂尼、そして雪斎と会うことになった。それもまた、だった。信長にとっては大きな運命の会見になるのであった。


第四十五話   完


               2011・6・10 
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